上 下
51 / 92
iiyori.06

06.

しおりを挟む
「マキちゃん~~~♡ 牛蒡出来たよ~~~♡」
「お・マ・キっ!! 何度言ったら分かるの、このすかたんっ!!」

バッシンと頭をどつかれるけど、幸せ。
だって配属された志田城の女中頭が、なんとマキちゃんだったのよ。
ここでマキちゃんに会えるなんて、味方が100人出来たようなもの。

「ああ、なえ。その牛蒡、炊き込みご飯に使うから、全部ささがきにして」
「…ぶつ切りで良くない?」
「いいわけあるか――――っ」

再び頭がスカターンと鳴る。戦国のマキちゃんは勇ましい。

そして、戦国女中のお姉さんたちは、仕事が早いうえに上手い。洗う、切る、運ぶ。火を起こす、焚く、片付ける。炊飯器も食器洗い乾燥機もない炊事場で、ガールズトークに花を咲かせながら、驚異のスピードで手を動かし、食品工場の機械みたいな正確さでささがきの山を築き上げていく。

「あんた、何この丸太」
「え? ささがきですよ、ささがき」
「こんなぶっといささがきがあるか―――いっ」

自分がいかに家事をさぼっていたかが浮き彫りになる。
令和に帰ったらカット済み冷凍牛蒡じゃなくて生の牛蒡を調理しよう、…

「ねえちょっと、誰か。釜が足りないから、蔵まで行って持ってきておくれ」
「ハイハイは~~~いっ! 行ってきま~~~すっ」

丸太牛蒡と万能包丁を放り投げて、我先にと蔵に走る。この機会を待っていた。

女中になったのは、炊事力を鍛えるためだけじゃない。時切丸ときりまるについて探るためでもある。時切丸が時空を超える鍵であるのは間違いないけど、そもそも時切丸っちゅーのは何物で、どこからやってきたんだ、という謎がある。

「あ、こら、なえっ! あんたは牛蒡を、…っ」
「おマキさん、もういません」
「あの子、無駄にやる気だけはあるんだけどねえ、…」

マキちゃんと女中仲間たちの深いため息は聞こえない。

時切丸はその容赦のなさから、蔵に封印されていたのが、穂月誕生とともに自らを解き放った、とか聞いた気がする。つまり、誰か時切丸を封印する力を持ってた人がいたってことで。どうやって封印したんだか、とりあえず蔵から探ってみようっ、…

「これ、そこの女子おなご。こんなところで何をしておる」

と思ったんだけど、蔵に着く前に迷子になってしまった。志田城広すぎ案件。あれ、ここさっきも通ったよね? おんなじ所グルグル回ってる? これってホラーの始まりじゃん? 案件が勃発してしまった。

誰かに場所を聞くしかないか、と思っていたら、ちょうどいい感じに声をかけられた。

「あ、すみませ~~~んっ。迷子になっちゃってえ。蔵ってどっちにありましたっけ、…」

怪しまれないよう、精一杯愛想を良くして声をかけてくれた人を見ると、

「え、雪だるまマモル、…っ!?」

「はて。東丸達磨だるま法師とはこのわしじゃが。このようにかわゆらしい女子にも知られておるとは、わしも隅に置けないの」

いや、自分で言うなし。

紫色の高僧っぽい袈裟を着たちょっと歳とった雪だるま、…に激似の法師が立っていた。

まさかの、雪だるまマモルは由緒正しい達磨だった案件、…っっ
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

知り合いの人妻、簡単にヤれた

下田
恋愛
主人公の田中は女好きな大学生。ある日、知り合いの人妻とねんごろな関係になってしまい…

処理中です...