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7章.両想ネバーエンディング
13.
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クリームイエローのワンピース。
形はシンプルだけど、刺しゅうやレースが施されていて、シフォン袖だったり、さり気にティアードがあったりして物凄く可愛い。それでいて、婚約会見という場にふさわしい気品があり、清楚で、好みもサイズもピッタリ。御堂母さんにも褒められたし、来賓の方々にも好評だった。
そのワンピースは、ななせに煽られて早急に乱れてしまい、巧みに脱がされたまま揉みくちゃになっていたんだけど、いつの間にかななせがクローゼットにかけてくれていた。
あの素敵すぎるワンピースは、…
『さすがに、お前のことよく分かってるな』
ワンピースを渡してくれた時の創くんの言葉を思い出す。
「ななせ、…」
ななせだったんだ。ななせが買ってくれたんだ。
後ろに立っているななせを振り仰ぐと、
「別にお前のサイズを逐一暗記してるとかじゃねえから」
なんだかふて腐れ気味にそっぽを向かれた。
侑さんに1ミリも違わず把握しているとか言われたのを気にしているらしい。
「…お前に似合うと思っただけ」
照れたみたいな顎のカーブが愛しくて、
「うんっ! ななせ、ありがとうっ」
超高速で込み上げる嬉しさに我慢できず、ななせに抱き着いてしまった。
あの可愛いワンピース、似合うと思ってくれたんだ。私のために。ななせが選んでくれたんだ。
「すごくすごく、気に入ったよっ‼」
「…そうか」
ななせをぎゅうぎゅうに抱きしめて興奮気味に告げたら、ななせの身体から力が抜けて、私の背中に回した腕で緩やかに抱きしめてくれた。
もしかしたら。
ななせは私よりも私のことをよく分かっているのかもしれない。きっと誰よりも近くで、ずっと私のことを見ていてくれたんだ。
「あの、…お願いがあるんだけど」
「なに?」
ななせの匂いに包まれて、喜びに擦り寄っていたら、ふと思ったことが口を突いて出た。
「ウエディングドレス、…一緒に選んで欲しい」
大胆なお願いのような気もする。
贅沢なお願いのような気もする。
だってそれは。これから歩む私の人生を、一緒に歩いて一緒に悩んで一緒に選んでいってもらえないかということで。まあつまり。結婚するってそう言うことかもしれないけど。
「いいよ、もちろん」
あっさり頷いたななせの低くて甘い声が、頭の芯にじんわり沁みて、目頭が熱くなる。
「これからのこと、一緒に考えていこう。もうすぐ卒業だけど、俺たちまだ学生だし。母さんとも話して、入籍のタイミングとか、挙式のこととか、就職のこととか、な」
ななせの大きな手が背中をポンポン優しく撫でる。
「…ホントにいいの? 二人で、生きてくってことだよ?」
涙声になってしまった。
そんな簡単に承諾していいの。人生を交えるって、いい時も悪い時も、苦楽を共にするって、そんな簡単なことじゃないよ。逃げたくなるかもしれないよ。捨てたくなるかもしれないよ。
「いいに決まってんだろ」
ななせの長い指が私の髪を撫でて、優しい唇が頭のてっぺんに触れる。
「お前のいない人生なんて最初からないんだから」
我慢できなくて涙が零れ落ちた。
…でも。ななせとなら、大丈夫だって信じられる。
何があってもずっと一緒に生きていくって誓える。
「…ありがとう、ななせ」
これから、二人で。
幸せな時も、困難な時も。富める時も、貧しき時も。
病める時も、健やかなる時も。死がふたりを分かつまで。
愛し、慈しみ、貞節を守ることをここに誓います。
「…だいすき」
上手くいかないこともたくさんあるだろうけど。
喧嘩しても仲直りしようね。怒ってもまた笑おうね。
どんなに形が変わってもずっとずっと大好きだから。
「ななせを好きになって良かった、…」
神さま。
確かなものは私の好きだけ。だけど。
それは絶対になくならないと誓えます。
