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番外編 満月の夜に

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 シャコシャコと片手を腰にあててリズミカルに歯を磨く。
 後ろから所謂バックハグなんてものをして、屈んで俺の首筋に鼻を擦り寄せて匂いを堪能しているらしい変態は無視だ。
 というか、もう慣れてしまった。毎朝幸せを噛み締めるのが忙しいらしい。きもちわるっ!うがいするときくらい離れろ!
 一緒に住み始めてからもコウヤの変態は変わらない。

「ふぁ、ねむ。…あ。」

 冷蔵庫に貼ってある星空カレンダー。
 日のところには月の満ち欠けが書いてある。

「愛生、気づいた?今日は満月だよ。」
「は?えー、まじか…言えよ!」
「だって前もって気づくとすーぐ隠れようとするんだもん。」
「いや、隠れるだろ!」

 ヘビさんに満月の夜にカエルになってしまう呪いをかけられた俺だが、いくつかわかっている事がある。
 まず、カエルになるのは月が出てから。そして意味がわからないが、変態の精子をぶっかけられると人間に戻れる。
 それしか方法がないと一年程は思っていたのだが、ある日隠れて一晩過ごしたら、朝陽が昇ると同時に人間に戻れたのだ。
 それからというもの、満月の晩は煌也とのかくれんぼが開催される。

「でも、もうダメだよ?先月は鳥に連れてかれそうになったんだからね?わかるよね?」

 煌也は家の中だと直ぐに俺の事をみつけてしまう。何やら気配でわかるらしい。

 だから先月はベランダに隠れた。そうしたら良くわからん鳥に喰われそうになったのだ。
 めちゃくちゃ怖くて、もう絶対カエルの姿で外には行かないと泣きながら誓った。いや、誓わされた。あの日の事は思い出したくない。俺がいなくなったら、と情緒不安定になった変態によって散々啼かされたのだ。まじで死ぬかと思った…

「外には行かない。あー、でも予定入れちゃってたんだよなぁ。」
「何の予定?専門の友達?」

 空気がぴりつく。

「そうだけど、怒んなよ。煌也の事紹介してって言われたからさ。」
「何それ。ルームメイト紹介してって事?友達だったら会っておきたいけど、女はやだよ。面倒くさい。」

 うわ、すっげー嫌そうな顔。煌也は地元を離れたのもあって王子様キャラを止めたらしい。今はクールを通り越して無愛想キャラだ。

「いや、恋人とルームシェアしてるって言ったら、興味持たれて。同じ実習班のバカップルなんだけど、良い奴らだよ?」
「え?俺の事恋人って言ってくれたの?」

 わー、嬉しい。ってにやける変態。ちょっと可愛いとか思った俺もおかしい。

「あ、でもそれ、俺の事女だと思ってんじゃないの?」
「んーん。幼なじみで親友の男で格好良くて、俺にベタ惚れで何でも出来る凄い奴だけど、変態でストーカーで残念なくそ野郎でもあるって説明した。」
「え?本当?嬉しい。愛生大好き。でも、大丈夫?友達離れていかない?」

 こいつ変態ストーカーはちゃんと理解してたんだな…わかってるなら改めろ!

「ん。ぶっちゃけ気持ち悪がる奴もバカにしてきた奴もいたけど、元々仲良くないし気にしない。受け入れてくれる奴のが多かったよ。」
「そっか。嫌な思いさせてごめんね?でも、愛生の友達が良い人そうで良かった。」



 そう。きっかけはクラスの腐女子という部類の女子だった。
「パグパグって彼氏とかいそうだよね~。」
 とかるーく言われたのだ。ちなみにパグパグとは俺のあだ名らしい。SNSで話題の上目遣いのパグと俺の上目遣いが似ているらしい。
 小さくて悪かったな!くそが!165はあんだよ!お前らがでかいんだ…

 で、俺も特に隠しているわけでもないので、「いるよ。」と答えた。それが思いの外教室に響いて、質問攻め。バカにしてくる奴もいたけど、ほとんどが肯定的だった。女と付き合ってるよりしっくりくるらしい。解せぬ。 
 それでもその事があって、同じ実習班の中にもいたらしい男同士のカップルからこっそりカミングアウトされて、そいつらとは今まで以上に仲良くなれたから良かった。
 朝食を作りながら、そう煌也に説明する。

