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Ⅴ章.橙色のスキル【複製】
10.自分の【複製】を作る
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玉座の間は、屋上庭園ともいえるはるか上空の開けた場所にあった。
「私はアトル。【複製】の番人。よく来た、龍神の申し子よ」
ケツァルコアトルスは大きな翼をバサバサとはためかせながら、長い首をすっと伸ばし、ルオに黒々とした目を向けた。鋭いくちばしの上にある瞳は穏やかそうな光が宿り、巨大な存在ながら、思いやり深さを感じさせる。
「アトルさん! オレ、ケツァルコアトルスがすごく好きなんです。世界最大の翼竜ってマジでカッコ良くて。本物のケツァルコアトルスをこの目で見れて、感激です」
ケツァルコアトルスを目の前にして、ルオのミーハー心が炸裂する。
「本物、か……」
アトルが何やら噛みしめるように繰り返すが、
「で、出来ればサイン、…あいや、握手とか、……」
推しに会えた喜びと緊張でいっぱいいっぱいのルオにはよく聞こえていない。
「ハハハ。ルオは面白いな。サインはないが、お前を乗せて飛ぶことは出来る」
「マジで! マジで!?」
アトルは背中をかがめて、喜びに舞い上がるルオを背に乗せてくれた。ルオに引っ付いているドランとチューリッピも一緒だ。
バッサ――――、…
アトルが翼を広げ、洗練された無駄のない動きで優雅に飛び上がる。
風を切って一気に上昇する。雲が遥か下に見える。
きれいな青空が一面に広がり、大空の全てを手に入れたような爽快感で胸が熱くなった。
「すごい、すごいよ、アトルさん。気持ちいい――――っ」
「最&高――――っ」
「チューリッピ――――っ」
ドランとチューリッピも歓声を挙げる。
鳥になって大空を飛んでみたいという誰もが一度は思い描く夢が、こんなにも壮大な形で叶うなんて。空の王者になったような心地よさと爽快感。もしかして、オレってこの瞬間のために生まれてきたのでは。と、飛行を満喫し感慨に浸ってていると、
「時にルオ。【複製】の力を得るためには、自分自身の【複製】を作らねばならぬ」
アトルが厳かに告げた。
「オレの、…【複製】?」
ルオは首を傾げた。
ピンと来ない。ドランのようにルオにもパリピで泣き虫で時代系な一面があるというのか。
「この世に生きるものは全て、コピーでありオリジナルである」
ん? それってつまりどういうこと? アトルの言うことは分かるようで分からない。
「かくいう私もコピーでありオリジナルだ。アクア王もまた、コピーなのだ」
ええ―――、…
アトルの背の上で、ドランとチューリッピと顔を見合わせる。
コピーであり、オリジナル? 要するにどういうことだろう。
ケツァルコアトルスもコピーで、アクア王もコピー?
ルオはルオしかいないし、、自分にそっくりな別人を作る方法など分からない。
分身の術みたいなやつを習得して、自分にそっくりな影武者がいっぱいできるとか。コピーってそういうんじゃないのかな。
「龍剣を抜き、己を見つめるがよい」
いつしかアトルは大空の飛行を終え、玉座の間に戻ってきていた。広大な雲がどこまでも広がるアトルの玉座で、ルオは龍剣を抜く。滑らかな刀身には龍の紋章が刻まれており、今までに手に入れた【結界】【回復】の黄色と緑の宝玉が煌めいている。ルオはその紋章をじっと見ながら【複製】について考えてみた。
自分の中には、どんな一面があるだろう。
龍剣を見つめているうちに、意識がふっと遠ざかったかと思うと、ルオは一面ガラスの鏡に囲まれた鏡像世界へと飛ばされていた。
「私はアトル。【複製】の番人。よく来た、龍神の申し子よ」
ケツァルコアトルスは大きな翼をバサバサとはためかせながら、長い首をすっと伸ばし、ルオに黒々とした目を向けた。鋭いくちばしの上にある瞳は穏やかそうな光が宿り、巨大な存在ながら、思いやり深さを感じさせる。
「アトルさん! オレ、ケツァルコアトルスがすごく好きなんです。世界最大の翼竜ってマジでカッコ良くて。本物のケツァルコアトルスをこの目で見れて、感激です」
ケツァルコアトルスを目の前にして、ルオのミーハー心が炸裂する。
「本物、か……」
アトルが何やら噛みしめるように繰り返すが、
「で、出来ればサイン、…あいや、握手とか、……」
推しに会えた喜びと緊張でいっぱいいっぱいのルオにはよく聞こえていない。
「ハハハ。ルオは面白いな。サインはないが、お前を乗せて飛ぶことは出来る」
「マジで! マジで!?」
アトルは背中をかがめて、喜びに舞い上がるルオを背に乗せてくれた。ルオに引っ付いているドランとチューリッピも一緒だ。
バッサ――――、…
アトルが翼を広げ、洗練された無駄のない動きで優雅に飛び上がる。
風を切って一気に上昇する。雲が遥か下に見える。
きれいな青空が一面に広がり、大空の全てを手に入れたような爽快感で胸が熱くなった。
「すごい、すごいよ、アトルさん。気持ちいい――――っ」
「最&高――――っ」
「チューリッピ――――っ」
ドランとチューリッピも歓声を挙げる。
鳥になって大空を飛んでみたいという誰もが一度は思い描く夢が、こんなにも壮大な形で叶うなんて。空の王者になったような心地よさと爽快感。もしかして、オレってこの瞬間のために生まれてきたのでは。と、飛行を満喫し感慨に浸ってていると、
「時にルオ。【複製】の力を得るためには、自分自身の【複製】を作らねばならぬ」
アトルが厳かに告げた。
「オレの、…【複製】?」
ルオは首を傾げた。
ピンと来ない。ドランのようにルオにもパリピで泣き虫で時代系な一面があるというのか。
「この世に生きるものは全て、コピーでありオリジナルである」
ん? それってつまりどういうこと? アトルの言うことは分かるようで分からない。
「かくいう私もコピーでありオリジナルだ。アクア王もまた、コピーなのだ」
ええ―――、…
アトルの背の上で、ドランとチューリッピと顔を見合わせる。
コピーであり、オリジナル? 要するにどういうことだろう。
ケツァルコアトルスもコピーで、アクア王もコピー?
ルオはルオしかいないし、、自分にそっくりな別人を作る方法など分からない。
分身の術みたいなやつを習得して、自分にそっくりな影武者がいっぱいできるとか。コピーってそういうんじゃないのかな。
「龍剣を抜き、己を見つめるがよい」
いつしかアトルは大空の飛行を終え、玉座の間に戻ってきていた。広大な雲がどこまでも広がるアトルの玉座で、ルオは龍剣を抜く。滑らかな刀身には龍の紋章が刻まれており、今までに手に入れた【結界】【回復】の黄色と緑の宝玉が煌めいている。ルオはその紋章をじっと見ながら【複製】について考えてみた。
自分の中には、どんな一面があるだろう。
龍剣を見つめているうちに、意識がふっと遠ざかったかと思うと、ルオは一面ガラスの鏡に囲まれた鏡像世界へと飛ばされていた。
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