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第二章

花束といちご飴

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 シズカは里の外へ出る機会が中々ない。まぁ、機会なんてものは作らせてないのだが……
 そんなシズカの為に初日は獣人の暮らす国を通ることにした。獣人は人とは違って匂いで判断するし、番だと感じれば一直線。……ただ、脳筋が多い。好ましいと感じたらグイグイ来る。その辺が心配だと告げた時のヤサの顔はお前は何なんだと言いたげであってとても心外であった。
 人の国よりはマシそうだが、今のシズカは見た目がエルフ。可愛らしさに麗しさまで追加されて心配でしかない。
 人数が多いとそれだけで目立つから、フードを被ったシズカと二人で街の探索と折角だからと買い物に出てきた。



「リオ、あそこでお肉売ってる…あ、いちご飴も…お金は同じ硬貨…?あそこはパン屋さんかな?良い匂い。」

 そわそわキョロキョロと辺りを見渡すシズカ。右手でしっかりと俺の左手を握って、空いた左手は俺の外套をキュッと握る。好奇心はあるが不安もあるのだろう。歩きにくくはないだろうか。抱き上げて移動したい。
 いつの間にか口角をあげてシズカを見ていたからか、目が合った後に恥ずかしそうに視線を下げる。

「もー、ひとりではしゃいで恥ずかしい。」

「いや、可愛いだけだけど。歩きにくくないか?抱き上げさせてくれる?」

「……だめ。」

「ふは。尖った耳が真っ赤。」

 偽物の耳でもちゃんと苺色に染まっているのがフードから僅かに見える。ヤサすげぇな。

「あのね、みんな馬車でお留守番してくれてるでしょう?お土産買って行こうね。」

「ん。シズカの買いたいものを選べば良い。」

 自信がないから一緒に選ぼう?と繋いだ手を前後にゆるく揺らすシズカ。正直ただ馬車で留守番している奴らに土産とか意味がわからないが、シズカが可愛く一緒にとか言うから断る理由はない。

「皆何でも喜ぶと思うけど、そう言うなら一緒に選ぶか。」

 メルロとマオの土産は直ぐに決まった。メルロには花屋で綺麗な黄色の花を数本注文。シズカにはフードを深く被らせているから顔はわからないだろうが、店主のジジイは俺を見るなりエルフだなんてご利益が~などといって色とりどりの花束を作り出す。いや、それメルロに食われるのだが。貰えるものは貰えば良いかと口出しせずにいれば手を繋いでいるシズカへのプレゼントかと思われたのかリボンまで巻かれて困惑しているのがヒシヒシと伝わってくる。

「お客さん、こーんな色男の恋人がいて良いねぇ。」

 急に話しかけられて花束渡されてビクリと体が跳ねたシズカ。繋がれた手をきゅっと握ればホッとした表情。

「んと、恋人ではなくて半身です…!お花ありがとうございます。とても綺麗で良い香りです。」

「ん。お前らみたいな獣人でいう運命の番ってやつ。シズカ、それ持つ。」

 最初に恋人という言葉を訂正するのが愛おしくて両手で花束を受け取ったシズカから花束取り上げて手を繋ぎ直した。

「そうなのかい!そりゃ悪かったねぇ。新婚ってやつかい?じゃあこれもサービスだ。」

 差し出された真白の一本の花は可憐でシズカによく似合う。それをそっとフードの中の耳に。

「ありがと。」
「ありがとうございます。」

 勝手に色々サービスされたけど、その分の料金も支払って花屋の店主へ礼を言ってその場を後にした。

 マオへの土産はあいつは何でも食うけど果物が特に好きそうだから、果物を使った飴にした。ここは店番が若い男で俺達をジロジロと見てくるからつい睨む。シズカは飴に夢中だけど。

「やっぱりマオさんは体もおくちも小さいし苺飴かな?」

「あー、だな。じゃあそれ三つで。」

「みっつも?」

 マオさんの健康に悪い気がする…と元魔王の健康を気にするのが面白い。

「シズカもこういうの好きだろ?あと、マリアにあげたら揃いのものを食べるのが夢だったとか言いそう。どうだ?」

「ふふ!確かにおばあちゃんはそう言うね。僕の分もありがとう。」

 あー、笑ったら可愛い顔を隠していても意味がない。スッと通った鼻筋も小さめで形の良い唇も可愛い要素しかないのに、笑い声までだなんて。

「わ!リオどうしたの?」

 眼前の狼獣人の男がシズカの顔を覗こうと屈むものだから腰を引き寄せてフードを少し下へ引く。

「ん?ただの独占欲。」

「なにそれ。」

 もう少しフード大きくて良かったな、あーでもこれ以上だと歩き難いか。

「抱き上げて運んでも良い?」

「ふふっ!またそれ?だめです。」

 一緒に歩こう?と見つめられたら断れない。

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