泣いてばかりの私を見て、ななせは少し困ったように笑うと、
「…愛してる」
世界で一番優しいキスをしてくれた。
形はシンプルだけど、刺しゅうやレースが施されていて、シフォン袖だったり、さり気にティアードがあったりして物凄く可愛い。それでいて、婚約会見という場にふさわしい気品があり、清楚で、好みもサイズもピッタリ。御堂母さんにも褒められたし、来賓の方々にも好評だった。
そのワンピースは、ななせに煽られて早急に乱れてしまい、巧みに脱がされたまま揉みくちゃになっていたんだけど、いつの間にかななせがクローゼットにかけてくれていた。
あの素敵すぎるワンピースは、…
『さすがに、お前のことよく分かってるな』
ワンピースを渡してくれた時の創くんの言葉を思い出す。
「ななせ、…」
ななせだったんだ。ななせが買ってくれたんだ。
後ろに立っているななせを振り仰ぐと、
「別にお前のサイズを逐一暗記してるとかじゃねえから」
なんだかふて腐れ気味にそっぽを向かれた。
侑さんに1ミリも違わず把握しているとか言われたのを気にしているらしい。
「…お前に似合うと思っただけ」
照れたみたいな顎のカーブが愛しくて、
「うんっ! ななせ、ありがとうっ」
超高速で込み上げる嬉しさに我慢できず、ななせに抱き着いてしまった。
あの可愛いワンピース、似合うと思ってくれたんだ。私のために。ななせが選んでくれたんだ。
「すごくすごく、気に入ったよっ‼」
「…そうか」
ななせをぎゅうぎゅうに抱きしめて興奮気味に告げたら、ななせの身体から力が抜けて、私の背中に回した腕で緩やかに抱きしめてくれた。
もしかしたら。
ななせは私よりも私のことをよく分かっているのかもしれない。きっと誰よりも近くで、ずっと私のことを見ていてくれたんだ。
「あの、…お願いがあるんだけど」
「なに?」
ななせの匂いに包まれて、喜びに擦り寄っていたら、ふと思ったことが口を突いて出た。
「ウエディングドレス、…一緒に選んで欲しい」
大胆なお願いのような気もする。
贅沢なお願いのような気もする。
だってそれは。これから歩む私の人生を、一緒に歩いて一緒に悩んで一緒に選んでいってもらえないかということで。まあつまり。結婚するってそう言うことかもしれないけど。
「いいよ、もちろん」
あっさり頷いたななせの低くて甘い声が、頭の芯にじんわり沁みて、目頭が熱くなる。
「これからのこと、一緒に考えていこう。もうすぐ卒業だけど、俺たちまだ学生だし。母さんとも話して、入籍のタイミングとか、挙式のこととか、就職のこととか、な」
ななせの大きな手が背中をポンポン優しく撫でる。
「…ホントにいいの? 二人で、生きてくってことだよ?」
涙声になってしまった。
そんな簡単に承諾していいの。人生を交えるって、いい時も悪い時も、苦楽を共にするって、そんな簡単なことじゃないよ。逃げたくなるかもしれないよ。捨てたくなるかもしれないよ。
「いいに決まってんだろ」
ななせの長い指が私の髪を撫でて、優しい唇が頭のてっぺんに触れる。
「お前のいない人生なんて最初からないんだから」
我慢できなくて涙が零れ落ちた。
…でも。ななせとなら、大丈夫だって信じられる。
何があってもずっと一緒に生きていくって誓える。
「…ありがとう、ななせ」
これから、二人で。
幸せな時も、困難な時も。富める時も、貧しき時も。
病める時も、健やかなる時も。死がふたりを分かつまで。
愛し、慈しみ、貞節を守ることをここに誓います。
「…だいすき」
上手くいかないこともたくさんあるだろうけど。
喧嘩しても仲直りしようね。怒ってもまた笑おうね。
どんなに形が変わってもずっとずっと大好きだから。
「ななせを好きになって良かった、…」
神さま。
確かなものは私の好きだけ。だけど。
それは絶対になくならないと誓えます。
泣いてばかりの私を見て、ななせは少し困ったように笑うと、
「…愛してる」
世界で一番優しいキスをしてくれた。
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