「あー、引っ付いてるとあっつい。煌也さん離れて。」
「洗濯中やる事ないし、くっつきたいから却下です。汗かいたらお風呂で洗ってあげる。」

 俺が食事係で煌也は掃除洗濯。それ以外の家事は一緒にやったり気づいた方がやる。でも圧倒的に煌也がやってくれる事の方が多いのだ。

「お前は友達出来た?大丈夫?」
「高校のクラスメートが同じ学部にいるからそいつとツルんでるよ。愛生の事も知ってるから楽だし、そいつの彼女も学部は違うけど同じ大学だから色々助けて貰ってる。」
「煌也、王子様キャラ取ったらめっちゃ無愛想だから心配してたんだ。友達いて良かったー。てか今日は残念だけど断っとく!」

 夕方から夜までとかならって思ったけど、街中でカエルになったらと思うと恐ろしい。

「あ、じゃあさ、今日金曜日だし20時からにしたら?」
「は?俺カエルだもん、無理。」
「お月様出て、なるべく早く精子かぶれば大丈夫だよ。夕方にはお互い帰れるし、俺も挨拶したい。」
「えー、大丈夫かな?」

 うーん。でも、いつもの変態プレイを考えればカエルになってすぐ精子かけてもらって人間に戻れるのは楽かも。
 この変態はカエルの俺にでも欲情出来る変態だからな。

「ん。わかった。」
「ありがとう。あー、楽しみ。そんで良いにおい。」

 朝はいつも簡単だ。今朝はチーズオムレツにサラダとトースト。
 テーブルに運びたいのにいつまで引っ付いてるんだこの変態。

「ねぇ愛生、怒らないで聞いてくれる?」

 まぁ、わかるけどな!

「くっついてたら勃っちゃった。」
「ふざけんな。」

 さっきからゴリゴリ当たってるわ変態!
 結局えっちしたい煌也としたくない俺で押し問答の末、素股ということになり、キッチン台に手をついて、後ろから擦られ乳首を弄られ。我慢出来なくなった俺が根をあげる結果となった。解せぬ…



「ただいまー。おかえりー。」
「愛生おかえり。ただいま!」

 手を洗う為に洗面台に向かうと後ろからくっついてきて、ハグ。

「はいはいはい。うがいしたいから、離れろ。」
「もー、何言ってるの?無理に決まってるでしょう?7時間と18分も離れてたんだから…ハァ、久しぶりの愛生の匂い最高!」

 え、久しぶり?朝も首筋ハスハスしてたじゃん。え、変態こわ。18分とか細かいのこわ…
 変態を背中に張り付かせたまま手洗いうがいを済ませ、体を捻って煌也の首に手をかけて引き寄せる。
 掠めるような軽いキスを送って、きょとんとする煌也を鏡越しに見て、笑みが溢れる。気を良くしてもう一度。そのまま胸を強めに押して腕から逃れた。

「あー、もう、反則だよ。」
「んー?」
「何かさ、愛生さ、満月の日は普段やらないことしてくれるよね?やっぱりカエルになるから、思考力低下するのかな?嬉しいけど。めちゃくちゃ嬉しいけど。」

 思考力低下とディスってんのかくそ。

「ふざけんな。自分でちゃんと考えて行動してるわ!」
「それってさ、キスしたいって言ってるようなものだよ?しかも二度目は凄い笑顔でキスしてくれたし、嬉しすぎる。」
「思ってるし。うがいして顔上げたら煌也の大きい体にすっぽり収まってて安心して、あまりにも幸せそうな顔してくっついてくるから嬉しくなったの!」
「、俺の事好き?」
「そりゃ好きだろ!好きじゃなかったらわざわざ変態に着いてきてないわ!…あれ?何でこんな話してるんだっけ?」
「かわいいなぁ。日も暮れてきたしもうすぐお月様出てくるよ。それまでキスしてようね。」
「うん?ん。する…」
「あーあーあー。可愛すぎる。」
「はやく。」





 フッと意識が浮上する。
 あー、また、カエル…
 そろそろやめたいよ。ロギさん、ヘビさん。二人とも、元気ですか?
 ぴょこりと顔を上にあげると嬉しそうな煌也さんの顔。

