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poppin' 3. 蓮多
06.
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「…つったけど、行きたくねえええ」
翌週。放課後の教室で頭を抱え込む蓮多。
「えー、なになに、どした?」
「楽しそうじゃん。俺らに話してみろって」
を取り囲むいつもの友人、東西南北軍団たち。
凛都先輩に誘われた(事実上の果たし状だと蓮多は睨んでいる)高校生弓道日本一を決める選手権大会(の予選らしい)が、明日に迫っていた。そもそも凛都先輩はその大会に参加するために日本に帰ってきたらしく、木瀬と二人きりだった昼練には割り込まれ、バイト前後の木瀬も連れ去られて、彼らは親密さを増している。
おかげで蓮多は木瀬に近寄ることが出来ない。
が、実のところ、そのことに安堵してもいた。
木瀬のことが好きらしいと自覚してから、木瀬に対して平静を保つのが難しいからだ。
「星丸、この前は俺を助けに来てくれて、…」
「うっせえ、昼間っから幻想見てんじゃねえ!」
休み時間、通常は机に伏せて寝てばかりいる木瀬が、珍しく蓮多に話しかけに来てくれた。にもかかわらず、必要以上に切れて距離を取ってしまった。
あああ、木瀬から俺に絡んでくるなんて、滅多にない貴重な機会だったのに。
「…蓮多」
「うっぎゃあああああ」
更に。男子トイレの前で木瀬と鉢合わせて、あろうことか不意打ちキスを仕掛けられた時には、絶叫して逃げだしてしまった。
俺のバカ。死ね。なんでこんなにテンパってんだ。完全におかしいだろう。
「蓮多、最近挙動不審だもんな」
「どうせ木瀬絡みだろ?」
「木瀬くんに彼女でもできた?」
「あれでしょ。3年の凛都先輩に木瀬くん取られたから」
東西南北たちが聞こえよがしに勝手なことを言っている。
それが、ほとんど当たっているだけにいたたまれない。
木瀬に彼女を作って振られたところを慰める、とか考えていた過去の自分が恨めしい。木瀬が自分より優先する相手が出来たってだけで、胃がズキズキして奈落の底まで落ちそうになる。木瀬には彼女も彼氏も一生出来なければいい。
「ええ~? 弓道部、試合があるの?」
「そうそう。木瀬くんが出るんだって」
「やっだぁ、絶対観に行かなきゃ」「何ならポンポン作らなきゃ!」
地の底でもんどりうってた蓮多だが、クラスメイトの女子たちの会話を耳ざとく拾ってしまった。
やめとけ、お前ら。見せつけられるだけだぞ。
財閥一家の本妻と妾に生まれた異母兄弟。
逆境の中で思い合う二人。禁断の関係に秘めた恋情はますます燃え上がり、…
「うおおおおお、俺は何を見せつけられるんだ!?」
立ち入り禁止の2人の絆? 口外禁止の2人の蜜月?
けしからん。成敗してやるっ
「…なるほど」
「木瀬の試合前でそわそわしてるわけね」
「安心しろ、蓮多」「アタシらも行ってあげるから」
…や、君ら、露ほどの役にもたたねえから。
「俺ら横断幕作るの得意だぜ」「あー、アタシ筆で書くぅ」
「喜田、書道3段だもんね」「…無駄な特技だな。っ痛!」
心の準備がまるで出来ていないというのに、迎えた翌日、『木瀬命』という世にも恥ずかしい横断幕を引っ提げて、蓮多は弓道の聖地・明治神宮にやってきてしまった。
翌週。放課後の教室で頭を抱え込む蓮多。
「えー、なになに、どした?」
「楽しそうじゃん。俺らに話してみろって」
を取り囲むいつもの友人、東西南北軍団たち。
凛都先輩に誘われた(事実上の果たし状だと蓮多は睨んでいる)高校生弓道日本一を決める選手権大会(の予選らしい)が、明日に迫っていた。そもそも凛都先輩はその大会に参加するために日本に帰ってきたらしく、木瀬と二人きりだった昼練には割り込まれ、バイト前後の木瀬も連れ去られて、彼らは親密さを増している。
おかげで蓮多は木瀬に近寄ることが出来ない。
が、実のところ、そのことに安堵してもいた。
木瀬のことが好きらしいと自覚してから、木瀬に対して平静を保つのが難しいからだ。
「星丸、この前は俺を助けに来てくれて、…」
「うっせえ、昼間っから幻想見てんじゃねえ!」
休み時間、通常は机に伏せて寝てばかりいる木瀬が、珍しく蓮多に話しかけに来てくれた。にもかかわらず、必要以上に切れて距離を取ってしまった。
あああ、木瀬から俺に絡んでくるなんて、滅多にない貴重な機会だったのに。
「…蓮多」
「うっぎゃあああああ」
更に。男子トイレの前で木瀬と鉢合わせて、あろうことか不意打ちキスを仕掛けられた時には、絶叫して逃げだしてしまった。
俺のバカ。死ね。なんでこんなにテンパってんだ。完全におかしいだろう。
「蓮多、最近挙動不審だもんな」
「どうせ木瀬絡みだろ?」
「木瀬くんに彼女でもできた?」
「あれでしょ。3年の凛都先輩に木瀬くん取られたから」
東西南北たちが聞こえよがしに勝手なことを言っている。
それが、ほとんど当たっているだけにいたたまれない。
木瀬に彼女を作って振られたところを慰める、とか考えていた過去の自分が恨めしい。木瀬が自分より優先する相手が出来たってだけで、胃がズキズキして奈落の底まで落ちそうになる。木瀬には彼女も彼氏も一生出来なければいい。
「ええ~? 弓道部、試合があるの?」
「そうそう。木瀬くんが出るんだって」
「やっだぁ、絶対観に行かなきゃ」「何ならポンポン作らなきゃ!」
地の底でもんどりうってた蓮多だが、クラスメイトの女子たちの会話を耳ざとく拾ってしまった。
やめとけ、お前ら。見せつけられるだけだぞ。
財閥一家の本妻と妾に生まれた異母兄弟。
逆境の中で思い合う二人。禁断の関係に秘めた恋情はますます燃え上がり、…
「うおおおおお、俺は何を見せつけられるんだ!?」
立ち入り禁止の2人の絆? 口外禁止の2人の蜜月?
けしからん。成敗してやるっ
「…なるほど」
「木瀬の試合前でそわそわしてるわけね」
「安心しろ、蓮多」「アタシらも行ってあげるから」
…や、君ら、露ほどの役にもたたねえから。
「俺ら横断幕作るの得意だぜ」「あー、アタシ筆で書くぅ」
「喜田、書道3段だもんね」「…無駄な特技だな。っ痛!」
心の準備がまるで出来ていないというのに、迎えた翌日、『木瀬命』という世にも恥ずかしい横断幕を引っ提げて、蓮多は弓道の聖地・明治神宮にやってきてしまった。
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