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7章.両想ネバーエンディング
14.
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「ナナセさんが今、出ていらっしゃいました―――っ」
芸能レポーターさんだろうか、歓声の中、ひと際大きな声が上がる。
「白いインナーに黒のジャケット。長い足が際立っていますっ」
「お隣にいらっしゃるのがご結婚相手で、お姉様でもある雨宮つぼみさんですね。手に手を取って非常に仲睦まじいご様子ですっ」
プリンセスホテルのスイートルームで、晴れた空と眼下に広がる賑やかな街並みを眺めながら、ルームサービスでブランチを頂くという究極の贅沢を堪能した後、ホテルをチェックアウトした。
御堂家の穂積さんと早百合母さんにも挨拶して、今後のことはまた相談しながら決めていこうということになったけど、御堂母さんは早急に味噌づくりを伝授したいらしく、「で、次のお休みはいつ? いつこちらにいらっしゃれるの?」と、目をギラギラさせていた。
「ナナセさ~ん、ご結婚されるそうですね」「おめでとうございます!!」
「ああっ‼ 指輪っ、指輪してらっしゃいますねっ‼」
昨日の婚約会見でななせが結婚宣言した様子は瞬く間に世間に広がったらしく、ホテルのエントランスには報道関係者が大勢詰めかけ、ライトやカメラのフラッシュ、おびただしい数のマイクが矢継ぎ早に向けられる。予想以上の騒々しさに正直ビビりまくりだったけど、ななせがしっかり手を繋いでくれていた。
「ナナセさんが贈られたんですよね!?」「見せて頂けませんか―――っ!?」
「ナナセさん、今のお気持ちは!?」「一言っ、一言お願いします―――っ」
ホテルを報道関係者が包囲しているという情報は事前に知らされていて、ななせとは別に私は裏口から出してもらうという方法も提案されたけど、正面切っていくことにした。
ななせのファンやななせを好きな人をがっかりさせてしまうことは本当に申し訳ないと思う。元々家族で姉という立場の私を不潔だと思う人がいるのも分かる。嫌悪感や憎悪を抱く人がいるのも分かる。
自分でも恵まれた立場にいたと思う。
あの時、ななせのそばにいられる存在であったことを神様に感謝している。
「…幸せです」
ななせが膨大なフラッシュの中、足を止めて、深く頭を下げた。
うお、と思って、慌てて私も頭を下げた。繋いでくれているななせの手が力強い。私にとってはそれが全てだ。
「ありがとうございます」
ななせの隣にいられること。ななせが選んでくれたこと。
一緒に歩いて行くと誓えたこと。
その感謝の気持ちをいつもちゃんと胸に留めていたいと思う。
嫌悪や憎悪の対象になるのはツラいけど、それでもななせの隣は譲れない。ななせが必要としてくれるなら、もう絶対に離れない。これからもななせと一緒に生きていく。だから。
「ありがとうございます」
申し訳ない気持ちよりもありがとうの気持ちを持って、前を向いて歩いて行きたい。逃げることも隠れることもせずに、ななせと一緒に歩いて行きたい。
頭を下げたななせと私に拍手と祝福、歓声が沸き起こった。
ななせに手を引かれて、迎えに来てくれたタクシーに乗り込む。
これから。
どんなことが待っているのか分からない。
結婚はゴールではなくスタートだって言うし。
それでも。
ななせがいれば。ななせと一緒なら。絶対に乗り越えていける。
「おめでとうございま~~~すっ‼」
タクシーの後部座席から報道関係者に会釈して、私とつないだ手を掲げると、ななせが魅惑の微笑みを浮かべて左手薬指の指輪に口づけた。
芸能レポーターさんだろうか、歓声の中、ひと際大きな声が上がる。
「白いインナーに黒のジャケット。長い足が際立っていますっ」
「お隣にいらっしゃるのがご結婚相手で、お姉様でもある雨宮つぼみさんですね。手に手を取って非常に仲睦まじいご様子ですっ」
プリンセスホテルのスイートルームで、晴れた空と眼下に広がる賑やかな街並みを眺めながら、ルームサービスでブランチを頂くという究極の贅沢を堪能した後、ホテルをチェックアウトした。
御堂家の穂積さんと早百合母さんにも挨拶して、今後のことはまた相談しながら決めていこうということになったけど、御堂母さんは早急に味噌づくりを伝授したいらしく、「で、次のお休みはいつ? いつこちらにいらっしゃれるの?」と、目をギラギラさせていた。
「ナナセさ~ん、ご結婚されるそうですね」「おめでとうございます!!」
「ああっ‼ 指輪っ、指輪してらっしゃいますねっ‼」
昨日の婚約会見でななせが結婚宣言した様子は瞬く間に世間に広がったらしく、ホテルのエントランスには報道関係者が大勢詰めかけ、ライトやカメラのフラッシュ、おびただしい数のマイクが矢継ぎ早に向けられる。予想以上の騒々しさに正直ビビりまくりだったけど、ななせがしっかり手を繋いでくれていた。
「ナナセさんが贈られたんですよね!?」「見せて頂けませんか―――っ!?」
「ナナセさん、今のお気持ちは!?」「一言っ、一言お願いします―――っ」
ホテルを報道関係者が包囲しているという情報は事前に知らされていて、ななせとは別に私は裏口から出してもらうという方法も提案されたけど、正面切っていくことにした。
ななせのファンやななせを好きな人をがっかりさせてしまうことは本当に申し訳ないと思う。元々家族で姉という立場の私を不潔だと思う人がいるのも分かる。嫌悪感や憎悪を抱く人がいるのも分かる。
自分でも恵まれた立場にいたと思う。
あの時、ななせのそばにいられる存在であったことを神様に感謝している。
「…幸せです」
ななせが膨大なフラッシュの中、足を止めて、深く頭を下げた。
うお、と思って、慌てて私も頭を下げた。繋いでくれているななせの手が力強い。私にとってはそれが全てだ。
「ありがとうございます」
ななせの隣にいられること。ななせが選んでくれたこと。
一緒に歩いて行くと誓えたこと。
その感謝の気持ちをいつもちゃんと胸に留めていたいと思う。
嫌悪や憎悪の対象になるのはツラいけど、それでもななせの隣は譲れない。ななせが必要としてくれるなら、もう絶対に離れない。これからもななせと一緒に生きていく。だから。
「ありがとうございます」
申し訳ない気持ちよりもありがとうの気持ちを持って、前を向いて歩いて行きたい。逃げることも隠れることもせずに、ななせと一緒に歩いて行きたい。
頭を下げたななせと私に拍手と祝福、歓声が沸き起こった。
ななせに手を引かれて、迎えに来てくれたタクシーに乗り込む。
これから。
どんなことが待っているのか分からない。
結婚はゴールではなくスタートだって言うし。
それでも。
ななせがいれば。ななせと一緒なら。絶対に乗り越えていける。
「おめでとうございま~~~すっ‼」
タクシーの後部座席から報道関係者に会釈して、私とつないだ手を掲げると、ななせが魅惑の微笑みを浮かべて左手薬指の指輪に口づけた。
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