「カエルのアイキもやっぱり可愛い。」

 うるせー。いいから、精液よこせ。煌也の足をぺしぺし叩いて催促する。あ、やばい、かも?何かこの顔は嫌な予感がする。

「んー、ひとりでオナって射精するの寂しいな。」

 は?ふざけんな。さっきまでのキスでバキバキだから少し擦ればでるだろ!ってか話が違う。

「今日は、制限時間あるからね…ハイ、アイキ、頑張ろうね?」

 ハイ、と一緒にずり下げられた煌也のジャージから出てきたそびえ立つ肉棒に思わず仰け反る。自分が小さくなると本当にこわい。ビキビキに浮き出ている血管がこわい。むり!
 煌也に背を向けてぴょこんと飛び出せば途端に大きな手に包まれる。

「アイキ、逃げちゃだめ。今日は家で鍋でしょう?早くしないと友達の目の前で精液かけられて人間に戻ることになるよ?」

 にっこり。本当に嬉しそうなにっこり笑顔でチクチクする毛の中に置かれて、ムカついてぴょこぴょこ跳ねてぺちんとカエルパンチ。知ってる!喜ぶだけ!
 それならとカエルキック!喜ぶだけ…
 あー、もうっ!と後ろ足に力を入れて肉棒に飛び付いた。浮き出た血管に足かけちゃったけど、変態だから大丈夫…かな?
 少し心配になって見上げて後悔した。…喜ぶだけ!
 だめだ…HPが削られる…なるべく早く射精させよう。
 よじよじと半ばまで登ってぴょっと舌を出した。
 ぺとりとくっついて、すぐに戻る。うーん。人間の時にも口で奉仕なんてしたことない。カエルの体でなんて更に無理。
 煌也は、いつもどうしてたっけ…
 この変態は俺のちんこが好物だと真顔で言うようなヤバイ奴で、えっちするときは必ずと言って良いほど咥えてくる。あ、そうか。咥えれば良いのか。りょーかい!っと頭のなかで会話して、更によじよじてっぺんまで登る。
 段差に足かけて、頂きます。と口をぱっかりと開けたところでまた邪魔が入る。
 何だよもうっ、と大きな手越しに煌也を見詰める。

「いや、それは、ちょっと怖い。何か、痛そうだもん。あと、咥えられた状態で射精したら、アイキのお腹弾けそうで…」

 ぶるっと体が震える。この体の大きさでこいつの精液全部飲んだら、確かにお腹破れるかも…俺の体、煌也の親指くらいだだし…こわ。

「ちょっと俺も一回出したいから、アイキくっついてて?」

 そう言って俺を竿の部分に掴まらせると上からふわりと手を添える。
 え?俺、ちんこと煌也の手に挟まれてる…え、何か、やだ。え?絶対このまま擦るじゃん。チクチクするじゃん。なるべく上の方に行こ。



 うあ、なんか液体が…押さえられてるから、口に入る。
 しょっぱい変な味。こいつこんなのいつも旨そうに舐めてるの?

「アイキ、可愛い。カエルでも可愛い。」

 本当に変態だな!カエルで欲情できて!そう言うと煌也は愛生だから、カエルになっても可愛いんだよって言う。飼育してたカエルのアイキは可愛いけど、さすがに欲情はしないよ。って。
 うん、変態だ。こいつの愛は良くわからないし重すぎるけど、最近はそれが嬉しいと感じる事が度々あって戸惑ってしまう。




「ごめん、出す、ね?」
「うあー、にがい…」

 考え事していたらいつの間にか高まったらしい煌也さん。
 俺も人間の体だ。時計をチラリと見ればまだ19時ちょっと。

「間に合って良かったあ。煌也もお疲れ!準備しよ?」
「んー、その前にさ、まだ時間あるし一回しよ?」
「は?」
「鍋の用意はちゃんとしてあるよ?はい、バンザーイ。」
「は?」
「ごめんね?アイキが可愛すぎて、一回出したくらいじゃ収まらないや。30分だけ…うわっ、アイキ痛いよ…鳩尾はやめて。そして本気で拒絶の目だね?ごめんね、諦める…」

 ふざけんな変態!30分とか無理!ヘロヘロで出迎えることになるのが目に見えてるわ。

「俺がしてやるから、5分でイけ。」
「え?」
「二度は言わない。さっきはいたばかりのパンツを脱げ。」
「ええ?」
「、チッ」

 取り出した煌也のちんこは先程より柔らかい。
 それを何度か上下に擦れば、

「うーん、この光景はついさっきみたな。」

 ビッキビキのバッキバキ。

「初めてだから、やり方に自信はないけど。」

 煌也の足の間に入って、片手を添えてぺろりと先っぽを舐める。
 ピクピクと動くのと一緒にトロリとカウパーが出てきた。
 それを竿全体に伸ばしながら舌を尖らせて先っぽの穴をチロチロと刺激する。俺はこうされるのが気持ちいいけど、煌也はどうだろう。口を離して聞いてみる。

「煌也、どう?ちゃんと気持ちいい?」
「ん。やばい。気持ちいいしその上目遣いだけでイケそう。手、動かしてみて?」
「ん。」

 添えていた左手で上下に擦りながら裏筋を舐め上げる。
 上目遣いが良いって言ってたから、交わった視線は外さない。
 ペロペロと疎く舐めてたけど、先っぽを咥えてカリ首を舌を這わせる。俺、口が小さいから結構キツイな。

「ん、んむ。」

 ちゅぷちゅぷと響く厭らしい音と赤らんだ頬をして息が上がっている煌也の顔に欲情した。
 空いていた片手をズボンの中に突っ込んで舐め初めてから勃ってしまっていたちんこを激しく擦る。
 煌也が目をギラつかせて手を出そうとしてくるのを拒否しようと口を開くと煌也のモノが飛び出てほっぺにぶつかった。それを手で強めに擦る。

「こ、や。おれのあたま。おさえていいから、うごいて。くちのなか、きもち。」
「あー、もうっ!もう少し、大きく開ける?」

 煌也は絶対俺の嫌がることはしない。口調は焦っているけど、後頭部に触れる手のひらは優しくて言われた通りに口を大きく開けるとゆっくりとストロークされる。やばい。苦しいのに、擦れる口の中がめちゃくちゃ気持ちいい。

「ごめ、出すよっ。」
「んむっ、はぁ、う、にが。」

 同時に射精した。俺はズボンの中に…気持ち悪い。
 口の中のものは勢いでコクリと飲み込んでしまった。煌也、いつも俺の飲むけど、これは飲み物ではないな。うん。煌也の先っぽからぷくりと滲み出た残りの精液をぺろりと舐めとって、時計をみる。5分は過ぎたけど、そんなにたっていない。よし!風呂はいろう!一人でな!

「愛生…」
「ん?俺先に風呂入るな。ズボンの中気持ち悪い。」
「…フェラしてくれたの、嬉しいから。めちゃくちゃ嬉しいから今は我慢するけど、明日はベッドから出れると思わないでね?」

 にーっこり。返事をするのも躊躇われるような黒い笑顔だった。
 そそくさと風呂場に逃げて、早くも後悔する。30分エッチするのと明日一日ヤられるの、どっちが良かったのか。












「煌也君、それでねアイアイに『男イケるとか…俺の事は狙うなよ!』って馬鹿にした口調でからかう奴がクラスにいてさあ。」
「うんうん。そいつのフルネーム後で必ずメッセして。あと学校での愛生の様子も教えてくれると助かる。これ、俺のID。」

 そう言ってバカップルとIDの交換をする変態。めっちゃ打ち解けているのは嬉しいけど、盛り上がってるのはほぼ俺の話題だ。

「はぁ。トイレ行ってくる…」



「そいつさ、馬鹿にしながらもアイアイのこと絶対好きだと思うんだよね。でもさ、アイアイの返答がさ、ぶふっ。『え、俺の恋人俺の事好きすぎて頭おかしい変態だけど、なんなら俺のストーカーだけど、身長180センチ以上のイケメンで、高学歴予定で学生なのに金持ちで。何よりお前みたいに人のセクシャリティのこと馬鹿にするような最低な奴じゃないけど。そんなスパダリと付き合ってるのにどこにお前に惚れる要素あるの?』って真顔で言ったんだよー!聞いててめちゃくちゃスッキリした!あれ、天然でしょ?」

「何それ。今度そういう機会があったら録音しといて。買い取るから。あとそいつのフルネーム。」
「うける!おっけー!」



 それからというもの、俺の情報が変態に筒抜けになったのは言うまでもない。


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