カエルになったら幼なじみが変態でやべーやつだということに気づきました。

まつぼっくり

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水族館へ行きましょう

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 ごま団子を食べて、口のなかの甘さを堪能していると今度は駅の中のコーヒーショップへ。アイスコーヒーをふたつ。
 駅弁屋でカツサンドをひとつ。
 特急券は指定席。奢りということで気が引けて鈍行でと言ったけど却下、せめて自由席でと言ったけどやはり却下される。

「人多いし、痴漢されたらどうするの?ってか満員列車でぎゅうぎゅうなんて痴漢してって言ってるようなもんだよ?俺に。特急券は夜のうちにネット予約しちゃったし、行こ。」

 お前か!ふざけんな。痴漢爆発しろ!
 心の中で悪態をついていたら上手く誘導されて、気づいたら窓側の席に着席していた。

「ほら、はんぶんこしよ。しおりも読んでよ。頑張って作ったんだから。」

 その言葉にムッとしながらも半分になったカツサンドを受け取り、ボディーバッグから早くもシワが寄っているしおりを引っ張り出す。


 8:45 特急指定席にごねる
 8:53 までに宥めて乗車
 8:55 軽食
 9:00 発車

 え…こわ。
 ドン引きしていると、発車のベルが鳴る。
 プシューっと扉が閉まり、振動少なく動き出す。俺はそっとしおりを閉じてバッグに仕舞った。

「アイキちゃんと読んでよ。」
「いや、ドン引きし過ぎた…なんで俺の行動わかるの?」
「ふふ、愛だよ。」

 こっわ。

「もう、大丈夫です。イルカのショーが見られれば…なんでも…」

「イルカのショーは13時からだよ。アイキの好きなペンギンのショーも見ようね?」

「ん。少し、寝る。」

 食べたら寝る。家畜みたいだが寝不足なのだから仕方ない。この変態のせいでな!
 寝る前に一応、変態の隣で寝てエロい事されたら…としおりをもう一度出して確認した。

 9:10 アイキ体力温存

 こわ。体力温存って何の体力温存?歩くからだよね?夜の為じゃないよね…?こわ。寝よ。
 帽子を深くかぶって目を瞑ったらすっと眠りに落ちていった。

「アイキ、起きて?そろそろだよ。」
「んん、」
「ちゅー、する?」

 耳元でこそっと囁かれた言葉に飛び起きた。

「すぐに起きちゃうのはそれはそれで悲しいな。」
「ハイハイふざけんな。うあー、めっちゃ寝た…今何時?」
「もうすぐ10時半くらい。あと5分で着くよ。」

 全然起きなかった…電車の揺れって凄く眠くなる…

「ッんぐっ」

 ぽけっとしてると口の中にミント飴を突っ込まれた。

「もう、ぽやっとしないの。そんな可愛い顔してたら襲われたって文句なんて言えないんだからね?」
「いや、俺、男だから。」

 俺に欲情するのなんてお前くらいだ。言ってて悔しいな、くそ。

「そんなの知ってるけど、好きになったら性別なんて些細な事なんだよ。」

 変態ストーカーの言葉には重みがありますね?
 そう目で訴えると鼻を摘ままれた。

「ふがっ、何だよ、もう。」

「今絶対失礼なこと考えてたでしょう?ほら、停車するから立って!ぽやぽやしてると手繋ぐからね!」

「ハイハイ。」













 駅からバスに乗って、水族館へ。

「うわ!久しぶりだな~全然変わってない!」

「ね。いつぶりだろう…小学生のときのプチ家族旅行が最後?」

 保育園の遠足もここだったし、小学校低学年の頃は海に遊びに行く時は両親にねだって連れてきて貰ってた。
 二家族で旅行もしたし、うちの旅行にはコウヤがいたし、コウヤの家族旅行にも俺はいた。懐かしい。
 チケットを買ってもらっていざ、中へ。

 ホールは家族連れや恋人たちが沢山いた。
 ガラスに手をついて鯵の大群に目を奪われている小さな子が可愛らしくてつい微笑んでしまう。

「アイキもあんなだったよ?」
「ん?」
「アイキも小さいとき、ああやってガラスにぺったりくっついて目をキラキラさせてた。」

 そんなの覚えてなくて恥ずかしい。

「それでね?ルミコさんに促されても動かなくて、俺が手を繋いだらね?ふふ。「こーや、ぼく、このおさかなたべたい!」って。俺どうしようかと思ったよ?係りの人にいくらで買えるか聞きに行ったのを母さんに必死に止められた記憶がある。」

「ぶはっ、なにそれ!うける。全然覚えてないなー。ってかその頃からコウヤはコウヤな?」
「当たり前でしょ?アイキが食べたいなら買わなきゃ!って必死だったんだから。」

 ゆっくりと館内を順次にそって歩く。基本的に薄暗く、幻想的な空間が続く。
 開けた場所に出ると、ヒトデやカメなどが触れるキッズコーナーで子供達で溢れている。俺も見てみたくてふらふらと近づくとコウヤに腕を取られた。
 不思議に思いながら着いていくと、キッズコーナー脇にある岩をモチーフにした扉の前にひっそりとスタッフさんが立っていて、一組ずつ間隔を開けて中へと促す。
 少し並んで進むと先は真っ暗で、扉が閉まるとあまりの綺麗さに言葉を失った。
 真っ暗なのに水槽は青や桃色に輝いていて、ぷかぷか、ふわふわとクラゲが泳ぐ。10メートル程の短い通路には5種類程のクラゲの水槽が並んでいて、子供達のキャーキャー騒ぐ声が微かに聞こえるのにそこだけ異空間のようだった。

 思わず片手をガラスにつけて眺めているとそっと手を握られる。
 クラゲに目を奪われているからゆっくりとコウヤに振り向く。

「綺麗。」
「な?昔こんなのなかったよな…ほんと、キレイ…」

 前の一組がパタンと扉の音を立てて外へ出たのが視線の先に見えた。
 繋いでない方の手もコウヤにとられて、近づいてくる真剣な顔に瞳を閉じた。触れるだけだったけど、俺が初めて素直にコウヤのキスを受け入れた瞬間だった。

 長く感じたけど一瞬で、唇が離れた瞬間に焦って離れた。
 後ろから入ってきたカップルから隠れるように出口に向かう。
 急に明るいところへ出て、子供達の興奮した声も大音量だ。

「アイキ、お昼は二階のレストランね?」
「…俺、刺身定食にしよ。」
「言うと思った!俺もそれにしよっと。」

 騒音の中、俺に歩幅を合わせながら迷いなく歩みを進めるコウヤに着いていく。

「ねぇ、大好きだよ。」
「なに急に。」
「さっき、アイキめちゃくちゃ綺麗だった。」
「俺じゃなくてクラゲだろ?」
「海月なんていた?目に入らなかったな。」

 海月に謝れ!







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