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2.  アレクとなった俺、人前に出る

―― アレク(俺)の復活 ――

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 連日の講義や訓練が終わり、俺はなんとか初級魔法は、使えるようになった。
 アリアたちは、ぎりぎりまで俺(アレク)の復帰の時期を伸ばしてくれていたようだ。           
 が、それも限界に来たらしい。 
 俺が、アレクとして人前に姿をさらす日が告げられた。
 その前日には、アレクとして、どうしても知っていなければならない知識、情報をアリアたちと何度も復習し、頭に叩きこんだ。

 いよいよ、アレクとして人前にでる当日が来た。
 すでに、再生魔法の成功は、宰相を通して、第二王子に伝えてある。王の私室に、王族たちが集まり、俺(アレク)の復帰を祝ってくれるそうだ。
 俺は、転生後初めて、その部屋を出た。
 垂れ幕を上げ、ドアを開き外へ出ると、俺のいた部屋は、暗い階段を下りてすぐの円形広場に面した地下室のひとつだった。どうりで、窓がなかったはずだ……室内の明るさは、すべて魔法によるものだったのか。

 先導するアリアとイリアのあとについて、15段以上ある長い階段を上った。イリアは、時々振り向いて俺がついてきていてるかどうかを、確認している。
 ――うん? 
 階段なのに、息切れしない。
 転生前はねっからの運動嫌いで、すぐにハアハア言ってたのに。
 アレク様は、この身体を、かなり鍛えていたらしい。
 階段が終り上りつめたそこは、明るいが家具のひとつもない、装飾された数本の柱だけが目立つ、だだっ広い部屋だった。
  正装したアベル宰相が、そこで待っていた。    
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