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63伯爵邸

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案内された母フレデリカの部屋はそのままで。
お祖父様は何時、母が戻っても良いようにしていたのだろう、時の止まったような部屋はとても綺麗で一瞬、息が詰まった

貴族として産まれその中で一応、王家にも嫁げる高位貴族育ちの娘が平民になり自身で稼いで暮らすのを選択したのは我が母ながらかなり破天荒なのでは?

伯爵邸は王都、領邸ともに挨拶に訪れる程度だから私と同じくらいのメイドが、3人付きっきりになって案内からお茶や、着替えを手伝ってくれるらしい
いや、出来る事は自分でします、と言うと寂しそうに俯くのは狡い。
断れないまま食後のお茶に至る

長い付き合いになるなら気兼ね無く過ごしたいから、と私付きマーヤを浮かべた
私が慣れたらマーヤが伯爵邸に派遣される予定だがまずは付いてくれたメリッサ、ピナ、キュララの3人と仲良くなりたい!

と、奮闘し午前は当たり前に執務室に籠って各書類の計算や決算報告書を作っていたら、お祖父様に喜ばれる内に午後も執務室通いになったので義父が居た時と同じくお茶の時間を作って夕ご飯以外にも爺様と話すようになった

山のような書類が減って気持ちにゆとりも出来たのだろう
ポツリポツリ話す内容は何時もは笑える過去が多い爺様が段々、私に申し訳ないような顔で話す事が増えた

「お前には苦労を掛けてしまうな。どうかあの子を恨まないで欲しい」

私の頬を撫で懐かしそうに呟く、私の顔は母似である
髪は父とそっくりのヘーゼルブラウンなので大人しい印象を受けるが、母はオレンジゴールドの為にパッと華やかで常に笑顔が絶えない人だった記憶だ
楽しそうな両親と一緒で楽しかった思い出しかない私は恨むとは、と首を傾げた

「フレデリカがハリフォード・ナタトリス、つまりお前の父を選ばなければ2人の仲を許可しなければこんな事にはならなかった。お前を産んでくれた事は最大の幸福だが、クロフォードとお前が小さい頃からしなくても良い苦労をし、寂しい思いをしているのはあの忌まわしい事件のせいだ…」

確かに両親が亡くなったのは寂しくて泣きたいのは今もだ。
寂しくて悲しくて、しかし義父に甘えるのは義兄に申し訳なくて悪夢を思い出して震えても我慢するしか無かったのだが、それをお祖父様のせいだなんて思ったことがない

「お祖父様には沢山、大切にされて感謝こそ有れ恨んだ事は有りませんわ」

にっこり笑う私に首を振り、突然爆弾宣言をされる

「あの子は本来、側妃殿下に選ばれていた。それをあの子が可愛くて愛しくて話を保留にし、結果ハリフォードとの婚姻で平民になるのを許したのは私だ」

!!?

「大前提としてこの瞳は売れば、かなりの金額になる希少価値の高い瞳だ。王家から公爵家との婚姻が多いのは瞳を受け継ぐのと、政治的安定だけではなく、瞳の持ち主を護る為にだと事件が起こって気付いた」

護衛は居た。それを上回る戦力で狙われたのは圧倒的人数による蹂躙。
チカチカと瞼の奥で危険信号が光る

最後に両親を見た時、泣いて泣きじゃくって覚えて無かったが、母の伏せられた瞳は有ったのだろうか?

この話が本当なら父と義母は巻き添えで犠牲になったのでは無かろうか?
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