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feel.11

01.

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「深森ゆのさんですね。我々、こういうものです」

屈強そうな男性2人がにこりともせず、私と澪さんたちの間に割り込み、胸ポケットから取り出して私の目の前にかざしたのは。

黒革に輝かしい金の紋章。
顔写真。役職。フルネーム。
多分。これ。いわゆる。

…警察手帳。

「…―――⁉」

そんなのいきなり目の前に出されたら、普通の人間は動揺する。結構な勢いで、ビビる。

澪さんたちも驚いて言葉を失っている。

「少しお話を伺いたいので、席を外していただけますか」

警察官が静かな迫力を持って、有無を言わせず澪さんたちを退室させた。
緊張感が半端ない。嫌な予感しかしない。

「ママ~? おまわりさん~?」

斗哉くんの無邪気な声が遠ざかる。

狭い病室で警察官2人に囲まれて、圧倒的な心細さに身がすくむ。

ついさっきまで私の安全を守ってくれていると思っていた警察官が、
本当は私を捕まえるために動いていたんだと知らされた。ような、
そこはかとなく頼りなく、絶妙に居心地が悪い。

「率直に伺います。これは、あなたのものですか」

警察官の1人がビニール袋に入った小さなものを取り出した。
固い金属の。煌めくプラチナの。大切な約束の。

「…―――」

って。だから声が出ないんだって!

仕方がないので首を横に振った。

それ。榊さんの結婚指輪だ、…


「これは火災に遭ったアパートの、あなたの部屋の焼け跡から出てきました。なぜ、あなたが持っていたのですか」

警察官が、私に手帳とペンを手渡した。
書け、ってことでしょうな。

ポケットサイズの小さな手帳に、フェルトペンで大きく書く羽目になり、少しばかり気が引ける。

「…(預かりました)」

書いて見せると、畳み掛けるように続けられた。

「この指輪を開けたことは?」

…開けた?

質問の意味が分からなくて、首を傾げる。

「…柳さん」

警察官同士が目配せして、

「では、これに見覚えは?」

また、小さなビニール袋に入ったものを取り出した。

極微細粒子の結晶。
無色透明、無味無臭な粒子の結合体。
研究室で色を付けた。青い結晶。

「…ッ!」

厳重に持ち出しを禁止しているにもかかわらず、紛失した。
おかげで連日散々な目に遭っている。

開発中の新薬、抗不安薬の一種で感情増強作用のある、仮称 alicenote、通称 ANアン

なんで、ANがここに…?

「もちろん、ありますね。あなたの研究室で開発された、…アンと呼ばれているものです」

私の表情から、返答を読み取ったらしい警察官は頷くと、

「これが、先ほどの指輪の中から出てきました」

重々しく言葉を吐いて、私の表情の変化を見逃すまいとするかのように、鋭い視線を向けてきた。
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