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Ⅴ章.橙色のスキル【複製】
05.三人のドラン②泣き虫ドラン 前編
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「えーと、みんな無事?」
「チューリッピ!」
チューリッピがルオの胸元で元気に返事をする。
「拙者としたことがこのような失態。やはり死してお詫びを、……」
時代ドランはルオの前に土下座してまたも短刀を抜き、ぶつぶつ呟いていた。
なるほど。玉座の間に行きつくことに失敗すると、大広間に戻ってくる仕組みになっているようだ。
「ねえ、ルオ。今度はボクといこっ。ね?」
すかさず擦り寄ってきた泣き虫ドランが上目遣いにルオを見上げ、パシパシと瞳を瞬かせる。可愛くおねだりしているつもりらしい。
「うん、じゃあ行こうか」
ルオが手を差し出すと、
「わ~い、ルオ。こっちこっち!」
泣き虫ドランが大喜びで飛び乗ってきた。
失敗しても戻ってこられるなら大丈夫。まわるまわるぐるぐるまわる。急がば回れってシロナガスクジラのスーガも言ってたし。最後にパリピドランを試せばいいのだ。
泣き虫ドランと進んだ道は、一面のお花畑につながっていた。
「わあ、すごい。七色に輝く雲の花だ」
「チューリッピ! チューリッピ!」
幻想的な雲の花が見渡す限り一面に咲き誇っているさまは圧巻だった。花には宝玉と同じ七色の花びらがついている。うっとりするほど美しく輝いていて、思わず手を伸ばして触れたり匂いを嗅いだりしてしまう。
「花と言えば花占い。ルオはボクのこと、…ダイスキ・スキ・キライ、ダイスキ・スキ・キライ、…ダイスキっ! やっぱりねっ、ルオったらボクのことダイスキなんだね!」
雲の花を摘み取った泣き虫ドランが定番の花占いを始め、満足そうに笑う。
ま、…まあ、ドランのことは好きだけど。
無邪気な泣き虫ドランに照れるが、ルオとチューリッピも雲の花を摘んで花冠を作ったり、腕輪や首輪を作ったり、七色の花畑で色鬼をして遊んだり、あっという間に夢中になってしまった。美しい花々を愛で、妖精になったかのような気分で、泣き虫ドランとチューリッピと花を摘んだり飾ったりして遊んでいると、
「うわ、なに?」
突然、花々が一斉にぐったりとしおれ始めた。
「チュチュッチュ」
「うわぁーん、悲しいよぅ」
さっきまで美しく華麗に咲き誇っていた花たちが見るも無残にしおれていく様は心が痛む。何事かと見守るルオたちの前に、花の中からゆっくりと灰色のアクアたちが現れた。
「アクア!?」
なぜここに。しかも急に。
アクアたちには瞬間移動能力でもあるのだろうか。
「奥義【結】」
ルオは急いで結界を張った。
ゆっくりと花の中から出てきたアクアたちは、一瞬要らなくなったプラスチックやビニールごみのように見え、ルオは社会科見学で訪れた廃棄物処分場を思い出した。各地から集められた廃棄物は驚くほど多く、広大な土地に山積みになっており、焼却物、リユース・リサイクル品、埋め立て処分品などに仕分けられていた。不要物を埋め立てて島が出来るほど、多くのごみが発生しているという事実は衝撃だった。
「チューっ」
ルオがごみを連想しているうちに、幻想的なお花畑は灰色のアクアたちに埋め尽くされていた。しかもどうやら結界の効力がなく、ゆらりゆらりと揺れ動くアクアたちはルオたちを取り囲んで狙いを定めている。
「チューリッピ!」
チューリッピがルオの胸元で元気に返事をする。
「拙者としたことがこのような失態。やはり死してお詫びを、……」
時代ドランはルオの前に土下座してまたも短刀を抜き、ぶつぶつ呟いていた。
なるほど。玉座の間に行きつくことに失敗すると、大広間に戻ってくる仕組みになっているようだ。
「ねえ、ルオ。今度はボクといこっ。ね?」
すかさず擦り寄ってきた泣き虫ドランが上目遣いにルオを見上げ、パシパシと瞳を瞬かせる。可愛くおねだりしているつもりらしい。
「うん、じゃあ行こうか」
ルオが手を差し出すと、
「わ~い、ルオ。こっちこっち!」
泣き虫ドランが大喜びで飛び乗ってきた。
失敗しても戻ってこられるなら大丈夫。まわるまわるぐるぐるまわる。急がば回れってシロナガスクジラのスーガも言ってたし。最後にパリピドランを試せばいいのだ。
泣き虫ドランと進んだ道は、一面のお花畑につながっていた。
「わあ、すごい。七色に輝く雲の花だ」
「チューリッピ! チューリッピ!」
幻想的な雲の花が見渡す限り一面に咲き誇っているさまは圧巻だった。花には宝玉と同じ七色の花びらがついている。うっとりするほど美しく輝いていて、思わず手を伸ばして触れたり匂いを嗅いだりしてしまう。
「花と言えば花占い。ルオはボクのこと、…ダイスキ・スキ・キライ、ダイスキ・スキ・キライ、…ダイスキっ! やっぱりねっ、ルオったらボクのことダイスキなんだね!」
雲の花を摘み取った泣き虫ドランが定番の花占いを始め、満足そうに笑う。
ま、…まあ、ドランのことは好きだけど。
無邪気な泣き虫ドランに照れるが、ルオとチューリッピも雲の花を摘んで花冠を作ったり、腕輪や首輪を作ったり、七色の花畑で色鬼をして遊んだり、あっという間に夢中になってしまった。美しい花々を愛で、妖精になったかのような気分で、泣き虫ドランとチューリッピと花を摘んだり飾ったりして遊んでいると、
「うわ、なに?」
突然、花々が一斉にぐったりとしおれ始めた。
「チュチュッチュ」
「うわぁーん、悲しいよぅ」
さっきまで美しく華麗に咲き誇っていた花たちが見るも無残にしおれていく様は心が痛む。何事かと見守るルオたちの前に、花の中からゆっくりと灰色のアクアたちが現れた。
「アクア!?」
なぜここに。しかも急に。
アクアたちには瞬間移動能力でもあるのだろうか。
「奥義【結】」
ルオは急いで結界を張った。
ゆっくりと花の中から出てきたアクアたちは、一瞬要らなくなったプラスチックやビニールごみのように見え、ルオは社会科見学で訪れた廃棄物処分場を思い出した。各地から集められた廃棄物は驚くほど多く、広大な土地に山積みになっており、焼却物、リユース・リサイクル品、埋め立て処分品などに仕分けられていた。不要物を埋め立てて島が出来るほど、多くのごみが発生しているという事実は衝撃だった。
「チューっ」
ルオがごみを連想しているうちに、幻想的なお花畑は灰色のアクアたちに埋め尽くされていた。しかもどうやら結界の効力がなく、ゆらりゆらりと揺れ動くアクアたちはルオたちを取り囲んで狙いを定めている。
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