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第三話 蘇我瑞葉のプロローグ
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アニメキャラのイラストスリーブに入ったカードがシャッフルされる。ずいぶん分厚いスリーブだなと思ったら三重スリーブだった(埃汚れ防止のためにカードの上から被せるインナースリーブ。その上に被せるレギュラースリーブ。レギュラースリーブを保護するために被せるオーバースリーブ。合わせて三重スリーブと呼ぶ。今回、イラストが入っているのはレギュラースリーブ)
「まさか、蘇我っちの知り合いだったとはな」
隣の卓でメヒコさんがカードをシャッフルしながら言った。メヒコさんのスリーブは赤一色で、インナーとレギュラーの二重のようだ。
「意外なところで人の繋がりはあるね」
アニメキャラで三重スリーブのバンブーさんがカードを重ね、カットのためにわたしのほうへと差し出す。
「いやだから男三人で女子大生一人を囲うなよ。普通に常識を疑うわ」
イライラした口調で言いながら、蘇我さんが切り交ぜたデッキをメヒコさんに渡す。同じように、メヒコさんのデッキが蘇我さんに渡される。
カードショップで誰かと知り合ったら、あるいは知り合いと偶然出会ったらどうするか。お互いがデッキを持っていたら、とりあえずする事は一つ。
自由対戦、なのだそうだ。
「あれはメヒコの独断専行だった。おれたちはそれを止めようとした」
観戦兼ジャッジを買って出たガラポンさんが言う。
「いや違う。本千葉さんは困っていた。オレには人が困っているのがわかる。感じるんだ。音楽をやっているから人の感情に敏感なんだ。本千葉さんは困っていた。そうだよな?」
「……ええ、まあ困っていましたね。急にパンクロッカーに話しかけられて」
言いながら、わたしはバンブーさんのデッキをカットして返す。
「ごめんよ。メヒコはヤバい奴なんだ」
バンブーさんから、わたしのデッキが返ってきた。
「ヤバくない。オレはパンクロッカーだけど、人には優しくするように育てられたし、それが尊い行いだと知っている。ていうか、ヤバいと思ったんだったら行く前に止めろよ、バンブー」
「止める前に行っちゃったから」
「……ところで、何でバンブーなんですか?」
「本名が竹本なんだ。――お願いします」
「お願いします」
フリープレイとはいえ挨拶は大事だ。わたしはバンブーさん――竹本さんに一礼した。
蘇我さんが、そういえばと言った。
「メヒコは、本名なんていうの?」
「教えねえ」
「買い取りでお待ちのサトウさーん」
店員さんがカウンターから店内に呼びかけている。
「はーい。悪い、蘇我っち。ちょっと行ってくるわ」
「サトウっていうんだ……」
「まさか、蘇我っちの知り合いだったとはな」
隣の卓でメヒコさんがカードをシャッフルしながら言った。メヒコさんのスリーブは赤一色で、インナーとレギュラーの二重のようだ。
「意外なところで人の繋がりはあるね」
アニメキャラで三重スリーブのバンブーさんがカードを重ね、カットのためにわたしのほうへと差し出す。
「いやだから男三人で女子大生一人を囲うなよ。普通に常識を疑うわ」
イライラした口調で言いながら、蘇我さんが切り交ぜたデッキをメヒコさんに渡す。同じように、メヒコさんのデッキが蘇我さんに渡される。
カードショップで誰かと知り合ったら、あるいは知り合いと偶然出会ったらどうするか。お互いがデッキを持っていたら、とりあえずする事は一つ。
自由対戦、なのだそうだ。
「あれはメヒコの独断専行だった。おれたちはそれを止めようとした」
観戦兼ジャッジを買って出たガラポンさんが言う。
「いや違う。本千葉さんは困っていた。オレには人が困っているのがわかる。感じるんだ。音楽をやっているから人の感情に敏感なんだ。本千葉さんは困っていた。そうだよな?」
「……ええ、まあ困っていましたね。急にパンクロッカーに話しかけられて」
言いながら、わたしはバンブーさんのデッキをカットして返す。
「ごめんよ。メヒコはヤバい奴なんだ」
バンブーさんから、わたしのデッキが返ってきた。
「ヤバくない。オレはパンクロッカーだけど、人には優しくするように育てられたし、それが尊い行いだと知っている。ていうか、ヤバいと思ったんだったら行く前に止めろよ、バンブー」
「止める前に行っちゃったから」
「……ところで、何でバンブーなんですか?」
「本名が竹本なんだ。――お願いします」
「お願いします」
フリープレイとはいえ挨拶は大事だ。わたしはバンブーさん――竹本さんに一礼した。
蘇我さんが、そういえばと言った。
「メヒコは、本名なんていうの?」
「教えねえ」
「買い取りでお待ちのサトウさーん」
店員さんがカウンターから店内に呼びかけている。
「はーい。悪い、蘇我っち。ちょっと行ってくるわ」
「サトウっていうんだ……」
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