13 / 44
第13話 生クリームが残された現場
しおりを挟む
やはりいい風が吹く。
この島に来るのは何年ぶりだろう。
風の心地良さは少しも変わらない。
「よく来てくれた、友よ」
「王よ、私のことを未だに友と呼んでくださることには感謝しますが私のような島を出た者をそのように呼んでは示しがつきませぬ」
「なに、今ここには私とそなたしかおらぬのだ。構わんだろう」
私の尊敬する王は全く変わらないご様子だ。
「そもそもな、王だなんだとこんな仰々しい名前で呼ばれるのに私はもうウンザリしてしまっているのだよ」
「その様なことをおっしゃってはなりませぬ。御名は祖先より代々受け継がれる偉大な名ではありませぬか」
「それなのだがな…
実は全島民の名を統一して全員一つの同じ名前にしようかと思っている。」
驚いた。風の声を聞き、星の夢を見ると謳われた我らが王のロマンティストぶりは未だに健在らしい。
「女王様には相談なされたのですか」
「妻は今日は既に寝ている。明日話すつもりだ。まぁあれで憐れみ深く、情けの深い女だ、話せばわかってくれているだろう。」
たしかに女王様は反対はされないかもしれない。
「お子様方はどうなのですか。もう学校にも通われてらっしゃるご年齢ですよね」
「どうであろうな。むしろあやつらの学校嫌いが改善されないか期待しているのだがな。恐らく学校で王の子供と特別扱いされるのも嫌気がさしているのであろう」
どうやら説得は難しいようだ。
王は一度自ら決めたことをそう簡単に翻す方ではない。
「して、その島民全員同じにする名は既に決めていらっしゃるのですか?」
「いや、実はそれがまだなのだ。古より島に伝わる儀によって決めようと思う。その見届けをして欲しくてそなたをここに呼んだのだ」
「左様でございましたか、では早速用意をしましょう」
半ばやぶれかぶれですぐに準備に取り掛かることにする。
この島に古より伝わる儀とはボウルに生クリームをなみなみいっぱいにし、そこにヤシガニを落とした際の生クリームの飛び散り方によって島の大切なことを決めたり未来を占ったりする方法だ。
「では参りますね」
「始めてくれ」
なるべく高くからボウル目掛けてヤシガニを落とす。
暴れて足を振り回すヤシガニ。
相当の生クリームが飛び散った。
「形を見てくれ、何か文字は見えるか」
「これは…ハ、メ、ハ、メ、ハ…
ハメハメハ、と読めますね」
この島に来るのは何年ぶりだろう。
風の心地良さは少しも変わらない。
「よく来てくれた、友よ」
「王よ、私のことを未だに友と呼んでくださることには感謝しますが私のような島を出た者をそのように呼んでは示しがつきませぬ」
「なに、今ここには私とそなたしかおらぬのだ。構わんだろう」
私の尊敬する王は全く変わらないご様子だ。
「そもそもな、王だなんだとこんな仰々しい名前で呼ばれるのに私はもうウンザリしてしまっているのだよ」
「その様なことをおっしゃってはなりませぬ。御名は祖先より代々受け継がれる偉大な名ではありませぬか」
「それなのだがな…
実は全島民の名を統一して全員一つの同じ名前にしようかと思っている。」
驚いた。風の声を聞き、星の夢を見ると謳われた我らが王のロマンティストぶりは未だに健在らしい。
「女王様には相談なされたのですか」
「妻は今日は既に寝ている。明日話すつもりだ。まぁあれで憐れみ深く、情けの深い女だ、話せばわかってくれているだろう。」
たしかに女王様は反対はされないかもしれない。
「お子様方はどうなのですか。もう学校にも通われてらっしゃるご年齢ですよね」
「どうであろうな。むしろあやつらの学校嫌いが改善されないか期待しているのだがな。恐らく学校で王の子供と特別扱いされるのも嫌気がさしているのであろう」
どうやら説得は難しいようだ。
王は一度自ら決めたことをそう簡単に翻す方ではない。
「して、その島民全員同じにする名は既に決めていらっしゃるのですか?」
「いや、実はそれがまだなのだ。古より島に伝わる儀によって決めようと思う。その見届けをして欲しくてそなたをここに呼んだのだ」
「左様でございましたか、では早速用意をしましょう」
半ばやぶれかぶれですぐに準備に取り掛かることにする。
この島に古より伝わる儀とはボウルに生クリームをなみなみいっぱいにし、そこにヤシガニを落とした際の生クリームの飛び散り方によって島の大切なことを決めたり未来を占ったりする方法だ。
「では参りますね」
「始めてくれ」
なるべく高くからボウル目掛けてヤシガニを落とす。
暴れて足を振り回すヤシガニ。
相当の生クリームが飛び散った。
「形を見てくれ、何か文字は見えるか」
「これは…ハ、メ、ハ、メ、ハ…
ハメハメハ、と読めますね」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
[百合]短編集
[百合垢]中頭
現代文学
百合の短編集です。他サイトに掲載していたものもあります。健全が多めです。当て馬的男性も出てくるのでご注意ください。
表紙はヨシュケイ様よりお借りいたしました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる