【完結】七色のスキルを手に入れて龍宮城を取り戻せ。龍宮伝説ルオ・謎の生命体アクア王との対決！！

Ⅶ章.青色のスキル【信念】

08.【信念】ともにいきる

幸せを叶えるために、……

考えてみればルオが言った幸せはルオがおじいと過ごしていた日常だ。龍神の力が奪われたことにより、その日常が脅かされたから、ルオはここに来た。龍神の力を取り戻して、再びおじいと平和に暮らすために。

じゃあ、ルオの龍剣を七色に完成させ、アクア王を倒してアクア化された動物たちを解放すれば、いいのだろうか。アクア王の力から解き放たれ、捕まった海洋研究所の人間たちも一緒に地上に帰れる。そう。ルオはそう思って力の獲得を頑張ってきた。アクア王がドランの龍剣の力を完全に自分のものにするより早く。早く力を手に入れなくちゃって。

だけど。それじゃあアクア王はどうなるの？

そもそもアクアは人間の身勝手な実験の犠牲になったクラゲ。利用され捨てられ、行き場をなくしたごみたちと一緒に凝り固まった怨念。恨みの結晶体。

龍剣を完成させてアクア王の心臓に突き刺し、ドランの龍剣を奪い返したら、アクア王は元の死骸とごみに戻ってしまうのだろうか。そしてまた、恨みと悲しみを抱えて果てしなく漂い続けるんだろうか。

ルオが思う幸せ。
『みんな元気で自由で、喜びや楽しさを感じながら生きていること』の『みんな』にアクアは入らないのだろうか。

うーん、でも。アクア王が目指しているという平和な統一世界は、考えることを止めて悲しみも苦しみも感じない世界で。それはルオには幸せだとは思えない。

さっきバクテリアたちは、「幸せはみんな違う」「自分で考える」「自分で見つける」って言ってた。
いろんな生物がいるように、いろんな幸せがある。ただ、自分の幸せは自分で見つける。誰かの上に乗っかるんじゃなくて。

答えは一つじゃないとシロナガスクジラのスーガが言っていたことを思い出した。
ルオにとって正しいことは、他の人からは間違っていることかもしれない。
多くの生物にとって有害な硫化水素はバクテリアにとってはエサになる。過酷な環境で生きるチューブワームはバクテリアを体内に宿すことにより栄養を得ている。ウィンウィンの共生生活、……

先ほど、バクテリアが土や水をきれいにしていると聞いて、ルオの頭に浮かびかけた何かが再び脳裏に閃いた。

「共生」ともに幸せに暮らす。

「幸せを叶えるために、オレは共生を考える。アクアたちも一緒に暮らせる龍の都を実現したい！」

ゆっくりゆっくり降りてきたルオは、

「大逆転のプラス十ワーム」「大負けにおまけ」「もってけドロボー」
「出血大サービス！」「どどーんと上まで打ちあがれ！」

バクテリアたちの喝采に包まれた。

「よーし、行くぞ。ルオ。アクア王が占拠している龍王城目指して」
「発射五秒前。四、三、二、……」

どうやらルオの答えはバクテリアたちに考えたと認められたようで、慌ただしく打ち上げ準備に入った。

ふうぅ。一生マグマの海から出られないかと思ったけど、これでなんとか、…
と、ルオが一息ついた瞬間。

「うわあああ、…――――っ」

外界からとてつもなく暗い衝撃が襲い掛かった。
もう疲れた。やめよう。休もう。考えるのも感じるのも疲れた。生きるのも苦しい。どうでもいい。なんでもいい。

な。何この虚しい気持ち、……

「本体ルオ、大変だ。アクア王が【信念】を奪いに、…――――」

青目ルオの声が聞こえたが、途中で途切れた。
しかし、途切れる前にルオに意識をつなげてくれたので、青目ルオの目を通して、何が起こったのか確認することが出来た。アクア王が大勢のアクアたちを連れて、マグマの海に侵入してきたのだ。

そして、【攻撃】の荒野で行ったのと同じ、【停止】を使ってマグマ一帯の活動を止めた。青目ルオも、番人のチューブワームも、その中にいるバクテリアたちも動きを止めている。

「アクア王、……っ」
「チェックメイト。お前をここに留めて、私は全ての力を手に入れる。龍宮がアクア帝国という平和な統一世界に変わるのを地の底で見つめているがよい」

無数の触手を持つ巨大なアクア王の姿が映る。何度見ても得体が知れず不気味でおぞましい。

けれど。アクアたちの姿を目にするにつれ、最初は恐怖と気味悪さしか感じなかったが、今では別の気持ちが生じていることに気づいた。それは、悲しさである。アクアの起源を知ったからか、その苦悩を垣間見たからか。彼らには悲しさと虚しさが渦巻いている。