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本編
SideB②
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ここは王宮の数あるサロンの一つ、王妃専用と名の付いた所だ。そしてこの部屋で、侍女が入れた紅茶を優雅に飲んでいるのは、もちろんこの国の王妃その人。
紅茶を飲みながら、わたくしは少し考えていた。
公爵の屋敷から戻って以来、フェルはなにやらとても楽しそうに過ごしている。普段は表情を出さないようと、努めていると言うのに、最近は幾度もニマニマとしただらしのない笑顔を見せるのだ。
気になるわね……
その発生した時期を照らし合わせて、先日のお見舞いの件だと判断したわたくしは、早速内容を確かめる為に、ボードレール公爵へ文を送っていた。
そして本日、返って来た内容を見て、笑いをこらえることが出来なかった。
『フェルナン殿下におきましては、同行しましたアルテュセール侯爵令嬢のジルダ嬢を大変お気に召された様子で、婚約を申し込まれておりました』
あらあら、令嬢嫌いだったあの子がまさか自分から婚約を申し込むなんて。
しかもその相手がアルテュセール侯爵令嬢とは、縁があるものね。
思わぬ情報を手に入れたわたくしは早速アルテュセール侯爵夫人に連絡を取ったわ。
「お久しぶりです、王妃様」
わたくしに綺麗な礼を見せるのはアルテュセール侯爵夫人。
「やめてよ、カティア」
ここは二人きり、わたくしが彼女の名前で呼ぶとそれが合図になる。
「あら、もう良いのクローデット?」
そう言って彼女はクスクスと笑った。
わたくし達は、家系図をたどれば遠い親戚に当たるらしい。
お互いそれを知らなかったのだけど、わたくしが王妃になった時に貴族らしい風習から紹介されて知り合ったのだ。
つまり王妃の権力に肖ろうとする、色々な親戚を称する遠縁の貴族から挨拶を受けたのよね。
その中の一人にカティアが居た。
わたくしより三つほど年上の彼女はその時、アルテュセール侯爵と結婚していたのだが、年が近い友人にと、無理やり両親に連れられてきていたのだ。
最初は未来の侯爵夫人として話していたが、次第に気が会う事がわかり今ではお互いに名前で呼び合うほどに仲良くなったわ。
「実はね、うちのフェルナンがジルダの事を気に入ったみたいで、婚約を申し込んだみたいなのよ」
「あら令嬢嫌いと噂のフェルナン殿下にしては珍しいわね。
でもうちの娘……、驚くほど愛想が無いのだけど、フェルナン殿下は一体どこを気に入ったのかしら?」
「そうね……、呼んでみましょうか」
この時間ならフェルが幼年学校から帰っているだろう。
そう思うと決断は早かった。
学校から戻ったばかりのフェルを引っ張ってきて、洗いざらい聞いたのよ。
※
学校から戻ると侍女長から母上が呼んでいると伝言があり、俺は王妃専用のサロンへと向かった。
そこで出会ったのは、母上と同じ髪色で少し顔立ちも似ている、まるで母上の姉のようなご婦人だった。
彼女は、俺を見ると立ち上がり、
「始めまして殿下。アルテュセール侯爵夫人でございます」
と、堂々とした挨拶をしたのだ。
アルテュセール侯爵夫人? つまり、ジルダの母君か。
この時点で俺はものすごーく嫌な予感を覚えていた。
その予感はどうやら的中していたようで、ニッコリと笑った母上が、
「ねぇフェル。先日にボードレール公爵のお屋敷に行ったとき、いったい何かあったかしら?」
と、尋ねてきた。
ここにアルテュセール侯爵夫人が居て、さらにボードレール公爵のお屋敷の話を聞きたいと言う。もう答えは知っているだろうに、どうしても俺の口から言わせたいのだろう。
しかも、相手の母親の前で……
でも昔から何度も同じ目にあっている俺は早々に諦めたんだ。
だってあの笑顔を見せる時の母上は、絶対に拒否できないのだからな!
