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19 ひとつになる (スミレ視点 最終話)
しおりを挟む下から見上げたクレイグは格好良くて、ちょっぴり余裕が無さそうで。
ウェーブがかった艶やかな黒髪がハラリと落ちる様にドキリとしてしまう。
腕を伸ばして髪を耳にかけ、そのままこちらへ迎え入れるように首に腕を回した。
「僕が辛そうでも、痛がっても途中で止めたらやだよ。」
「…はぁ。大丈夫だ。もう止まれそうもない。」
脱力したように僕の首筋に顔を埋めるクレイグが可愛くて、思わず「ふふっ」と笑い声が洩れてしまうとこちらへ恨めしそうな視線を向けてくる。
「あッ、」
肩から首筋に沿って舌を沿わせて、喉を甘く噛む。
背中がゾクゾクとして、クレイグの大きな手が腰に添えられただけでピクピクと揺れてしまう。
「ふ、ひぁっ!」
今はゆったりとしたシルクのパジャマしか着ていない。
「ここ、可愛いな?一生懸命押し上げている。」
「やあっ」
ここ、と言いながら指先で先っぽを擽られると堪らなくて、四日間空いてしまったけど毎日のように快感を教え込まれていた体はすぐにふんにゃりと力が抜ける。
「あッ、んあぁッ」
気がつけば僕だけがはだかんぼ。
「あぁ、可愛いな。」
「僕だけ、やだ。クレイグも、」
そう言えば直ぐに同じように脱いでくれるけど、どうしてもクレイグの裸体をみると体からボッと火が出たように熱くなる。
思わず両手で顔を隠してしまうとそっと両手をとられ思わず瞳をきつく瞑る。
「スミレ。」
「…ずるいぃ」
名前を呼ばれて薄目を開ければ優しく優しく見つめられていて胸の高鳴りが抑えられない。
「スミレ、ちゃんと見て欲しい。今から誰に抱かれようとしているのかをしっかりと。」
「…はい。」
互いに一糸纏わぬ姿で触れるだけのキスをして。
「んっ、んあっ」
それがどんどんと深くなり、二人の唾液が混ざり合う音にぐちゅぐちゅと僕の後ろを解す音が混ざる。
「んんッ、や、ぁっ、も、だしたいッ」
「スミレ、我慢な。今イクと後が辛いぞ。」
「ひぁぁッ、」
ようやく唇が解放されたと思ったら今度は胸の頂を口に含まれて転がされ、甘噛みされて達しそうになる。
思わず自分でおちんちんの根元を押さえると、手の甲にクレイグのモノが触れた。
クレイグがピクリと反応したことに気をよくした僕はそっとクレイグのおちんちんの括れのところにそろりと指を沿わせる。
「…ハァ。スミレ、それは反則だ。これ以上デカくなるとスミレが痛い思いをしてしまうかもしれない。大人しくしとこうな?」
「もう、クレイグが欲しいの。」
好きなひとの裸をみて、気持ちよくしてもらって、僕だって早く繋がりたい。
「煽るな。」
「お願い…クレイグのいれてほしい…もう我慢できないよ…ね?」
「恥じらって可愛らしいところを見せれば艶やかに誘って…どれだけ俺を虜にするつもりなんだスミレは。後悔しても遅いぞ。」
僕の後ろを解していた指を抜いてぴとりと押し付けられたクレイグのおちんちん。
力を抜いているように言われたけど抜けなくて。
チュッチュッと顔中にキスをされてお髭がくすぐったくて思わず笑みが溢れると、ふわりと力が抜けてその瞬間を狙ったように押し込まれた。
「ッ、あぁッ!」
「痛くないか?暫くはこのままな。」
痛いというより苦しくて、ハフハフと呼吸していると汗でくっついていた髪を掻き分けておでこにキス。
耐えるような、堪えるようなクレイグの表情にどくんと胸が鳴った。
「くっ、あまり締め付けられると年甲斐なく直ぐに達してしまう。」
「あ、や、だめ。急におなか、あつい。どきどきがとまらない。」
