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第二章 番外編

んぶ!

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「んぶ!あぶぶぶぶっ…んぶうっ!」

 両手両足をバタバタとさせて一人で楽しげなマオ。生まれてから3ヶ月程経過して最近は良く喋る。



 あの後、あの魔王との対面後、本当に呪いをかけた魔族たちをぶん殴り……殴ったというよりマオを消そうとしていた派閥を根絶やしにしたマリアは赤子となったマオを見て、「曾孫…?」と呟き気絶した。
 それから毎日楽しそうにシズカを手伝ってくれている。現に今も、抱っこ大好きなマオを延々と抱っこして疲れ気味なシズカを連れ出して昼寝させてくれているはず。本当は俺が昼寝に付き添いたいのだが、幼い頃に両親から愛情を向けられなかったシズカは俺とシズカが二人揃ってマオを放っておくことを嫌がる。時折マリアとニコラス、そしてヤサたちが預かると言っても一緒に居たがるから、シズカが休む時はなるべく俺がマオに付いていられるようにしている。


「んっぶ、あぶ、んぶ!あー!」

 んぶ!とマオが喃語を喋ると、んぬんぬ言っていたのを思い出す。あまりにバタバタ動いているから音の出る玩具を握らせればガラガラ煩い。煩いのは好きではなかったはずだが、特に嫌だと思うことがないのが不思議である。

「おい、そんなに振り回していたら腕取れるぞ。」

 んぶんぶガラガラあーあー……元気で結構。

 この子はマオだが、容姿はほぼシズカだ。黒い髪も束になって見える睫毛も肌の色も。大人しいシズカが一心不乱に動いているみたいで見ていて飽きない。
 ふくふくとしている頬を指で突けばその指を掴まれる。しばらく好きにさせていたが、口に運ばれ……

「いってぇ!」

 ……噛まれた。

「んあー!んぶぶぶぶぅっ!」

 頬を軽く潰して笑顔なマオの口を開かせれば小さな歯の先が見える。

「おー、まじか。シズカの事は噛むなよ。」

「んぶうっ!」

「ふは、わかってんのかよ。」

 額を指で撫でて隣に寝転ぶ。元魔王のマオは小憎らしいところもあったが、人の子となったマオは何と言うか見ていて飽きないし、シズカに似ているし、まぁ、嫌じゃない。自分でも驚くが、もっと嫉妬するかと思っていた。それなのにこの子が居る生活は穏やかで暖かい。成長し、俺の事を父と呼ぶ時が来るのだろうか。そうしたら当たり前だがシズカが母、悪くない響きだ。

「あー、んぶあー!」

「ハイハイ、そろそろ昼寝しとけ。そんでガラガラで殴るな。」

 あっぶあっぶとガラガラを口の中に。入るわけ無い…うける。

「あー、可愛い。……いやいやいや…」

 うわ、ない。俺がシズカ以外を可愛いとかない。あーでもこの子は見た目シズカだから…瞳の色だけ黒と銀が混ざったような色だが、他はシズカだから。だから、可愛いも可笑しくはない……でもなぁ。

「マオなんだよなぁ。」

 いつの間にかすぅすぅと寝息をたてているマオ。その寝息を聞いていたらいつの間にか一緒になって眠っていた。







 うわ、寝てた。開眼後すぐに眠ったままのマオが視界に入る。気配を感じて後ろを向けば背中にぴたりと張り付く愛しい半身。そっと体の向きを変えて抱き締めた。

「あー、可愛い。」

「リオ、お留守番ありがとう。」

「いや、疲れてないか?少しは寝れた?」

「おかげさまでぐっすり。マオさんは大丈夫だった?」

「ん。んぶんぶしてた。」

 くすくすと笑うシズカ。

「そういや歯が生えてきてた。噛まれたからシズカも気をつけてな。」

「ええっ、そうなの?痛くはない?」

 噛まれた痕を見せれば温かい光が指先に纏う。

「治癒ありがと。」

「ううん。僕もマオさんの歯、みたいなぁ。起きたらみせて貰おう。」

 そう言いながら治癒してくれてすっかり痕が消えた俺の指に頬ずり。いや可愛い。そのまま柔らかな頬を堪能する。
 頬だけじゃ足りなくなって唇に触れていたらあぐりと甘噛み。

「ふふ、マオさんのまねっこ。」

 堪えきれずに唇を何度も甘噛みした。

























「行ってきまぁす!」

「いや、お前は世界で二番目に可愛いんだから一人で出歩くな自覚しろ。……待て、一緒に行く。」

 こんな未来が来るまであともう少し。







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