74 / 100
第四章
ハサミ女 13
しおりを挟む
「穂結君もいつでも変身出来るようにしておいてね。ひょっとすると、ちょっと面倒な事になるかもだから」
言われて、煌津は鞄の中から『変身』と書かれたビデオを取り出した。
どこからともなく、キャスターのついた大きな機械が運ばれてきた。全長二メートルくらいはあるだろうか。何の機械はわからないが、プロジェクターのようなレンズがついている。
「これは記憶媒体系の呪物を再生するための機械だ」
右側の鈴木が言った。スクリーンのカーテンが開いていく。
「今から、これを再生する」
そう言いながら、左側の佐藤が手に持ったジュラルミンケースを掲げる。パカっと、蓋が開く。中には何らかの装置が内臓されており、その中心に、白いビデオテープがあった。
「あれは……先生に憑りついていた白い腕のビデオ?」
「そう。あの中には先生を呪ったモノの手がかりが含まれているはず。ハサミ女の居所とか、先生を襲った際の念だとかね」
那美が説明している間にも、鈴木と佐藤がテキパキと準備を進めていく。黒い手袋をした手で、佐藤が白いビデオを取り出し、プロジェクターに入れる。再生ボタンが押され、レンズから光が放たれる。劇場の照明が暗くなっていく。煌津は自然と身が固くなった。今から見るのは映画ではない。本物の呪いのビデオだ。
――……映像が乱れる。呻き声のようなノイズが入る。
『嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ』
『嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ』
床に臥せった男の人が呻いている。床は一面真っ赤な血で汚れている。カメラの角度が正面から斜め、また正面と次々と移り変わっていく。斑点のような黒い染みが、ところどころに映る。
嫌な感触が胸の中に広がる。
『ひっ……っ、ぐす、ぅ、っ、あ、ああああぁ』
誰かが泣いている。黒い長髪に指を入れて掻き乱している。女の子だ。いや、たぶんあれは、煌津よりも年上だろう。
『嫌、嫌、嫌、嫌――』
女の子が泣いている。煌津は喉に指がかかっているような気がした。胸が締め付けられる、どころではない。この映像を見ていたら、殺される――……
『いつでもいいよ。イネの好きなタイミングでいい。ゆっくりやっていこう? ね?』
それまでとは打って変わって優しい声が聞こえた。
画面には、見覚えのある顔が映っている。
「柳田先生……?」
ノイズが走り、画面はすぐに不鮮明になってしまう。
頭痛がする。意識をしっかり持たないと、どこかに吹っ飛ばされそうだ。
『存分にやる――と――いいよ。十年前のよ――うに。狙っ――』
いつの間にか、画面が変わっている。今しがたの黒い髪の女の子が床に、切り離した長髪の残骸を落とす。ノイズがひどい。音が途切れ途切れだ。
言われて、煌津は鞄の中から『変身』と書かれたビデオを取り出した。
どこからともなく、キャスターのついた大きな機械が運ばれてきた。全長二メートルくらいはあるだろうか。何の機械はわからないが、プロジェクターのようなレンズがついている。
「これは記憶媒体系の呪物を再生するための機械だ」
右側の鈴木が言った。スクリーンのカーテンが開いていく。
「今から、これを再生する」
そう言いながら、左側の佐藤が手に持ったジュラルミンケースを掲げる。パカっと、蓋が開く。中には何らかの装置が内臓されており、その中心に、白いビデオテープがあった。
「あれは……先生に憑りついていた白い腕のビデオ?」
「そう。あの中には先生を呪ったモノの手がかりが含まれているはず。ハサミ女の居所とか、先生を襲った際の念だとかね」
那美が説明している間にも、鈴木と佐藤がテキパキと準備を進めていく。黒い手袋をした手で、佐藤が白いビデオを取り出し、プロジェクターに入れる。再生ボタンが押され、レンズから光が放たれる。劇場の照明が暗くなっていく。煌津は自然と身が固くなった。今から見るのは映画ではない。本物の呪いのビデオだ。
――……映像が乱れる。呻き声のようなノイズが入る。
『嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ』
『嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ』
床に臥せった男の人が呻いている。床は一面真っ赤な血で汚れている。カメラの角度が正面から斜め、また正面と次々と移り変わっていく。斑点のような黒い染みが、ところどころに映る。
嫌な感触が胸の中に広がる。
『ひっ……っ、ぐす、ぅ、っ、あ、ああああぁ』
誰かが泣いている。黒い長髪に指を入れて掻き乱している。女の子だ。いや、たぶんあれは、煌津よりも年上だろう。
『嫌、嫌、嫌、嫌――』
女の子が泣いている。煌津は喉に指がかかっているような気がした。胸が締め付けられる、どころではない。この映像を見ていたら、殺される――……
『いつでもいいよ。イネの好きなタイミングでいい。ゆっくりやっていこう? ね?』
それまでとは打って変わって優しい声が聞こえた。
画面には、見覚えのある顔が映っている。
「柳田先生……?」
ノイズが走り、画面はすぐに不鮮明になってしまう。
頭痛がする。意識をしっかり持たないと、どこかに吹っ飛ばされそうだ。
『存分にやる――と――いいよ。十年前のよ――うに。狙っ――』
いつの間にか、画面が変わっている。今しがたの黒い髪の女の子が床に、切り離した長髪の残骸を落とす。ノイズがひどい。音が途切れ途切れだ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる