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番外編.【三年後】

後編

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穂月と出会って今まで。
驚いたり、混乱したり、一世一代の勇気を出したり。
食べたり笑ったり眠ったり。

ささやかでかけがえのない時間を思い出しながら一歩一歩進む。

爽やかな新緑の中、私たちを見守って支えてくれた大切な人たちと一緒に、御神殿まで歩んでいく。穂月。卯月。両親。親戚。恩師。上司。親友。卒業生、…私と出会ってくれて、私たちと出会って見守ってくれた、大切なみんなの一つ一つが今を作っている。そう思ったら、必死で目を瞬いてももはや無理で、ポロリと涙が零れ落ちてしまった。

「…なんで泣く?」

御神殿に辿り着いて、和やかにお参りした後、紋服姿も最上級に凛々しい穂月が綿帽子に隠れて泣いている私を覗き込んだ。

「…幸せで」

穂月と出会って、いつも毎日幸せだけど、その幸せは見守ってくれる人たちあってのものなんだなと実感する。真面目なだけが取り柄なのに、アラサーまで結婚の気配もないと思いきや、連れてきた彼氏は10個も年下の高校生で、身元もよく分からないまま入籍していて、いつの間にか子どもも産んでいたという、…人並みの幸せを願っていた父と母がよくもまあ納得してくれたもんだと思う。

私も将来、卯月がてんとうむしさんと結婚することになっても、本人が幸せなら祝福してあげたい。

お化粧が崩れてしまうのに。
まだ式は始まったばかりで披露宴もあるというのに。
全然堪えられなくてぽろぽろ涙が零れてしまう。

「お前ホント、…」

そんな私に穂月が優しい笑みを漏らして、

「俺も」

ちゅっと一瞬口づけた。
穂月のキスが好き。穂月の全部が好き。
神様。穂月と会わせてくれてありがとう。

「まあ」「ふふ」「仲良しね」

しかし、感極まる暇もなく、その一瞬を参列客からしっかりばっちり見られて恥ずかしさに涙が止まった。
穂月は私より古い時代に生まれてるけど、良くも悪くも革新的だと思う。

「うーくんもリンとチューしよ」
「ダメっ、ランとチューっっ!!」

「卯月は父上と同じく妻は生涯一人と決めているのです」

「「てんとうむしに操たてんなよっ」」

リンちゃんランちゃん渾身の突っ込みが炸裂し、指先にてんとうむしを停まらせた卯月がにっこり笑った。将来、穂月以上の女泣かせになる予感。(親バカ)

「祝宴会場へ移動になります。皆様こちらへ」

スタッフさんに促されて御神殿から披露宴会場に移動する。

「リン、ラン。待っていても奇跡は起こらない。運命は自分でつかみ取りに行くものよ」

「「オッケー、マムっ」」

母親の声援を受けて、双子が卯月を追いかける。

「あ、てんとうむしさん、…」

ものすごい勢いで両側から迫られて、はずみで穂月の手から離れ、てんとうむしが空に飛んでいった。

太陽に向かって飛ぶてんとうむしは、時を超えて祝福に来た神様の御使いのようで。

出会えた奇跡に。
一緒に過ごせる奇跡に。
今、この瞬間に。

ありがとうを祈った。
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