雨の向こう側

サツキユキオ

文字の大きさ
上 下
12 / 16
3日目

しおりを挟む
「藤岡先生の死体をどうにかしないといけない」
 小田の言葉に女性陣は小さく悲鳴を上げた。どうにか、と言われても佑月は何をどうするべきなのか分からなかった。
「藤岡先生の部屋もどこにあるのかわかりません。もしかしたら部屋の鍵や携帯電話などを身に着けているかもしれないので調べたいんですが、女性の方で手伝ってくれる方はいませんか?」
 彼の言葉に彼女たちはそろって首を横に振った。長谷もやはり青い顔で後ずさる。予想していた展開だと、佑月は手を上げた。
「だったら、私が手伝います」
「じゃあ亀山さんと、名村さんか野瀬さんも手伝ってくれませんか。藤岡先生をあの場所から移動させたいので」
 手伝おう、と手を上げたのは名村の方だった。
 そして彼らは割り当てられたそれぞれの部屋に解散した。
 三人は藤岡の死体を眺めた。彼女はヨガの衣装のままである。
「これは今朝着替えたのかな。それとも殺されたのは昨夜?」
 名村の言葉に二人は曖昧な表情で顔を見合わせる。
 佑月は藤岡の体に触れた。案外死体への嫌悪感は感じなかった。彼女はひとまずヨガのポケットを探る。そこにカギはなかった。見つかったのはハンドタオルくらいのものであり、それは酸っぱい汗の臭いがした。
「たぶん、着替えてないですね。死んだのは昨夜だと思います」
「夜は就寝時間が早かったからね。何があったか知ってる人はいないかもしれません」
「そもそも一体何があったんでしょう」
 佑月は彼女の体をひと通り調べたものの、カギは発見できなかった。それを正直に二人に告げれば彼らは仕方がないと言って首を横に振った。
「一度部屋に戻って情報を共有しよう。街に下りていくことも検討しないと」
 小田の言葉に二人は素直に従った。
 部屋に戻れば女性陣からの糾弾は避けられなかった。
「あんたが殺したんでしょ!」
 長谷が金切り声で叫ぶ。
「そんな訳ないでしょ、何を馬鹿なことを」
 佑月はたじろいだ。彼女の突拍子もない発言に呆れて言葉が続かなかった。
 長谷が木原の手を引いて部屋を飛び出す。何が起こるのかと全員が顔を見合わせた。
 バタバタと戻ってきた彼女たちの手には見覚えのある鞄が。
「ここに何か入っているんでしょ!」
 彼女は乱暴に鞄を破る。中に何が入っているのか。他の面々と同じ程度のものである。佑月の下着が部屋に舞い踊る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

昭和レトロな歴史&怪奇ミステリー 凶刀エピタム

かものすけ
ミステリー
 昭和四十年代を舞台に繰り広げられる歴史&怪奇物語。  高名なアイヌ言語学者の研究の後を継いだ若き研究者・佐藤礼三郎に次から次へ降りかかる事件と災難。  そしてある日持ち込まれた一通の手紙から、礼三郎はついに人生最大の危機に巻き込まれていくのだった。  謎のアイヌ美女、紐解かれる禁忌の物語伝承、恐るべき人喰い刀の正体とは?  果たして礼三郎は、全ての謎を解明し、生きて北の大地から生還できるのか。  北海道の寒村を舞台に繰り広げられる謎が謎呼ぶ幻想ミステリーをどうぞ。

ナガヤマをさがせ~生徒会のいちばん長い日~

彩条あきら
ミステリー
中学生徒会を主役に、行方不明の生徒会長を探し回るミステリー短編小説。 完全無欠の生徒会長ナガヤマ・ユウイチがある日、行方不明になった!彼が保管する文化祭実行のための重要書類を求め、スバルたち彩玉学園中学生徒会メンバーは学校中を探し始める。メンバーたちに焦りが募る中、完璧と思われていた生徒会長ナガヤマの、知られざる側面が明らかになっていく…。 ※別サイトの企画に出していた作品を転載したものです※

強制憑依アプリを使ってみた。

本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。 校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈ これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。 不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。 その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。 話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。 頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。 まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

秘められた遺志

しまおか
ミステリー
亡くなった顧客が残した謎のメモ。彼は一体何を託したかったのか!?富裕層専門の資産運用管理アドバイザーの三郷が、顧客の高岳から依頼されていた遺品整理を進める中、不審物を発見。また書斎を探ると暗号めいたメモ魔で見つかり推理していた所、不審物があると通報を受けた顔見知りであるS県警の松ケ根と吉良が訪れ、連行されてしまう。三郷は逮捕されてしまうのか?それとも松ケ根達が問題の真相を無事暴くことができるのか!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【毎日更新】教室崩壊カメレオン【他サイトにてカテゴリー2位獲得作品】

めんつゆ
ミステリー
ーー「それ」がわかった時、物語はひっくり返る……。 真実に近づく為の伏線が張り巡らされています。 あなたは何章で気づけますか?ーー 舞台はとある田舎町の中学校。 平和だったはずのクラスは 裏サイトの「なりすまし」によって支配されていた。 容疑者はたった7人のクラスメイト。 いじめを生み出す黒幕は誰なのか? その目的は……? 「2人で犯人を見つけましょう」 そんな提案を持ちかけて来たのは よりによって1番怪しい転校生。 黒幕を追う中で明らかになる、クラスメイトの過去と罪。 それぞれのトラウマは交差し、思いもよらぬ「真相」に繋がっていく……。 中学生たちの繊細で歪な人間関係を描く青春ミステリー。

拝啓、あしながおじさん。 ~令和日本のジュディ・アボットより~

日暮ミミ♪
恋愛
現代の日本。 山梨県のとある児童養護施設に育った中学3年生の相川愛美(あいかわまなみ)は、作家志望の女の子。卒業後は私立高校に進学したいと思っていた。でも、施設の経営状態は厳しく、進学するには施設を出なければならない。 そんな愛美に「進学費用を援助してもいい」と言ってくれる人物が現れる。 園長先生はその人物の名前を教えてくれないけれど、読書家の愛美には何となく自分の状況が『あしながおじさん』のヒロイン・ジュディと重なる。 春になり、横浜にある全寮制の名門女子高に入学した彼女は、自分を進学させてくれた施設の理事を「あしながおじさん」と呼び、その人物に宛てて手紙を出すようになる。 慣れない都会での生活・初めて持つスマートフォン・そして初恋……。 戸惑いながらも親友の牧村さやかや辺唐院珠莉(へんとういんじゅり)と助け合いながら、愛美は寮生活に慣れていく。 そして彼女は、幼い頃からの夢である小説家になるべく動き出すけれど――。 (原作:ジーン・ウェブスター『あしながおじさん』)

処理中です...