そして俺は、ジルダに婚約を申し込んだ事を告げたんだ。
「娘は返事をしたのでしょうか?」
そう問い掛けてくるのは、ジルダの母君だった。
「貰っていません。というか、聞かなかった事にされたような感じがします」
俺の立場は王子なのだけど、義理の母になるかもしれない人に不遜な態度は取れないと思い、なるべく丁寧な受け答えを返すようにした。
「あの子ったら、私にも何も言っていないのよね」
それを聞いたジルダの母君は不満げな表情を見せた。
母上に似ていると思った表情は、実の所ジルダの方に近いようだ。
「いいわ、わたくしが何とかしましょう。
だってフェルの初恋だもの、きっちりわたくしが纏めてあげるわ」
「え、いや俺……」
危うく初恋じゃないと言いかけた俺は口を噤んだ。
じゃあ誰だと聞かれれば、記憶も定かではない子供の頃にミリッツァ姉さんの屋敷で出会った使用人の子供だからだ。
出会ったのはその時だけで、名前も知らない相手だから言いようが無い。
そもそも今でも結構キツイのに、さらにそんな話までさせられると思うと、思わず背筋がブルっと震えた。
「あらどうかした?」
「い、いやなんでもないよ。でも、どうやって纏めるつもり?」
そう聞いたのだけど、母上はニッコリと笑うだけで答えてくれなかった。
あの笑顔を見せるのだ、きっと自信があるのだろう。
ただ協力者を得るにあたって、ジルダのどこが気に入ったのかと言う話を洗いざらい吐かさることになったが、それで協力して貰えるなら安いものだろう。
その結果、俺は強大な協力者を得る事となった。
母上とジルダの母君、二人が協力してくれるのだ、きっとこの婚約は確定したようなものだろう。
ついに彼女の笑顔が俺だけの物になるかと思えば、嬉しくて頬が緩むのを感じていた。
そんな俺の態度は、なんと……
「おいフェルナン。最近ニヤニヤと気持ち悪いんだが、頭は大丈夫か?」
股がけされている兄貴にまで心配される始末だった。
うん、もう少し気をつけよう。
そして数日後。
母上の開いたお茶会の席にて、あの冷静なジルダが綺麗に誘導されて、まんまと失言を勝ち取った母親の手腕に驚くと共に、恐れを抱いた。
俺では絶対にあの口芸は無理だろう。
さらに母上は彼女が冷静に戻る前に、要求を付き付け言質をとったとばかりに、いつものあの笑顔で笑ったのだ。
そして俺は最愛の人と婚約することになったんだ。
なお翌日の新聞で発表された記事は記念に大切に保管しておいた。もちろん二部、保管用と観賞用だ。
紅茶を飲みながら、わたくしは少し考えていた。
公爵の屋敷から戻って以来、フェルはなにやらとても楽しそうに過ごしている。普段は表情を出さないようと、努めていると言うのに、最近は幾度もニマニマとしただらしのない笑顔を見せるのだ。
気になるわね……
その発生した時期を照らし合わせて、先日のお見舞いの件だと判断したわたくしは、早速内容を確かめる為に、ボードレール公爵へ文を送っていた。
そして本日、返って来た内容を見て、笑いをこらえることが出来なかった。
『フェルナン殿下におきましては、同行しましたアルテュセール侯爵令嬢のジルダ嬢を大変お気に召された様子で、婚約を申し込まれておりました』
あらあら、令嬢嫌いだったあの子がまさか自分から婚約を申し込むなんて。
しかもその相手がアルテュセール侯爵令嬢とは、縁があるものね。
思わぬ情報を手に入れたわたくしは早速アルテュセール侯爵夫人に連絡を取ったわ。
「お久しぶりです、王妃様」
わたくしに綺麗な礼を見せるのはアルテュセール侯爵夫人。
「やめてよ、カティア」
ここは二人きり、わたくしが彼女の名前で呼ぶとそれが合図になる。
「あら、もう良いのクローデット?」
そう言って彼女はクスクスと笑った。
わたくし達は、家系図をたどれば遠い親戚に当たるらしい。
お互いそれを知らなかったのだけど、わたくしが王妃になった時に貴族らしい風習から紹介されて知り合ったのだ。
つまり王妃の権力に肖ろうとする、色々な親戚を称する遠縁の貴族から挨拶を受けたのよね。
その中の一人にカティアが居た。
わたくしより三つほど年上の彼女はその時、アルテュセール侯爵と結婚していたのだが、年が近い友人にと、無理やり両親に連れられてきていたのだ。