僕の中にクレイグが馴染んできたのだと、少しずつ前後に動き出し、そこから生まれる少しの痛みと圧迫感と圧倒的な快楽に僕はもう喘ぐ事しか出来なかった。
起きたらクレイグに見つめられていて頭を撫でられていて気づくとぽろぽろと涙を流していた。
「ッ、痛むか?大丈夫か!?」
焦ったように僕の体を調べようとするクレイグの胸に思わず飛び込んだ。
「ちがうの。痛いとかじゃない。あのね、クレイグのことは好きで、大好きで。それがタカギたちを思う大好きとは違うって、特別だってわかっていたけど…クレイグと初めてひとつになれて、起きたらクレイグがいて…あぁ幸せだなぁ、愛しいなぁって自然と心の中に出てきたの。そしたらこれが愛してるって感情なんだなってわかったの。本とかで読んでもわからなかったけど、今、急に理解して、そうしたら涙が出てきたの。嬉しい涙。」
ぎゅうっと強く強く抱き締められる。
「スミレ、愛している。ずっと、死ぬまで一緒にいてくれ。」
その声が震えているように聞こえて思わずクレイグを覗き込む。
「…番から、愛するものから同じ気持ちが返ってくるのはこんなにも幸せて嬉しい事なんだな。こんな気持ち初めてだ。スミレ、もう一度言ってくれないか?」
「愛してる。ずっと離さないで。ずっと一緒にいて。…もう、一人にしないで。」
「あぁ。約束だ。」
約束に誓いのキスを。二人の涙が合わさって、ちょっぴりしょっぱい誓いのキスだった。
「「「スミレせんせー!さよーなら!」」」
「さようなら。気をつけて帰るんだよ。」
「「「はーい!」」」
初めてクレイグと結ばれてから八年が経った。
クレイグが王である残りの任期の三年間はタカギの指導のもと、心と体と頭を合わせるように務めた。
その間に沢山の人と話をしてたどたどしい敬語も減っていった。
クレイグは王でなくなってもやることが沢山あって、でも半年程休暇を貰えたから国内を見て回った。
初めて見る川や海にはしゃぎ過ぎてしまって熱を出したりジュースかと思って飲んだものが媚薬で一週間ほど交わり続けて身動き取れなくなったりと、大変だったけれどいい思い出だ。
そして帰ってきてからは僕はタカギとライさんが始めた魔法と武術に特化した学校で魔法学の先生をしている。
この国に魔法使いはあまりいないと思っていたけれど少しでも魔力があれば魔法を使える可能性はあるのだ。
それと、昆虫は今でも好きで、僕は子供達から昆虫博士と呼ばれるくらいになった。
視界に入る虫の名前をサクサクと言い当てるのを見て付いた渾名である。
たまにスイレンとスイレンの妹であるモモと共謀して、タカギに悪戯を仕掛けるのだが最近は三人目の赤ん坊がお腹にいるので吃驚させないように悪戯は封印中だ。
可愛いスイレンとモモに想いを馳せていると愛しい人の姿が見える。
「スミレ、帰ろう。」
「クレイグ、今日はもうお仕事終わり?お疲れ様。」
手を繋いで歩き出すとタカギたちも帰るところで。
駆け寄って抱きついてきてくれるモモと少し離れたところで立ち止まるスイレン。いつもならスイレンも学校が終われば駆け寄ってきてくれるのに何だか様子がおかしい。
「僕の、つがい。」
「スミレは俺の番だ。」
そろそろと近寄ってくるスイレンに対して眉間に皺を寄せて告げるクレイグ。
「…ちがう。ここ。」
ここ、と指で示すのは僕のお腹。
「スイレン、わかるの?」
「うん。僕のつがいがスミレのお腹にいる。」
「仲良くしてあげてね?」
「大切にする。」
良かったねぇ、とクレイグたちを見渡せば目を見開くクレイグとタカギとライさん。
「えへ。赤ちゃんができたの。」
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