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突然、建物中が震えるようなけたたましい警報音が鳴り響いた。
「な、…なんだ!?」
素早く南条さんと住川研究員が立ち上がり、窓の外を確認する。スマートフォンを取り出して、どこかに状況確認の電話をかけてもいる。けど、…
「侵入者、侵入者だっ!!」
「捕まえろ、早くっ」
すぐに外が騒がしくなって、たくさんの車のエンジン音やクラクションの音が鳴り響き、ドアの向こうで大勢の人がバタバタと飛び出していく音がした。
「誰か不審者が侵入したらしい。NO. 07か?」
「こんな白昼堂々、騒ぎを起こしますか? 具合の悪くなったゆりのちゃんを迎えに来るよう言っただけなのに」
「じゃあ、誰だ? まさか警察?」
「え、まさか…!?」
南条さんと住川研究員が顔を見合わせてあたふたしている。
「と、…とにかく状況確認を、…」
顔色を失った南条さんが部屋のドアを開けると、バイクのエンジン音が聞こえてきた。
え、バイク、…?
と思う間もなく。
大勢の人と騒ぎを引き連れて、黒くて美しくスタイリッシュな、とても見覚えのある一台のバイクが、凄まじいスピードでサーカスの曲芸のように階段の手すりを乗り上がってくるのが見えた。
「う、…っ!?」
佑京くん――――――っ!?
衝撃の光景に言葉が出ない。
室内にバイクで侵入!? 階段駆け上がってる!?
元白バイ隊員、なんて派手な登場を――――――っ!?
あっけにとられているのはもちろん私だけでなく、あっという間に距離を詰めて私のいる部屋の前に停まったバイクを、南条さんと住川研究員もぽかんと見守っていた。
「待て、お前、…っ」
「不法侵入罪で逮捕、…っ」
わらわらと、階段の下から廊下の隅から、研究所の人たちが息を切らせて追いかけてくる。
「…じゃあ」
しかしながら佑京くんはそんな騒ぎをものともせず、バイクに乗ったままひょいっと私を抱えて後ろに座らせると、
「迎えに来たから。帰ります」
無駄にさわやかな笑顔を見せてバイクを急旋回させた。
「ゆりの、目瞑って。絶対俺を離すなよ」
なに―――――っ!?
息を整える隙などあるはずもなく。
映画のアクションシーンさながら、バイクは窓を突き破り、ベランダを飛び越え、停車している車を渡って、地上に降り立った。
こわいいいい――――――っ
と、叫ぶ暇もない。
ただもう必死で目の前の背中にしがみつく。風や熱や飛来物や人の叫び声、爆発音が現実離れしたような錯覚さえ覚える。熱いのか冷たいのか飛んでいるのか走っているのかも、もうよく分からない。
「待て、NO. 07っ!!」
「このままじゃ、お前は死んでしまうんだぞっ!?」
騒ぎの中で、南条さんか住川さんか、ほかにも誰か、たくさん叫んでいるような声が聞こえたけれど、気にする余裕は一ミリもなかった。
止めに入る車をかわして飛び越え、研究施設の広大な駐車場を抜けると、門の前にはサイレンを鳴らしながら何台かのパトカーが到着していた。
「あ、君、…っ」
騒ぎを起こして出てきた元凶のバイクは当然見とがめられたけれど、
「田上っ、後はよろしくっ!!」
佑京くんは一切スピードを緩めず、華麗にパトカーの間をすり抜けて、
「ちょ、…待ちなさいっ」
警察官たちの制止を振り切って自在に走り去った。
緑豊かな山間の街を。風を切って飛ぶ、自由な鳥のように。
常識もしがらみも運命すら、全て投げうって。
「な―――!? 飛んでるみたいだな―――――っ!?」
子どもみたいに無邪気に揺れる佑京くんの声に、なんだか涙が出た。
「な、…なんだ!?」
素早く南条さんと住川研究員が立ち上がり、窓の外を確認する。スマートフォンを取り出して、どこかに状況確認の電話をかけてもいる。けど、…
「侵入者、侵入者だっ!!」
「捕まえろ、早くっ」
すぐに外が騒がしくなって、たくさんの車のエンジン音やクラクションの音が鳴り響き、ドアの向こうで大勢の人がバタバタと飛び出していく音がした。
「誰か不審者が侵入したらしい。NO. 07か?」
「こんな白昼堂々、騒ぎを起こしますか? 具合の悪くなったゆりのちゃんを迎えに来るよう言っただけなのに」
「じゃあ、誰だ? まさか警察?」
「え、まさか…!?」
南条さんと住川研究員が顔を見合わせてあたふたしている。
「と、…とにかく状況確認を、…」
顔色を失った南条さんが部屋のドアを開けると、バイクのエンジン音が聞こえてきた。
え、バイク、…?
と思う間もなく。
大勢の人と騒ぎを引き連れて、黒くて美しくスタイリッシュな、とても見覚えのある一台のバイクが、凄まじいスピードでサーカスの曲芸のように階段の手すりを乗り上がってくるのが見えた。
「う、…っ!?」
佑京くん――――――っ!?
衝撃の光景に言葉が出ない。
室内にバイクで侵入!? 階段駆け上がってる!?
元白バイ隊員、なんて派手な登場を――――――っ!?
あっけにとられているのはもちろん私だけでなく、あっという間に距離を詰めて私のいる部屋の前に停まったバイクを、南条さんと住川研究員もぽかんと見守っていた。
「待て、お前、…っ」
「不法侵入罪で逮捕、…っ」
わらわらと、階段の下から廊下の隅から、研究所の人たちが息を切らせて追いかけてくる。
「…じゃあ」
しかしながら佑京くんはそんな騒ぎをものともせず、バイクに乗ったままひょいっと私を抱えて後ろに座らせると、
「迎えに来たから。帰ります」
無駄にさわやかな笑顔を見せてバイクを急旋回させた。
「ゆりの、目瞑って。絶対俺を離すなよ」
なに―――――っ!?
息を整える隙などあるはずもなく。
映画のアクションシーンさながら、バイクは窓を突き破り、ベランダを飛び越え、停車している車を渡って、地上に降り立った。
こわいいいい――――――っ
と、叫ぶ暇もない。
ただもう必死で目の前の背中にしがみつく。風や熱や飛来物や人の叫び声、爆発音が現実離れしたような錯覚さえ覚える。熱いのか冷たいのか飛んでいるのか走っているのかも、もうよく分からない。
「待て、NO. 07っ!!」
「このままじゃ、お前は死んでしまうんだぞっ!?」
騒ぎの中で、南条さんか住川さんか、ほかにも誰か、たくさん叫んでいるような声が聞こえたけれど、気にする余裕は一ミリもなかった。
止めに入る車をかわして飛び越え、研究施設の広大な駐車場を抜けると、門の前にはサイレンを鳴らしながら何台かのパトカーが到着していた。
「あ、君、…っ」
騒ぎを起こして出てきた元凶のバイクは当然見とがめられたけれど、
「田上っ、後はよろしくっ!!」
佑京くんは一切スピードを緩めず、華麗にパトカーの間をすり抜けて、
「ちょ、…待ちなさいっ」
警察官たちの制止を振り切って自在に走り去った。
緑豊かな山間の街を。風を切って飛ぶ、自由な鳥のように。
常識もしがらみも運命すら、全て投げうって。
「な―――!? 飛んでるみたいだな―――――っ!?」
子どもみたいに無邪気に揺れる佑京くんの声に、なんだか涙が出た。
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