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Ⅸ章.龍宮再建
01.龍神復活
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龍だ。
龍を見るのは初めてだ。その迫力と荘厳さ、神々しさに言葉も出ない。ルオはただただ立ち尽くして崇高な龍を見上げていた。
「龍剣をありがとう」
ルオの何倍もある厳めしく麗しい龍は、鋭い牙の生えた口元を緩め、ルオの顔をのぞき込んだ。微笑んだように見える。
うわ。すごい。大きい。カッコいい。
龍の姿に圧倒されて、何を言われているのかよく分からないまま、頷いて呟いた。
「かっこいー、……」
「え、……!?」
龍が戸惑ったように水晶のように澄んだ水色の瞳を瞬いた。
「変身したらルオもこの姿になるよ?」
「え、……っ!?」
龍剣の光を受け、水のように空のように青く輝く龍と見つめ合う。
オレのこと知ってる? こんなカッコいい龍の知り合いいたっけ?
ていうか口調がくだけてるんだけど、……
「えっ、もしかして、いやまさか、絶対違うと思うんだけど、もしかしてもしかすると、…―――ドラン!?」
「いや、なんでまさか? 俺に決まってんじゃん」
「ええええ――――っ!?」
「そんな驚く!? 俺のことなんだと思ってたの?」
考えてみれば、龍剣は龍神のものなのだから、目の前にいる龍は龍宮を統べる龍神だと分かりそうなものだが、その龍神=ドランということが結びついていなかった。知ってはいたけど。ドランが本当は龍神だって聞いてはいたけど。でもでもだけど。この麗しく厳めしくめちゃくちゃカッコいい龍が、…
えええ―――、のんきでお調子者でぐうたらしているあのドラン?
トカゲにしか見えない見た目で、時代系だったり泣き虫だったりパリピだったりした食いしん坊の、あのドラン?
「ドランって、本当に龍神だったんだ、……」
「おい」
ドランの突っ込みにルオはがっくりと頽れた。
見た目は最高に理想的な龍なのに、おちゃらけ口調がドランに他ならない。なんだろう、この絶妙に気が抜ける感じ。
「そんなギャップ萌えされると俺としても照れるんだけど、……」
荘厳な龍がその大きな体をくねらせる。
やめて。かっこよすぎる龍の姿でくねくねしないで。
「とりあえず、ここから出よう。乗って、ルオ」
ドランが鋭いかぎ爪のついた手でルオをつまみ上げると背中に放り投げた。チューリッピとアクアも一緒に龍の背中に放り出される。青い鱗がきらきら光って触り心地が程よく柔らかく、広大な海原に優しく抱かれているようだ。
「ルオ様」「ルオ様」
神聖な龍の背中に乗って感動していると、左右から大きな岩の塊が二つ近づいてきた。岩、…ではない。よく見ると一つは丸く、もう一つは長細い。そしてどちらにも目が付いている。
「ええー、もしかして、アーケロン!?」
「はい。【叡智】の番人、アーケロンのケロンです」
丸形の岩は、巨大な古代亀アーケロンで、翼のような前足を伸ばしてすいすい泳ぐようにして龍神ドランに並んでいる。
「じゃ、もしかしたら、ダイオウイカ!?」
「はい。【停止】の番人、ダイオウイカのダイです」
赤褐色の長細い岩は、身体の真ん中あたりに丸々とした目がある体長十メートルほどのダイオウイカだった。アーケロンのケロンとダイオウイカのダイは、両側から龍神ドランを守るように付いてきていた。
龍を見るのは初めてだ。その迫力と荘厳さ、神々しさに言葉も出ない。ルオはただただ立ち尽くして崇高な龍を見上げていた。
「龍剣をありがとう」
ルオの何倍もある厳めしく麗しい龍は、鋭い牙の生えた口元を緩め、ルオの顔をのぞき込んだ。微笑んだように見える。
うわ。すごい。大きい。カッコいい。
龍の姿に圧倒されて、何を言われているのかよく分からないまま、頷いて呟いた。
「かっこいー、……」
「え、……!?」
龍が戸惑ったように水晶のように澄んだ水色の瞳を瞬いた。
「変身したらルオもこの姿になるよ?」
「え、……っ!?」
龍剣の光を受け、水のように空のように青く輝く龍と見つめ合う。
オレのこと知ってる? こんなカッコいい龍の知り合いいたっけ?
ていうか口調がくだけてるんだけど、……
「えっ、もしかして、いやまさか、絶対違うと思うんだけど、もしかしてもしかすると、…―――ドラン!?」
「いや、なんでまさか? 俺に決まってんじゃん」
「ええええ――――っ!?」
「そんな驚く!? 俺のことなんだと思ってたの?」
考えてみれば、龍剣は龍神のものなのだから、目の前にいる龍は龍宮を統べる龍神だと分かりそうなものだが、その龍神=ドランということが結びついていなかった。知ってはいたけど。ドランが本当は龍神だって聞いてはいたけど。でもでもだけど。この麗しく厳めしくめちゃくちゃカッコいい龍が、…
えええ―――、のんきでお調子者でぐうたらしているあのドラン?
トカゲにしか見えない見た目で、時代系だったり泣き虫だったりパリピだったりした食いしん坊の、あのドラン?
「ドランって、本当に龍神だったんだ、……」
「おい」
ドランの突っ込みにルオはがっくりと頽れた。
見た目は最高に理想的な龍なのに、おちゃらけ口調がドランに他ならない。なんだろう、この絶妙に気が抜ける感じ。
「そんなギャップ萌えされると俺としても照れるんだけど、……」
荘厳な龍がその大きな体をくねらせる。
やめて。かっこよすぎる龍の姿でくねくねしないで。
「とりあえず、ここから出よう。乗って、ルオ」
ドランが鋭いかぎ爪のついた手でルオをつまみ上げると背中に放り投げた。チューリッピとアクアも一緒に龍の背中に放り出される。青い鱗がきらきら光って触り心地が程よく柔らかく、広大な海原に優しく抱かれているようだ。
「ルオ様」「ルオ様」
神聖な龍の背中に乗って感動していると、左右から大きな岩の塊が二つ近づいてきた。岩、…ではない。よく見ると一つは丸く、もう一つは長細い。そしてどちらにも目が付いている。
「ええー、もしかして、アーケロン!?」
「はい。【叡智】の番人、アーケロンのケロンです」
丸形の岩は、巨大な古代亀アーケロンで、翼のような前足を伸ばしてすいすい泳ぐようにして龍神ドランに並んでいる。
「じゃ、もしかしたら、ダイオウイカ!?」
「はい。【停止】の番人、ダイオウイカのダイです」
赤褐色の長細い岩は、身体の真ん中あたりに丸々とした目がある体長十メートルほどのダイオウイカだった。アーケロンのケロンとダイオウイカのダイは、両側から龍神ドランを守るように付いてきていた。
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