【完結】さんかく両想い―初めての両想い。始まりは、終わりの始まり。なんかじゃないよね？

3章．歪曲インフォメーション

03．

ななせからは、空の写真が送られてきた。

写真だけ、気まぐれに。でも、毎日。
今、ななせの目に映っている空。
曇っていたり、ビルの隙間で灰色だったり、霧雨に霞んでいたりする。
なかなか快晴には会えないらしい。

多分ななせは、なじみのない空の下で、将来の夢をかけてもがいているんじゃないかと思う。

Galaxiesは日本では凄まじい勢いでブレークしたけど、今後のことは誰にも分からない。海外で長きにわたって人気実力を保ち、音楽業界を牽引し続けているL2とのセッションは、Galaxiesにとってものすごく恵まれた貴重な機会だということは私でもわかる。だから急な予定で慌ただしく日本を発ったんだと思う。

ななせには、才能も実力もあると思うけど、どんなに才能がある人でも苦しむことがない訳じゃない。

ななせが日本の芸能ニュースを見ているかどうかは分からない。
ニュースがホントだったら立ち直れないし、過激なコメントは怖いし、不安は尽きないけれど。

でも。

『いい子にしてろよ』

ナナセから届く空の写真を見ていると、繋がっているって思える。

私も自分の目に映る空の景色をななせに送ってみた。
いつものマンションから見える空。自室から見える月夜。
病院から見える木漏れ日の上の空。澄んだ空気に洗われる空。

大丈夫。

いい子で待ってる。私だってななせの夢を応援したい。

「幼なじみのお兄ちゃんと御堂院長が親友ってことかぁ」

スタッフルームでオニヤンマとの関係をぼかしながら答えると、スタッフの皆さんは分かったような分からないような反応を示した。

「イケメンがイケメンを連れてくるってやつかぁ」
「うまい話があったもんだねえ」

半分嘘なんだけど、オニヤンマと創くんの息の合い方を見ると、あながち間違ってもいないような気もする。

「つーちゃんってさぁ。あのGalaxiesのナナセのお姉さんなんでしょ？」
「いいよねぇ、イケメンを独り占め」
「集まるところには集まるっていうか」
「だからこっちには回ってこないっていうか」
「「ずるいっていうか～～～～～っっ‼」」

結局。
スタッフの皆さんに詰め寄られて苦笑いする羽目になった。

まあでも、それも分かる気がする。
ななせは昔から人気者で、姉弟ってことに羨ましがられたりやっかまれたりしたけれど、侑さんも、…

患者さんからもスタッフの皆さんからもものすごく慕われている。

一見荒っぽい感じがするけど、面倒見がいいし、優しいし、外科医としての腕もスペシャリストらしい。

素直に。出会えてよかった。

そんな風にしみじみと自分の幸運に感謝していたら、

「雨宮さん、至急会議室に。確認したいことがある」

青ざめた表情の栄養管理チームの繁田チーフを従えた、事務長に呼ばれた。