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7章.両想ネバーエンディング

03.

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揺られて漂う。包まれて微睡まどろむ。
甘く続く快感と。優しい温もりと。心地よい眠り。

至福に満たされて永遠を願う。

今がここにある限り永遠はないって分かっている。

でも。
心も身体も壊れて何もかも失くしたと思った時間も、今この時に繋がっていたのなら、変わることも怖くないと思える。変わるものも変わらないものもあるけれど、ななせとなら、どんなに形が変わっても時間を超えて思い続けていけるって信じられる。

愛しい愛しい温もりを抱きしめる。

ななせに会えて良かった。
ありふれた出会いが奇跡になった。
私とななせを巡り合わせてくれた全ての人に感謝して。

そして。私を見つけてくれたななせに。

「…ありがとう、ななせ。…だいすき」

至上の幸福に揺られながら目を開けると、怖いくらい綺麗なななせの寝顔が飛び込んできて、胸の奥がきゅっとなった。

大好き。

好き過ぎて胸が痛いって、本当なんだ。

意識したら堪らなくなって、何だかいっぱいいっぱいで身悶えたら、

「…だめ」

寝ぼけ眼のななせに奥深くを揺らされて、否応なしに込み上がる快感につま先まで痺れた。

「…や、むり、…」

限界を超えて、幾度となく弾けて注がれ続けた身体にはもう全く力が入らない。なのに、一ミリの隙間なく張り付いている滑らかな肌と背中に回された力強い腕、絡まり合った足に煽られて、欲張りな気持ちが、ななせに為されるがまま、応えてしまう。

限界の限界の限界を超えて、快感に弾け飛ぶ。

「…ななせのばか」

それで本当にもうピクリとも動けなくなった私を抱えて、平然と起き上がったななせは、

「…離さないでって言ったじゃん」

楽しそうな笑みを見せながら水を飲ませてくれた。

「そういう意味じゃないっ」
「はいはい」

余裕な顔して悪びれずに私を見つめるななせは、悔しいけど何もかもが完璧に麗しい。ななせから注がれる水が冷たくて清らかで気持ち良くて、結局何がどうしてもななせがいいんだから、私はななせに一生勝てない。

「…もっとっ」
「はいはい」

一抹の悔しさをぶつけると、ななせは私の髪に手を差し入れて、甘い声を紡ぐ唇で塞ぎながら、巧みな舌で、隅々まで器用に行き渡らせてくれた。

…上手い、な。

美味しいし優しいし嬉しいんだけど。
今更ながら慣れてて余裕で楽しそうなななせに胸の奥がチクリとした。

経験値が違い過ぎる。

こっちは息も絶え絶えだって言うのに。何でこんな余裕でこんな生き生きしてるんだ。

今更過去のななせに貞操観念を求めても仕方ないけど、今までどんなに大勢の女の子がこんな風にななせと過ごしたのかと思うと、やっぱり痛い。こんな甘いななせを何人の女の子が見たんだろう。

「…たらし」

思わずつぶやくと、大きな手と長い指で頭を優しく優しく撫でられた。

「俺、お前としか寝たことないけどな?」

私の不機嫌を正確に読み取ったらしいななせがうそぶく。

いや。
いくら何でも嘘が過ぎる。この期に及んでホラがひどい。

「お前じゃなきゃ寝れない」

魅惑のボイスが耳元に落ちて、甘い唇が頬をくすぐる。

いや。いやいや。つぼみ。
嬉しいとか、ダメだし。簡単にほだされちゃダメなんだし、…

ちゅ。

ななせの麗しい唇が優しく優しく口づける。

いや―――、つぼみ―――っ
嬉しくなっちゃダメ―――――っ

「…ななせのばか」

天然たらし。完璧男子。顔面偏差値の鬼。国宝級イケメン。

「…大好き」

無理。完敗。
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