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しおりを挟む「世界にはいらないものが3つあります。それは戦争、幽霊、パンツです!なので俺は、その3つが存在しない世界への転移を要望します…!」
「………え?」
「これは希望ではありません。要望です。強く、願います!」
「………え?」
「え?無理ですか?えぇ…じゃあ、100歩譲って戦争のない世界ではなくて、国で良いです。その国から出ないので。」
「…………えぇ?何この子…怖い。」
怖いとは何か。失礼な。そもそもこの神と名乗る人の手違いでこちらは死んだんだ。それで希望を聞くよって言ったのは神さまだろう。
「…え、本当に?戦争は、まぁわかるけど…もっと、こう…なくならないお金とかは?」
「働いた上での億万長者は夢っちゃ夢だけど、何もしないで得た金とか…人生狂いそう。」
「じゃあっ、あ!全属性の魔法使いは?」
「えー、それはあれでしょ。利用されて囲われるか、王族に気に入られてほぼ軟禁生活でしょ?ラノベ的に。」
「…う、痛いとこを突くなぁ…でも、相性の良い恋人とか出来るよ直ぐに。しかも、王族!」
これ、定期的に間違えて死なせてないかこの神さま。え、大丈夫?
「…俺、恋愛はゆっくり進めていきたい派なので…遠慮しときます。」
「えー、じゃあ、本当に戦争と幽霊とパンツがない世界?本当に?パンツ?よりによってパンツ?あっても良くない?」
「いや、良くない。いらない。超絶いらない。」
俺はパンツが嫌いだ。それこそすんなりと異世界へ行こうとしているくらいにだ。トランクスのスカスカするのにひらりと薄い布も嫌いだし、ボクサーのようにぴったりとフィットするのも蒸れて嫌いだ。その他のパンツ…主にえろいパンツは世間一般的にあまり受け入れられていないので、生活しにくい。
履かなければ良いと言う意見も却下。トイレとか温泉とかプールとかの時に視線を気にしなくてはいけないし。
いらない。本当に、パンツいらない。ノーパンの清々しさを知ってしまったら、もう戻れないのだ。家ではTシャツ1枚で、もちろんノーパン。基本的にはパンツは履かない。休日外へ出るときはノーパンでズボンだけ履く。家にいる時はノーパン一択。解放感がやべぇし、ちんちんが何にも当たらずにブラブラするの超気持ちいい。今日ももちろんノーパンだ。
皆にも試してみて欲しいのに、全然試してくれないし、引かれるし。何なら神さまでさえ今引いてるし。
「で?良いの?駄目なの?」
「う…、まぁ、パンツがない世界も無いこともない…というか…うーん。」
「あるならそこで。直ぐに!転生じゃなくて転移で!」
今さらまた赤子とか無理。普通にノーパンを楽しみたい。
「あ!じゃあじゃあ、1番最初に出会った人が心の相性がばっちりで、2番目に出会った人が体の相性ばっちりにしとくね。心も体も相性2番目はその2人だから。どっちでも良いし、どっちもでも良いし。」
うんうん、やったね!とにこにこの神さま。
「あ、いや、そういうオプションはいらないんで。」
「嬉しいよね!?よし、それで行こう。言葉もわかるようにしとくね?それじゃあばいばーい!」
話を聞かずにポイっと投げるような仕草をする。
こいつ、絶対にこういうの初めてじゃない。
「うわあああああああ!落ちるっっ!落ちてるってぇぇぇ!水?湖??泉???うわぁぁ!」
泉に落ちる直前に急停止、そしてバシャン。
神さま馬鹿なの?普通にふわりと地上に降ろせ。
「うあ、冷てぇ。」
取り敢えずここから出ないと風邪を引くとざぶざぶと岸へ向かう。少し高い岸へ手を伸ばし、腕の力だけで上がろうとすれば、途端に力強く両腕を引かれて、気づくと土の上。
「何だお前、天使か?」
「やだなぁ。天使なわけがないでしょう?どう見てもこの泉の精霊ですよ。」
「人間です。」
「…?どこの言葉だ?」
「私も聞いたことないですねぇ…」
神さま、どうかこれだけ教えて下さい。どちらが1番目でどちらが2番目に出会った人ですか?
