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かわいいし、きもちいい

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 日々は穏やかに過ぎて行く。
 子ども食堂の人気メニューはハンバーグに唐揚げにオムレツ。好きなメニューの時だけ来る子や、文字の勉強の時間だけ来る子もいるから、掲示板を作って一週間のメニューと勉強スケジュールを提示するようにした。
 お弁当代わりのサンドイッチは今では子どもたちだけでなく大人にも人気が出て、大事な収入源になった。そのお金で市場で食材を買ったりお店で惣菜を買ったりと、元から商売をしている人たちとも上手くやれていると思う。

 この街の獣人さんたちは皆優しくて愛情深い。子どもたちに食事を提供し続けるのを見て、子どもたちへ古着や勉強道具の寄付も頂けるようになった。



 今のところ子ども食堂については順調である。…が、チッチの母親の情報は何もない。それに結界もうまく出来ない。
 大きな魔力の使い方がまだうまく出来ないから、シュロに沢山魔力を流して貰うと良いと、王様やシュロのお兄さんがいるところから来てくれた魔法使いのねずみ獣人さんが教えてくれて、実践中。魔力の通り道を大きくしておかないと大きな魔法は使えないらしい。でもこれが厄介でシュロから離れたくなくなるし、ぺったりくっつきたいし、甘えたいし甘えられたいし……とにかく触れたくなるのだ。




「ヒカル、魔力を流しても良いか?」

「うーん…」

「大丈夫だ、嫌ならやらない。」

「嫌じゃない。でも魔力流すと迷惑かけちゃうし…あ、チッチは?」

「迷惑なものか。ヒカルに触れられるのはとても嬉しい。チェチリはとっくに寝たぞ?最近は食堂の手伝いと勉強で寝付きが良い。」

 確かに…寝付きが良いし夜泣きもしない。

「無理させてるかな?やらせ過ぎ?」

「丁度良いんじゃないか?色々と考えないで済む。」

「うん…そうだね。」

 チッチのお母さん…チッチはもうおかしゃんと泣かない。お手伝いをしてくれるし、近所にお友達もできたし、お勉強もしている。つい先日は孤児院に行くとまで言い出した。僕が思わず泣いてしまったら取り消してくれたけれど。
 その時を思い出して涙が込み上げてくる。

「あぁ、ほら、ヒカルこっちへおいで。」

 いつも通りフカフカな胸にそっと埋まれば脇に手を差し入れて、ぐんと持ち上げられて膝の上。

「ううう…」

「チェチリの母親は絶対に大丈夫だとは言えない。冒険者の世界はそんなに甘くはない。だが、まだ何もわかっていない。死んだとは限らない。」

「うん…」

「あの子は強い。無理し過ぎないように見守っていこうな。」

「うん…」

 大きな手のひらが頭を撫でる。鋭い爪が僕を傷つける事はない。
 顔を胸に押し付けて、頭をなでなで。
 もっと…もっと隙間なくくっつきたくて、首へ腕を伸ばして引き寄せる。もっと…足も…

「こら。」

 足を腰に巻き付けたところでシュロから声がかかった。

「だめ…?もっと…お腹もくっつきたい。」

 座るシュロを跨ぐようにしてシュロの太腿に座り、顔をフカフカに埋めて腕は首に回す。足で腰を固定して、お腹もシュロのバキバキに割れているのにフカフカな腹筋へ。

「魔力も流して…?」

「こちらから言っておいてなんだが、それはやめておかないか?」

「だめ?」

「襲わない自信がない。」

「ふはっ!」

「笑うな。」

 あぐあぐと頬を甘噛み。これは最近のシュロのお気に入り。僕のほっぺが食べられてしまう。

「しゅろ、ほっぺ、やぁ。」

 鼻先を手のひらでぐいぐい押して離してもらう。

「くっついてるのも、体の中もシュロが良い。だから、まりょく流してぇ…」

「誘われているみたいだな。」

「んん?」

 誘う…?

「誘ってるよ?」

 魔力流して欲しい。もっとくっついて離れたくない。

「違う意味でな?ほら、流すぞ。痛かったら言ってくれ。」

 心臓がドクドクして、痛いようで、冷たくて、熱い。最近やっと慣れ親しんできた痛いくらいの多幸感。ぎゅっとくっついているのにもっともっと近づきたくて、ぐいぐいと体を押し付ける。

「もっとぉ…」

「もっと?大丈夫か?ヒカルからも魔力を流し返してくれ。」

「んんんっ…」

 意識して、シュロへと魔力を流す。
 その間もシュロに触れていたくて、心臓が痛くて頭はふわふわ。

「んあ、」

 何だか今日は一段と気持ちが良い…

「ヒカル、押し付けるな。反応してしまう。」

 ハッハッと細かく息を吐いて、胸に埋めていた顔をあげて首筋をスンスン。

「んん、いい匂い…きもちい…」

「…流しすぎたか?ヒカル、少し待ってくれ。」

「やぁ。」

「こら」

 ぎゅうぎゅうにくっついてるけど、足でシュロの腰をぎゅうってして、ぐりぐりってぼくの腰を動かすと…きもちい…

「ん、なんか、かたい。」

「ヒカル、お前に嫌われたくない。」

「シュロなんかもってるぅ。」

「聞いてないな?ヒカル、お前魔力に酔っている。少し離れような。」

 腰あたりのかたいやつに手を伸ばしたところで手を取られて、諭される。

「んぅ…」

「あぁ、何だこの可愛い生き物は…」

「もふもふかわいー!」


 もふもふかわいい。もふもふは至福。
 鼻ちょんもかわいい。シュロの鼻をがしっと掴んでお鼻にキス。

「…くふっ」

「何だこの可愛い生き物は…」



















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