【完結】さんかく両想い―初めての両想い。始まりは、終わりの始まり。なんかじゃないよね？

1章．迷走トライアングル

04.

「あんたまさか、両想いは永遠だとでも思ってたの？」

傷心セレナにサクッと刺される。

午後の授業が始まり、カフェテリアから人波が去ってもセレナ卿の講釈は続き、一人だけになった聴講生の私を、ピンポイントで突いてくる。

「あんたの両想いに水を差す気はないけど、あんたたちの場合、別れたら地獄だよね。同じ家にいるんだもん、逃げ場ないよね」

セレナがふっと自虐気味に笑う。
水と言うか、剣に刺されてズタボロですが、この100万倍は傷ついているであろうセレナを責める気にはなれない。

「…セレナ。今日、飲みに行く？」
「…あんたんち、行っていい？　失恋パーティして」
「うん、家呑みしよ」

セレナ卿のハートを癒して差し上げようと、メニューは何にしようかな、と思っていたら、セレナが徐に上目遣いで聞いてきた。

「…ななせくん、いる？」
「帰ってくると思うけど、…」
「よっしゃ‼　超特急で家帰って着替えてくるわ‼」
「…なんでよ」
「失恋の傷はイケメンにしか癒せないでしょうがっ‼」

猛獣セレナの鼻息が荒い。意外と元気そうで何よりです。

私は、同い年の弟・雨宮ななせと、看護師として働く母との3人暮らし。ななせは、離婚した父が再婚した相手の連れ子で、10歳の時に両親を亡くして母の養子になり、以来それなりに仲良く、…いやまあ。最近はかなり親密に、暮らしている。

「あ、どうも」
「きゃあっ、生ナナセくん、映像よりイケてるっっ」

我が家の玄関でななせにばったり遭遇したセレナが、可愛らしく黄色い声を上げた。セレナは見たことのないニットワンピに身を包んでいる。当然、内股・萌え袖・上目遣い。

え、この人、誰すか。猛獣、どこすか？

「大学でつぼみと仲良くしてもらってる芦谷セレナ、21歳です。彼氏募集中です。ワンナイトラブもいける口ですっ」

…おーい。