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feel.10
05.
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心臓が嫌な音を立てて軋んだ。
私は今まで。
匂いが視えない人に、2人しか会ったことがない。
「澪っ」
不吉な予感がして、得体のしれない悪寒に身震いすると、
病室が急に開けられて慌ただしく誰かが飛び込んできた。
「大丈夫か⁉ 黎、まだ面会謝絶だって」
黎くんと同じくらいの年の頃。
小麦色の肌に白い歯が目立つ、筋肉質な作業着姿の男性。
「…瑛多」
「えーたっ」
斗哉くんが男性を見ると、嬉しそうに駆けて行って抱き上げてもらっていた。
「えーた、しーっ、だよ?」
「あ、…そうか、ごめんな」
瑛多と呼ばれた青年は、頬を緩ませて斗哉くんと親し気に話しながら、
「うるさくしてすみません。お加減はいかがですか」
ゆっくりとベッドの方に近づいてきた。
「俺、高梨瑛多って言って、黎と澪の幼なじみで、えーっと、…」
実直。素直。安らぎ。草原。蒲公英。
草野球。笑顔。太陽。干したばかりの布団の匂い。
「澪の婿候補ですっ」
人好きのする笑顔で八重歯を見せて私に頭を下げた瑛多くん。
彼を嫌いになれる人は恐らくこの世に存在しないだろう。
「…バカ」
一瞬の沈黙の後、澪さんが瑛多くんの頭をぺしっと叩いて、
「ばか」
斗哉くんがその真似をした。
心なしか、澪さんの頬が赤らんでいるように見える。
けど。
正直それどころじゃない。
婿? 婿⁇
幼なじみで婿候補?
なんか今。
この太陽スマイル、すっごい爆弾投げなかった⁇
「…―――ッ⁇」
婿候補ってどういうことですか――っ⁉
そこんとこ詳しく聞きたいのに、声が出ない。
「バカは澪だろ。俺は本気だって。ずっと澪に本気だって言ってるのに」
「…バカ瑛多。そんなの、今言うことじゃないでしょ」
「だって、黎のラブブレスなら、俺も末永くお付き合いするだろ。自己紹介は大切じゃん」
「初対面でいきなり、先生だって訳が分からないでしょう?」
まあ。訳が分かりません。けれど。
詳しく教えてほしいのに、澪さんと瑛多くんが若干イチャイチャしながら言い合いを始めて、なんだか急に蚊帳の外。
「この前だって俺を誘えばいいのに、黎と動物園行ったりしてよ?」
「だって、…なんかずるいもん」
「ずるくない。俺がいいって言ってるんだから」
「だって、…瑛多は、大事だし」
澪さんが赤くなりながら困ったようにもごもご言っている様子が、同性から見ても可愛すぎてツラい。
え。なに、この2人。
これってどう見ても、…
「らぶらぶ?」
2人の世界に入り込めない者同士、相通ずるものがあったのか、
澪さんと瑛多くんの間に挟まれた斗哉くんがお手上げみたいな感じで教えてくれた。
ええっ⁉
ラブラブってどういうことじゃ――っ⁉
自身のキャラが崩壊して、なんなら、瑛多くんに掴みかかりかけた時、
「失礼。ちょっとよろしいですか」
いつの間に入ってきたのか、くたびれたスーツを着た強面の男性が2人、
静かに近づいてきて、一気に空気を張りつめらせた。
私は今まで。
匂いが視えない人に、2人しか会ったことがない。
「澪っ」
不吉な予感がして、得体のしれない悪寒に身震いすると、
病室が急に開けられて慌ただしく誰かが飛び込んできた。
「大丈夫か⁉ 黎、まだ面会謝絶だって」
黎くんと同じくらいの年の頃。
小麦色の肌に白い歯が目立つ、筋肉質な作業着姿の男性。
「…瑛多」
「えーたっ」
斗哉くんが男性を見ると、嬉しそうに駆けて行って抱き上げてもらっていた。
「えーた、しーっ、だよ?」
「あ、…そうか、ごめんな」
瑛多と呼ばれた青年は、頬を緩ませて斗哉くんと親し気に話しながら、
「うるさくしてすみません。お加減はいかがですか」
ゆっくりとベッドの方に近づいてきた。
「俺、高梨瑛多って言って、黎と澪の幼なじみで、えーっと、…」
実直。素直。安らぎ。草原。蒲公英。
草野球。笑顔。太陽。干したばかりの布団の匂い。
「澪の婿候補ですっ」
人好きのする笑顔で八重歯を見せて私に頭を下げた瑛多くん。
彼を嫌いになれる人は恐らくこの世に存在しないだろう。
「…バカ」
一瞬の沈黙の後、澪さんが瑛多くんの頭をぺしっと叩いて、
「ばか」
斗哉くんがその真似をした。
心なしか、澪さんの頬が赤らんでいるように見える。
けど。
正直それどころじゃない。
婿? 婿⁇
幼なじみで婿候補?
なんか今。
この太陽スマイル、すっごい爆弾投げなかった⁇
「…―――ッ⁇」
婿候補ってどういうことですか――っ⁉
そこんとこ詳しく聞きたいのに、声が出ない。
「バカは澪だろ。俺は本気だって。ずっと澪に本気だって言ってるのに」
「…バカ瑛多。そんなの、今言うことじゃないでしょ」
「だって、黎のラブブレスなら、俺も末永くお付き合いするだろ。自己紹介は大切じゃん」
「初対面でいきなり、先生だって訳が分からないでしょう?」
まあ。訳が分かりません。けれど。
詳しく教えてほしいのに、澪さんと瑛多くんが若干イチャイチャしながら言い合いを始めて、なんだか急に蚊帳の外。
「この前だって俺を誘えばいいのに、黎と動物園行ったりしてよ?」
「だって、…なんかずるいもん」
「ずるくない。俺がいいって言ってるんだから」
「だって、…瑛多は、大事だし」
澪さんが赤くなりながら困ったようにもごもご言っている様子が、同性から見ても可愛すぎてツラい。
え。なに、この2人。
これってどう見ても、…
「らぶらぶ?」
2人の世界に入り込めない者同士、相通ずるものがあったのか、
澪さんと瑛多くんの間に挟まれた斗哉くんがお手上げみたいな感じで教えてくれた。
ええっ⁉
ラブラブってどういうことじゃ――っ⁉
自身のキャラが崩壊して、なんなら、瑛多くんに掴みかかりかけた時、
「失礼。ちょっとよろしいですか」
いつの間に入ってきたのか、くたびれたスーツを着た強面の男性が2人、
静かに近づいてきて、一気に空気を張りつめらせた。
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