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Ⅱ章.龍宮
03.水中変化の術
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「なにぃ~? あいつら、魔女だったのか。俺としたことが、騙されるところだった」
膨らんだお腹をタプタプさせながらドランがようやく仮想現実から戻ってきた。
まあ、魔女じゃないけど。ていうか、ドランがちょろいだけだと思うけど。
自分のお腹もいい感じにたるんでいるルオは、反省も込めて言うのをやめておいた。
「まあ、二三日のお付き合いとは最初に断っておいたからな。そろそろお暇させてもらおう」
「でも、この部屋外には出られないよ?」
ルオとドランは潜水艇を収容する豪華客船にあるホテルのスイートルームのような部屋にいた。キラキラに飾り付けられていて、ふかふかのベッドがあり、散らかしっぱなしでもいつの間にか片付けられている。夢のような部屋だが、内側からはドアが開かない。食事や掃除に職員たちが入ってくるが、きっちり鍵をかけて出ていくのだ。トイレもお風呂も部屋の中にあるから不自由を感じることはなかったのだが、……
「まあ任せろ。俺はこう見えても優秀な龍神だ。こんな部屋から出るくらい、ちょろいちょろい」
いや、ちょろいのはお前、……
たっぷりしたお腹を抱え、ふんぞり返って後ろに転がりそうになりながら、お風呂場に向かうドランにルオも続いた。
「どうするつもり?」
「まあ見てろって」
ドランは湯船になみなみとお湯を溜めると、ばっしゃーんと勢いよく頭から飛び込んだ。
「ちょっと、ドラン。お風呂に入ってる場合じゃな、……え?」
こんな時にお風呂かいっと突っ込みを入れようとしたルオは、目の前の光景に言葉を失った。
湯船に飛び込んだドランが見る見るうちに小さくなり、オタマジャクシのようになってしまったのだ。
「ちっちゃ!」
「水は龍神の源だ。お前にもできるはず。小さくなって水道管から這い出そうぜ」
湯船の中を青いオタマジャクシが気持ちよさそうに泳いでいる。
えー、そんな無茶な。
「早く早く。魔女が来るぞ」
急にそんな無茶振りされても。
しかし水道管を通って外に出ると言うのは良いアイデアかもしれない。水はこの船の各部屋を回り、最終的には海に繋がっている。
ルオは戸惑いながらもそろりそろりと足から湯船に入る。
あ。なかなかいいお湯加減。……じゃなくて!
「小さくなんてならないよ?」
のんきに泳ぐ太めのオタマジャクシを捕まえると、
「剣を抜け、ルオ。そして念じるんだ。お前の剣はまだ使い手を獲得したばかり。これから一心同体となって少しずつ力をつけていく。まずは水中変化の術を習得しろ」
なんか忍者修行みたいなことを言い出した。
そんなこと言われても、と曖昧な指示を恨めしく思うが、目の前でドランは楽々とやってのけた。双子なら、ルオにもできるはず。ルオは背中の龍剣を抜いた。軽やかでぴったりと手に馴染む。両手で柄を握ると前に構えて目を閉じた。
小さく、小さく……
心の中で念じる。
「集中しろ。邪念を捨てて。巨大かき氷のことは忘れるんだっ」
考えてねーよ。
ドランのよく分からない激励に、逆に心が乱れそうになるが、ルオは何とか自分を保った。
小さく、小さく……
しかし、それから優に三時間はたっても、ルオは元の大きさのまま、すっかりのぼせてしまったのだった。
膨らんだお腹をタプタプさせながらドランがようやく仮想現実から戻ってきた。
まあ、魔女じゃないけど。ていうか、ドランがちょろいだけだと思うけど。
自分のお腹もいい感じにたるんでいるルオは、反省も込めて言うのをやめておいた。
「まあ、二三日のお付き合いとは最初に断っておいたからな。そろそろお暇させてもらおう」
「でも、この部屋外には出られないよ?」
ルオとドランは潜水艇を収容する豪華客船にあるホテルのスイートルームのような部屋にいた。キラキラに飾り付けられていて、ふかふかのベッドがあり、散らかしっぱなしでもいつの間にか片付けられている。夢のような部屋だが、内側からはドアが開かない。食事や掃除に職員たちが入ってくるが、きっちり鍵をかけて出ていくのだ。トイレもお風呂も部屋の中にあるから不自由を感じることはなかったのだが、……
「まあ任せろ。俺はこう見えても優秀な龍神だ。こんな部屋から出るくらい、ちょろいちょろい」
いや、ちょろいのはお前、……
たっぷりしたお腹を抱え、ふんぞり返って後ろに転がりそうになりながら、お風呂場に向かうドランにルオも続いた。
「どうするつもり?」
「まあ見てろって」
ドランは湯船になみなみとお湯を溜めると、ばっしゃーんと勢いよく頭から飛び込んだ。
「ちょっと、ドラン。お風呂に入ってる場合じゃな、……え?」
こんな時にお風呂かいっと突っ込みを入れようとしたルオは、目の前の光景に言葉を失った。
湯船に飛び込んだドランが見る見るうちに小さくなり、オタマジャクシのようになってしまったのだ。
「ちっちゃ!」
「水は龍神の源だ。お前にもできるはず。小さくなって水道管から這い出そうぜ」
湯船の中を青いオタマジャクシが気持ちよさそうに泳いでいる。
えー、そんな無茶な。
「早く早く。魔女が来るぞ」
急にそんな無茶振りされても。
しかし水道管を通って外に出ると言うのは良いアイデアかもしれない。水はこの船の各部屋を回り、最終的には海に繋がっている。
ルオは戸惑いながらもそろりそろりと足から湯船に入る。
あ。なかなかいいお湯加減。……じゃなくて!
「小さくなんてならないよ?」
のんきに泳ぐ太めのオタマジャクシを捕まえると、
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なんか忍者修行みたいなことを言い出した。
そんなこと言われても、と曖昧な指示を恨めしく思うが、目の前でドランは楽々とやってのけた。双子なら、ルオにもできるはず。ルオは背中の龍剣を抜いた。軽やかでぴったりと手に馴染む。両手で柄を握ると前に構えて目を閉じた。
小さく、小さく……
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「集中しろ。邪念を捨てて。巨大かき氷のことは忘れるんだっ」
考えてねーよ。
ドランのよく分からない激励に、逆に心が乱れそうになるが、ルオは何とか自分を保った。
小さく、小さく……
しかし、それから優に三時間はたっても、ルオは元の大きさのまま、すっかりのぼせてしまったのだった。
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