神さま、やっぱりもうひとつだけ良いですか?言葉を理解できても話せないんですけど。何故ですか?説明が欲しいです。
…まぁ、でも、いっか。何てったってパンツのない世界だ。それだけで良い。細かいことは気にしていられない。
聞き取りは出来るとわかってくれたこの人たちは双子で、名前が凄く長かった。なので愛称で呼ばせてもらう。短髪ワイルドさんがミィジさんで、長髪美人さんがフーガさん。
「愛しい天使の名前は何だ?」
「だから美しい精霊でしょう?」
「ケイです。普通の人間です。」
「名前、知りたいなぁ。」
「知りたいですねぇ。」
「…あの?」
くいとミィジさんの袖を引く。
「ん?どうした?」
「みぃじ、ふぅが、けい、」
自分とミィジさん、フーガさんを順番に指差して名前をゆっくりと言う。
「ケイ?」
伝わった事が嬉しくてつい笑顔になって何度も首を縦に振る。
「ふぅが、けい。」
フーガさんにも同じように伝えれば、にっこり。
「ケイ、というお名前なんですね?はぁ、愛しい人の名前はケイですか…素敵なお名前ですね?」
「それで何で泉なんかに入ってたんだ?寒いだろう?」
そう問われてびしょ濡れなのを思い出した。さ、寒い。
「…くしゅんっ」
くしゃみをして直ぐにばさりとミィジさんの上着がかかる。
「とりあえず、風呂か。」
「家が近くて良かったです。私は先に行って部屋を暖めて、湯を張っておきます。」
言った側から物凄い速さでフーガさんが消えて驚く。
「あいつは風属性だからな。俺は火属性だからくっつけば少しは温かい。」
そう言って上着ごと抱き上げられ、フーガさん程ではないにしても速いスピードでミィジさんは走り出した。
ドアを開ければほっこり暖かい。
「二人とも、お湯が溜まりましたよ。」
姿は見えないけどフーガさんの声がして、ミィジさんに抱かれたまま家の奥へ進む。
扉を開けばもわりと湯気が立ち込める。
床に降ろされれば熱源が離れて、寒い。
二人にされるがまま一枚ずつ服を脱がされて、ズボンを下げた時、二人が固まる。
あれ?ノーパン文化あるんでしょ?なんでそんなガン見?男同士なんだからよくない?
「…何で下着を履いてないんだ!」
「わぁ、誘ってくれてるんですか?」
下着…?パンツ履くの?話が違うよ神さま!!!
「…っくしゅ!」
「あぁ、とりあえず風呂だ。」
抱き上げられて、ポイっと湯船に入れられる。
「ふぁ、あったかい。」
じんわりと体が温まり、顔を上げれば褌姿のお二人…
「ふんどし?え、褌!?は?何で?いや、似合うけど!」
「何言ってるか理解出来ないのが辛いですね…」
「あぁ、だが、表情がころころ変わって可愛いな。」
「完全に同意します。」
「パンツないって言ったじゃん!褌とか!ふざけんな!うぅ、のーぱん…」
俺の合法ノーパンライフが…そんなの涙も出てきてしまう。
「どうしましょう、泣き顔見たら勃ちました。」
「俺は抱き上げてるときから勃起してる。」
「うわぁぁん。こわい!この人たちこわい!」
「何言ってるかわかりませんが、下着はつけないとだめですよ?褌を締めないのは突っ込んで良いって事ですから。表情から誘ってないことはわかりますから今は手を出しませんが。」
何それ聞いてない。神さま聞いてないよ!
「ケイはレースの褌が似合いそうですね?」
「あぁ、それかシンプルに黒でも良いな。瞳と髪と揃いで。」
「なるほど。黒レースとかどうですか?」
「…良いな、オーダーしようぜ?」
「温まったら注文書を書きましょう。」
それからあーだこーだと褌の締め方まで話し合う始末。色んな締め方があるようで。あ、子供用の履くだけタイプもある?それパンツじゃね?ただのティーバックじゃね?タイトめな服にも響かない?だからティーバックじゃね?
風呂の中でお湯に浸かって悶々と考える俺。ぶくぶくと鼻下まで浸かって考える俺。なんか、もう、疲れたなぁ…
「っおい!逆上せたか?フーガ、冷やせ!」
「…のー、ぱんん…しじょ…しゅぎぃ…」
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