最初は未来の侯爵夫人として話していたが、次第に気が会う事がわかり今ではお互いに名前で呼び合うほどに仲良くなったわ。
「実はね、うちのフェルナンがジルダの事を気に入ったみたいで、婚約を申し込んだみたいなのよ」
「あら令嬢嫌いと噂のフェルナン殿下にしては珍しいわね。
でもうちの娘……、驚くほど愛想が無いのだけど、フェルナン殿下は一体どこを気に入ったのかしら?」
「そうね……、呼んでみましょうか」
この時間ならフェルが幼年学校から帰っているだろう。
そう思うと決断は早かった。
学校から戻ったばかりのフェルを引っ張ってきて、洗いざらい聞いたのよ。
※
学校から戻ると侍女長から母上が呼んでいると伝言があり、俺は王妃専用のサロンへと向かった。
そこで出会ったのは、母上と同じ髪色で少し顔立ちも似ている、まるで母上の姉のようなご婦人だった。
彼女は、俺を見ると立ち上がり、
「始めまして殿下。アルテュセール侯爵夫人でございます」
と、堂々とした挨拶をしたのだ。
アルテュセール侯爵夫人? つまり、ジルダの母君か。
この時点で俺はものすごーく嫌な予感を覚えていた。
その予感はどうやら的中していたようで、ニッコリと笑った母上が、
「ねぇフェル。先日にボードレール公爵のお屋敷に行ったとき、いったい何かあったかしら?」
と、尋ねてきた。
ここにアルテュセール侯爵夫人が居て、さらにボードレール公爵のお屋敷の話を聞きたいと言う。もう答えは知っているだろうに、どうしても俺の口から言わせたいのだろう。
しかも、相手の母親の前で……
でも昔から何度も同じ目にあっている俺は早々に諦めたんだ。
だってあの笑顔を見せる時の母上は、絶対に拒否できないのだからな!
そして俺は、ジルダに婚約を申し込んだ事を告げたんだ。
「娘は返事をしたのでしょうか?」
そう問い掛けてくるのは、ジルダの母君だった。
「貰っていません。というか、聞かなかった事にされたような感じがします」
俺の立場は王子なのだけど、義理の母になるかもしれない人に不遜な態度は取れないと思い、なるべく丁寧な受け答えを返すようにした。
「あの子ったら、私にも何も言っていないのよね」
それを聞いたジルダの母君は不満げな表情を見せた。
母上に似ていると思った表情は、実の所ジルダの方に近いようだ。
「いいわ、わたくしが何とかしましょう。
だってフェルの初恋だもの、きっちりわたくしが纏めてあげるわ」
「え、いや俺……」
危うく初恋じゃないと言いかけた俺は口を噤んだ。
じゃあ誰だと聞かれれば、記憶も定かではない子供の頃にミリッツァ姉さんの屋敷で出会った使用人の子供だからだ。
出会ったのはその時だけで、名前も知らない相手だから言いようが無い。
そもそも今でも結構キツイのに、さらにそんな話までさせられると思うと、思わず背筋がブルっと震えた。
「あらどうかした?」
「い、いやなんでもないよ。でも、どうやって纏めるつもり?」
そう聞いたのだけど、母上はニッコリと笑うだけで答えてくれなかった。
あの笑顔を見せるのだ、きっと自信があるのだろう。
ただ協力者を得るにあたって、ジルダのどこが気に入ったのかと言う話を洗いざらい吐かさることになったが、それで協力して貰えるなら安いものだろう。
その結果、俺は強大な協力者を得る事となった。
母上とジルダの母君、二人が協力してくれるのだ、きっとこの婚約は確定したようなものだろう。
ついに彼女の笑顔が俺だけの物になるかと思えば、嬉しくて頬が緩むのを感じていた。
そんな俺の態度は、なんと……
「おいフェルナン。最近ニヤニヤと気持ち悪いんだが、頭は大丈夫か?」
股がけされている兄貴にまで心配される始末だった。
うん、もう少し気をつけよう。
そして数日後。
母上の開いたお茶会の席にて、あの冷静なジルダが綺麗に誘導されて、まんまと失言を勝ち取った母親の手腕に驚くと共に、恐れを抱いた。
俺では絶対にあの口芸は無理だろう。
さらに母上は彼女が冷静に戻る前に、要求を付き付け言質をとったとばかりに、いつものあの笑顔で笑ったのだ。
そして俺は最愛の人と婚約することになったんだ。
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