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1章.迷走トライアングル

13.

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御堂みどう家の嫁として、舌は確かなようですね。家人かじんの健康を支えるのは食事から。この味が合わないようでは御堂家の嫁は務まりません」

訳が分からず唖然としている私を見て、お母さまがきりりと姿勢正しく語り出した。

オニヤンマ属する御堂家は、なにやら面倒くさそうな匂いがする。

「御堂家はさかのぼれば神々にお仕えしていた由緒正しきお家柄。代々その土地を治めて、今は多くのグループ会社を率いる一大コンツェルンです」

チラリとオニヤンマを横目に見ると、オニヤンマはどうにも面倒くさそうな顔をしていた。当人をもってしても面倒くさい一族らしい。

「侑は御堂の正式な後継者。特に最先端の医療技術を誇る医療部門を一手に引き受けているのですから、侑の相手たる女人は、侑の健康を気遣い、代々受け継がれた御堂味噌を守り、引き継げる方でなければならないのですっっ」

お母さまのあまりの力の入りように、

「なんとっ、秘伝の白味噌でしたか。さすがのお味。感服いたしましたっ」

ついつい同調してノッてしまったところ、隣でオニヤンマが笑いを噛み殺していた。

…てか、医療推しなのか、味噌推しなのか、御堂家は謎だ。

「時につぼみさん、お料理はなさる?」

「あ。はい、多少。管理栄養士の資格を取りたいと思ってます」

御堂家がいまいち良く分からないながら答えると、

「Oh, Excellent!!」

和装母さんが唐突な英語を話し出し、スタンディングオベーションを始めた。

もはや、和風なのか洋風なのか、御堂家の謎は深まるばかり。

「完璧だわ‼︎ 侑。お母さん、応援するっ。学生だからなんて野暮なこと言ってないで、今すぐ婚約なさい。出来ちゃった婚も望むところよ‼」

御堂母さんはなかなかに理解があるらしいけど、…

前のめりに詰め寄られて思わず後ずさると、オニヤンマが腕を伸ばして私をお母さまから遮ってくれた。
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