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poppin' 3. 蓮多

04.

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「新作のクリスピーチキンサンド、美味そう」
「俺、ヨーグルトハニーソーダ飲みたい」
「俺、このカルツォーネっての! ポテトも付けていい!?」

「おう、好きにしな」

途中、薬局に寄り、怪我をした中学生の擦り傷はきれいに洗い、ぶつけて腫れたところには湿布を貼ってやってから、連れだってファミリーレストランに入った。凛都先輩が何でも好きなものを頼んでいいと言うので、中学生たちは目をきらきらさせてメニューに見入っている。

そんな中学生たちを優しく見守る凛都先輩の無駄に整った横顔を、憮然としたまま盗み見た。

帰国子女だっけか、ハーフだっけか。明るくて親しみやすくて大人で親切。おおよそ欠点など見つかりそうもない横顔は、敵愾心を呼び起こす。

何で俺、凛都先輩が嫌いなんだろう、…

「で? 蓮多くんは昴のどこが好きなの?」

ドリンクバーで取ってきたメロンソーダをやけくそ気味に飲んだところで、凛都先輩に話を振られて、思い切り吹いた。

そうだ、この遠慮のなさだ。人の弱みにずばずば切り込んでくるようなとこだ。っつーか、何もかもお見通しって言う余裕目線が気に入らないんだ。

「わ、きたなっ」
「何してるんすか、もう~~」

黙れ、中学生ども。
ぶつぶつ言ってる中学生たちを立ち上がって威嚇しながら叫ぶ。

「俺が木瀬を好きなんじゃないっ、木瀬が俺を、…っ」

言いながら顔が熱を持つのが自分で分かった。

『…あるわけないだろ、バーカ』

木瀬から好きじゃないと言われて、ひどく落ち込み、

『…美味かったよ。サンキュー、蓮多』

木瀬からキスされて、脳みそまで溶けそうに嬉しくて、

『…お前、関係ないだろ』

木瀬から拒絶されると、どうにかなりそうなほど胸が痛い。

木瀬の困難には立ち向かいたいし、木瀬が窮地に立っているなら助けたい。

『…お前のが小さいのに』

全然、一つも、木瀬に勝ってないけど、でも、それでも俺だって、…

このところの必死な感情の乱高下を思い出すとなんだか涙が出そうになる。
それで思い当たって、語尾が途切れた。

「…え? 俺が木瀬を好きなのか?」

たどり着いた結論に力が抜けて、椅子に座り込む。
え? 俺、木瀬のこと好きなのか? いつ? いつから?

「わあ、無自覚に落ちてるやつだ」
「どう見たって好き丸出しだったのにね」

メロンソーダの散ったテーブルを拭きながら、中学生たちが楽しそうにキャッキャしている。他人のコイバナこそ格好のつまみである。

「ピンチと思って俺に蹴り掛かってくるくらい必死で好きなのに」

蓮多に蹴られた中学生が、ここぞとばかりにニヤニヤしてくる。
うるせえ、黙れ。

「昴は苦労してきたから、幸せになって欲しいんだ。簡単には渡せないな」

頬杖をついて小首を傾げながら、長い足を持て余したように組んで蓮多を見る凛都先輩はやっぱり嫌いだ。
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