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本編
16:あれ、婚約?
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突然思い立ったように「下準備がある」と言って退席していったオディロン様。もちろん合わせてフロリーア様も出て行かれたわ。
「あちらは任せても大丈夫でしょう、それよりもジルダ。
最近のことを聞かせてくれるかしら、もちろん……アントナンのことよ」
流石は王妃様だけあり、凄みのある表情だったわ。
私は別に隠すつもりは無いので、最近起こった学園でのことを洗いざらい話したわ。
ちなみにアントナン様に教室へ引きずり込まれたことを伝えると、隣に座るフェルナン殿下が憎々しげにと舌打ちなさったわね。
でもこれ、あなたも同罪だからね?
そして話を聞き終えた王妃様は優しい声でこう言ったのよ。
「ねえジルダ、貴女は自分の立場を理解できているかしら?」
こんなに声色は優しいのに、目は一切笑ってないってのはアレよね……
自分の立場は、実は私のジルダの部分が、相当前からかなり危ういと告げていた。
「アントナン殿下の頼みを断れば、社会的もしくは物理的に始末されると思っております。しかし私にはこれを解決するすべは持っていません」
そうはっきりと答えた私に、王妃は少し首を傾げた。
「そうかしらアントナンに協力すれば助かるのではなくて?」
確かにそうだが、
「それには二つの問題が有ります。
一つは、全員を排除することが出来ない可能性。そしてもう一つは、私は彼に協力したくないのです」
最初の私はただ単に、逆ハーの結末を見て楽しみたかったのよ。
しかし今は違うわ!
この話の犠牲になった、ミリッツァ様とそしてフロリーア様のためにも、彼らには破滅こそが相応しいと思っている。
「まさか自分の息子の破滅を願われる日が来るとは、わたくしにも想像できなかったわね」
そういった王妃様を見て、私はしまったと思った。
フェルナン殿下と共にこの場に居たので、王妃様は当然こちら側の人だと勝手に判断していたのだ。
しかし彼女にとっては、アントナン様も息子には違いないのよ。
その彼の破滅を母親の彼女の前で願うとは……
言ってしまった言葉はもう取り返せない。
「も、申し訳ございません。言葉が過ぎました」
すぐに謝罪したが意味は無いわね。
後悔で泣きたくなるのを私はぐっとこらえていた。
「その謝罪を受けるには一つだけ条件があります。
もしもそれを聞いてくれるのなら、謝罪を受けて上げてもいいわよ」
王妃様のかなりの譲歩。
藁にもすがる思いというのはこのことだろう。
「私に出来ることなら何でもお聞きします」
と、王妃様の気持ちが変わらない内にと、私は即答したのよ。
すると王妃様は、何故かクスリと笑ったわ。
「?」
「簡単なことだから安心して頂戴。
じゃあ貴女は今日からフェルナンの婚約者よ。良いわね?」
「はい~ぃ?」
間抜けな声が出たのは仕方が無いと思うわ。
「貴女もこのまま行けばアントナンと板ばさみで不味いでしょう。でもフェルナンの婚約者になればその問題も解決よね」
確かにただの侯爵令嬢ならば簡単に排除できるだろうが、第二王子の婚約者ならばそれ相応の理由でも無ければ排除は不可能だろう。
そして王妃様は、楽しげにクスクスと笑いながら言葉を続けたのよ。
「それにね、実はこの子ったら貴女のことが大好きらしいのよ」
「ちょ、母上それは!?」
思わぬ暴露をされて盛大に慌てるフェルナン殿下。
二人の態度から、その言葉が本当だと理解できたのだが、しかし……
「えと、それは。私なんかのどこが気に入ったのでしょうか?」
だって婚約者を取られるようなモブですからね、自分の容姿は普通ちょいだと分かっているわけで。
フェルナン殿下に好かれる覚えがまったくありませんよ?
顔を真っ赤にして押し黙るフェルナン殿下。
それを見て王妃様は、
「ほらいつまでわたくしに言わせるの。
最後くらいは自分の口で言ったらどうかしら」
と言って声を出して楽しそうに笑ったわ。
「あちらは任せても大丈夫でしょう、それよりもジルダ。
最近のことを聞かせてくれるかしら、もちろん……アントナンのことよ」
流石は王妃様だけあり、凄みのある表情だったわ。
私は別に隠すつもりは無いので、最近起こった学園でのことを洗いざらい話したわ。
ちなみにアントナン様に教室へ引きずり込まれたことを伝えると、隣に座るフェルナン殿下が憎々しげにと舌打ちなさったわね。
でもこれ、あなたも同罪だからね?
そして話を聞き終えた王妃様は優しい声でこう言ったのよ。
「ねえジルダ、貴女は自分の立場を理解できているかしら?」
こんなに声色は優しいのに、目は一切笑ってないってのはアレよね……
自分の立場は、実は私のジルダの部分が、相当前からかなり危ういと告げていた。
「アントナン殿下の頼みを断れば、社会的もしくは物理的に始末されると思っております。しかし私にはこれを解決するすべは持っていません」
そうはっきりと答えた私に、王妃は少し首を傾げた。
「そうかしらアントナンに協力すれば助かるのではなくて?」
確かにそうだが、
「それには二つの問題が有ります。
一つは、全員を排除することが出来ない可能性。そしてもう一つは、私は彼に協力したくないのです」
最初の私はただ単に、逆ハーの結末を見て楽しみたかったのよ。
しかし今は違うわ!
この話の犠牲になった、ミリッツァ様とそしてフロリーア様のためにも、彼らには破滅こそが相応しいと思っている。
「まさか自分の息子の破滅を願われる日が来るとは、わたくしにも想像できなかったわね」
そういった王妃様を見て、私はしまったと思った。
フェルナン殿下と共にこの場に居たので、王妃様は当然こちら側の人だと勝手に判断していたのだ。
しかし彼女にとっては、アントナン様も息子には違いないのよ。
その彼の破滅を母親の彼女の前で願うとは……
言ってしまった言葉はもう取り返せない。
「も、申し訳ございません。言葉が過ぎました」
すぐに謝罪したが意味は無いわね。
後悔で泣きたくなるのを私はぐっとこらえていた。
「その謝罪を受けるには一つだけ条件があります。
もしもそれを聞いてくれるのなら、謝罪を受けて上げてもいいわよ」
王妃様のかなりの譲歩。
藁にもすがる思いというのはこのことだろう。
「私に出来ることなら何でもお聞きします」
と、王妃様の気持ちが変わらない内にと、私は即答したのよ。
すると王妃様は、何故かクスリと笑ったわ。
「?」
「簡単なことだから安心して頂戴。
じゃあ貴女は今日からフェルナンの婚約者よ。良いわね?」
「はい~ぃ?」
間抜けな声が出たのは仕方が無いと思うわ。
「貴女もこのまま行けばアントナンと板ばさみで不味いでしょう。でもフェルナンの婚約者になればその問題も解決よね」
確かにただの侯爵令嬢ならば簡単に排除できるだろうが、第二王子の婚約者ならばそれ相応の理由でも無ければ排除は不可能だろう。
そして王妃様は、楽しげにクスクスと笑いながら言葉を続けたのよ。
「それにね、実はこの子ったら貴女のことが大好きらしいのよ」
「ちょ、母上それは!?」
思わぬ暴露をされて盛大に慌てるフェルナン殿下。
二人の態度から、その言葉が本当だと理解できたのだが、しかし……
「えと、それは。私なんかのどこが気に入ったのでしょうか?」
だって婚約者を取られるようなモブですからね、自分の容姿は普通ちょいだと分かっているわけで。
フェルナン殿下に好かれる覚えがまったくありませんよ?
顔を真っ赤にして押し黙るフェルナン殿下。
それを見て王妃様は、
「ほらいつまでわたくしに言わせるの。
最後くらいは自分の口で言ったらどうかしら」
と言って声を出して楽しそうに笑ったわ。
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