27 / 78
Ⅳ章.緑色のスキル【回復】
01.水路からの逃走
しおりを挟む
「捨て置くなんて絶対にしない」
ルオは力を使い果たし動かなくなったアンモを抱きしめた。傷つき、ひしゃげ、痛々しく縮んだアンモナイトからはまだ命の鼓動を感じる。
「チューリッピ、地下水路に案内してくれる? アンモさんを連れて【回復】の番人を探そう」
「チューチューチューリッピ!」
こちらも満身創痍で黒ずんだハツカネズミが任せとけ!と胸を叩く。
ルオは瀕死の重傷を負ったアンモを背負い、チューリッピの案内に続いた。
辺りにまだアクアたちが残っているかもしれない。ルオは周囲を警戒し、慎重に結界を張りながら歩く。がれきの撤去作業で傷ついた身体が痛むし、縮んでしまったとはいえ意識のないアンモナイトはずっしりと重い。すぐに息が切れ、足がふらつき、めまいがしてきた。
「チュ、……」
歩みの遅いルオを心配して、チューリッピが行ったり来たりする。疲労が限界を超え、結界を保つためのエネルギーが途切れているのが自分でも分かる。やばい。こんなところをアクアに見つかったらひとたまりもない。頽れそうになる足を叱咤激励し、何とかからくり水路の入り口スイッチまでたどり着いた。
カチリ。
スイッチを入れ、石畳が動き始めた瞬間、
「チュー――――っ」
チューリッピが甲高い声を上げて上方を指さした。
見ると、スイ―――、スイ―――という癇に障る音と共にアクアたちがすぐそこまで迫ってきた。
やっべ、結界が、……っ
ルオはアンモを敷石の上にそっと降ろし、素早く背中の龍剣を抜いた。
「奥義【結】」
自分でも驚くほどの集中力で龍剣から黄金の光がほとばしり、透明な壁がアクアとルオたちの間に現れた。アクアが触手から放った光線が、結界に跳ね返されたのが見える。
「間一髪、……」
「チューリッピ、……」
ルオとチューリッピは顔を見合わせて微笑むと、拳を合わせた。
ルオ、チューリッピ、アンモを載せた敷石は、巧みな動きで向きを変え他の石と組み合わさりながら、水路のある下へ下へと下降していく。やがて、心が洗われるようなせせらぎが聞こえてきた。
「変化【大】」
ルオが移動に水路を選んだのは、水は龍神の源、すなわち、水中変化術が使えると思ったからだ。
ルオは小さな流れに身を浸し、チューリッピを胸にアンモを背中に抱えると、変化術でほぼ二倍の大きさになった。
ルオは力を使い果たし動かなくなったアンモを抱きしめた。傷つき、ひしゃげ、痛々しく縮んだアンモナイトからはまだ命の鼓動を感じる。
「チューリッピ、地下水路に案内してくれる? アンモさんを連れて【回復】の番人を探そう」
「チューチューチューリッピ!」
こちらも満身創痍で黒ずんだハツカネズミが任せとけ!と胸を叩く。
ルオは瀕死の重傷を負ったアンモを背負い、チューリッピの案内に続いた。
辺りにまだアクアたちが残っているかもしれない。ルオは周囲を警戒し、慎重に結界を張りながら歩く。がれきの撤去作業で傷ついた身体が痛むし、縮んでしまったとはいえ意識のないアンモナイトはずっしりと重い。すぐに息が切れ、足がふらつき、めまいがしてきた。
「チュ、……」
歩みの遅いルオを心配して、チューリッピが行ったり来たりする。疲労が限界を超え、結界を保つためのエネルギーが途切れているのが自分でも分かる。やばい。こんなところをアクアに見つかったらひとたまりもない。頽れそうになる足を叱咤激励し、何とかからくり水路の入り口スイッチまでたどり着いた。
カチリ。
スイッチを入れ、石畳が動き始めた瞬間、
「チュー――――っ」
チューリッピが甲高い声を上げて上方を指さした。
見ると、スイ―――、スイ―――という癇に障る音と共にアクアたちがすぐそこまで迫ってきた。
やっべ、結界が、……っ
ルオはアンモを敷石の上にそっと降ろし、素早く背中の龍剣を抜いた。
「奥義【結】」
自分でも驚くほどの集中力で龍剣から黄金の光がほとばしり、透明な壁がアクアとルオたちの間に現れた。アクアが触手から放った光線が、結界に跳ね返されたのが見える。
「間一髪、……」
「チューリッピ、……」
ルオとチューリッピは顔を見合わせて微笑むと、拳を合わせた。
ルオ、チューリッピ、アンモを載せた敷石は、巧みな動きで向きを変え他の石と組み合わさりながら、水路のある下へ下へと下降していく。やがて、心が洗われるようなせせらぎが聞こえてきた。
「変化【大】」
ルオが移動に水路を選んだのは、水は龍神の源、すなわち、水中変化術が使えると思ったからだ。
ルオは小さな流れに身を浸し、チューリッピを胸にアンモを背中に抱えると、変化術でほぼ二倍の大きさになった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
GREATEST BOONS+
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだし、規格外のインベントリ&ものづくりスキルを使いこなす! ユニークスキルのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅する、ほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能、「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です!
放課後モンスタークラブ
まめつぶいちご
児童書・童話
タイトル変更しました!20230704
------
カクヨムの児童向け異世界転移ファンタジー応募企画用に書いた話です。
・12000文字以内
・長編に出来そうな種を持った短編
・わくわくする展開
というコンセプトでした。
こちらにも置いておきます。
評判が良ければ長編として続き書きたいです。
長編時のプロットはカクヨムのあらすじに書いてあります
---------
あらすじ
---------
「えええ?! 私! 兎の獣人になってるぅー!?」
ある日、柚乃は旧図書室へ消えていく先生の後を追って……気が付いたら異世界へ転移していた。
見たこともない光景に圧倒される柚乃。
しかし、よく見ると自分が兎の獣人になっていることに気付く。
がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ
三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』
――それは、ちょっと変わった不思議なお店。
おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。
ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。
お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。
そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。
彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎
いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。
「羊のシープお医者さんの寝ない子どこかな?」
時空 まほろ
児童書・童話
羊のシープお医者さんは、寝ない子専門のお医者さん。
今日も、寝ない子を探して夜の世界をあっちへこっちへと大忙し。
さあ、今日の寝ない子のんちゃんは、シープお医者んの治療でもなかなか寝れません。
そんなシープお医者さん、のんちゃんを緊急助手として、夜の世界を一緒にあっちへこっちへと行きます。
のんちゃんは寝れるのかな?
シープお医者さんの魔法の呪文とは?
月神山の不気味な洋館
ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?!
満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。
話は昼間にさかのぼる。
両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。
その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐︎登録して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる