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64過去と王族と

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「あの子が平民を選んだのは、仲の良い現王妃とトラブルになりたくないだけでは無い。あの子は母上の血筋ゆえか沢山の高位貴族からの婚約の申し込みが有った。地位も確保された長男が多く、既に婚約者の居る相手からも多かった」

え、婚約者居るのに?とドン引きした。
お母様何かの呪いでも掛かっていたのかしら

「何故か相手が自分の事を好きだと思ってる。違うと何度も訴えるが向こうの家と話し合っても子息も親も両想いだと引いてくれんのだ。当然、婚約の申し出は幾度と無く断り、幾度となく同じ家から来るの繰り返しだ」

当時を思い出したようにため息を付くお祖父様に掛ける声も浮かばない

「その内に婚約者が居る家からは婚約破棄が何件も起こった。婚約者が居なければフレデリカと婚約者になれる、と言って一方的に破棄を宣言されたらしい」

さっ最悪過ぎる
何処の乙女ゲームですか母よ?

「当然、破棄された令嬢や令嬢宅からのクレームも有った。あの子が10歳まで生きていた母が居れば防波堤になっただろうが…令嬢方の気持ちも分かる。学園の高学年になり、破棄されて新たに探すのは大変だからな。しかしあの子だって本当の意味で好かれた訳ではないと言っていた」

「王家の血ですか?」

「そうだ。嫌いでは無いにしろ、私の言う事を1ミリも考えてくれないと言っていた。王族は人数も限られ、その少ない王族は公爵と婚姻する。我が家は伯爵家だからな、親も子も強引に行けば言う事を聞くと思い、言い易かったのだろう」

「過去、王族の伯爵や侯爵に降嫁は今まで無かった訳では無かったはずですが」

婚姻を結ぶのは長い間、公爵家が多いだけで侯爵家、伯爵家も極稀には迎い入れていた筈だと習った歴史を思い出す

「有ったには有った、ただ私達の代には居なかった。恐らくフレデリカ達のように王家の瞳を狙う窃盗団に殺されてしまったのだろう」

ハッと息を飲んだ。
だから先程お祖父様は護る為と、心の繋がりより、持ち主の命を護る為に親族と婚姻していたのだと言っていたのだ

「当時の国王もあの子を可愛がっていたから息子の側妃にするのを強制しなかった。結果、あの子が早死させてしまうのなら無理矢理婚姻させた方が良かったのか未だ考える時が有る」

もしもの話だ。喪ってから何度も何度もお祖父様の中では繰り返されていたのだろう。

「しかし、お母様は社交界の華と呼ばれていたと聞きましたが?それだけ令嬢に嫌われて居たのに言われる程、影響有ったのでしょうか?」

例えば最新のドレスデザイン、生地、装飾品にこの国に余り採れない宝石、豊かな会話術等々、王妃様のような豪華絢爛の華やかさは思い出の母には無い

「騒動の後にまだ婚約して居なかった一時的にマルチネット公爵にパートナーを受けて頂き、防波堤になって貰って最低限、出る必要の有る夜会などは出ていた。お前の父では他の貴族は抑えられんからな。卒業を迎え、王女と婚約が発表された時には既にハリフォードと結ばれて表舞台には出なくて済んだ」

思いがけない内容で瞬きを繰り返す。確かに普通の貴族のパーティーに王女は参加されない。

王族が出れば主役や主催が霞んでしまうし警備の観点からも公爵クラスの婚約などで紹介されて少し人前で挨拶を述べ帰られる
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