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2章.憂鬱インターンシップ
03.
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ななせがオリビアちゃんと行ってしまう。
抜群にキュートで、ななせを魅了する歌声を持つオリビアちゃん。
いや。
仕事なんだし、メンバーなんだし、ビックチャンスなんだろうし、そのうち帰って来るんだし、…
寂しいとか思うのは間違っている。
だいたい、朝帰りした分際で何言ってんだって話だし。
「ナナのお世話はちゃんとやっときますから、任せてください、お姉さんっ!」
オリビアちゃんがおどけたポーズでスマイルを振りまき、
「お前はあっち行ってろ」
「も~ぅ、照れんなって」
「朔弥。リヴィ、つないどいて」
「あたしは犬かーいっ」
などと、ななせとじゃれ合って、
「リヴィ、大人しく待ってろ。ななせとは、しばらくずっと一緒だろ」
「寝食を共にする、だっけ。ひとつ釜の飯を食べる、だっけ。契りを交わす、だっけ~~~」
サクくんに引きずられて行きながら、
「ナナ、忘れられない夜にしようね~~~」
冗談か本気か分からないハイテンションでななせに愛を叫んでいる。
「つぼみ。ちょっと、…」
そんなオリビアちゃんを華麗に無視して、ななせが私の手を取って自室に向かう。
「えー、ナナ、部屋行くの? リビィもナナの部屋見たいっ」
「いいから、リヴィ。ここにいた方が身のためだ」
リビングで言い合っているサクくんとオリビアちゃんに目礼すると、一瞬オリビアちゃんが表情を失くした。すぐに頬を膨らませて、「ナナのシスコン~~~」と喚いてみせたけど、その一瞬の石化した表情がオリビアちゃんの心のうちを全て物語っているような気がした。
『あんたはいいよね。姉ってだけで当たり前みたいにななせくんと一緒にいられて』
ななせと姉弟であることを、羨まれ、やっかまれたことは数えきれない。特にななせと血の繋がりがないと知った女の子たちからは、嫌悪と侮蔑の悪意に満ちた攻撃の対象にされた。
それでも、ななせは私に女の子としての興味がなかったし、他に彼女が腐るほどいたから、それほどの実害はなく、最終的にはただただ運がいい奴という認識に落ち着いた。
でも、今は。
ななせが私を女の子扱いしてくれる今は。
悪意どころか殺意を抱かれても仕方ないかもしれない。
結局。
姉という絶対的に有利な立場で、失恋して悲惨な状態でななせに迫って、断れなくしたわけだから。
抜群にキュートで、ななせを魅了する歌声を持つオリビアちゃん。
いや。
仕事なんだし、メンバーなんだし、ビックチャンスなんだろうし、そのうち帰って来るんだし、…
寂しいとか思うのは間違っている。
だいたい、朝帰りした分際で何言ってんだって話だし。
「ナナのお世話はちゃんとやっときますから、任せてください、お姉さんっ!」
オリビアちゃんがおどけたポーズでスマイルを振りまき、
「お前はあっち行ってろ」
「も~ぅ、照れんなって」
「朔弥。リヴィ、つないどいて」
「あたしは犬かーいっ」
などと、ななせとじゃれ合って、
「リヴィ、大人しく待ってろ。ななせとは、しばらくずっと一緒だろ」
「寝食を共にする、だっけ。ひとつ釜の飯を食べる、だっけ。契りを交わす、だっけ~~~」
サクくんに引きずられて行きながら、
「ナナ、忘れられない夜にしようね~~~」
冗談か本気か分からないハイテンションでななせに愛を叫んでいる。
「つぼみ。ちょっと、…」
そんなオリビアちゃんを華麗に無視して、ななせが私の手を取って自室に向かう。
「えー、ナナ、部屋行くの? リビィもナナの部屋見たいっ」
「いいから、リヴィ。ここにいた方が身のためだ」
リビングで言い合っているサクくんとオリビアちゃんに目礼すると、一瞬オリビアちゃんが表情を失くした。すぐに頬を膨らませて、「ナナのシスコン~~~」と喚いてみせたけど、その一瞬の石化した表情がオリビアちゃんの心のうちを全て物語っているような気がした。
『あんたはいいよね。姉ってだけで当たり前みたいにななせくんと一緒にいられて』
ななせと姉弟であることを、羨まれ、やっかまれたことは数えきれない。特にななせと血の繋がりがないと知った女の子たちからは、嫌悪と侮蔑の悪意に満ちた攻撃の対象にされた。
それでも、ななせは私に女の子としての興味がなかったし、他に彼女が腐るほどいたから、それほどの実害はなく、最終的にはただただ運がいい奴という認識に落ち着いた。
でも、今は。
ななせが私を女の子扱いしてくれる今は。
悪意どころか殺意を抱かれても仕方ないかもしれない。
結局。
姉という絶対的に有利な立場で、失恋して悲惨な状態でななせに迫って、断れなくしたわけだから。
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