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4章.きき色デイリーライフ

02.

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『新婚ナナセ、離婚の危機か!?』『ナナセが指輪をしないワケ』
『恩返し婚破局!! 夫の復帰ライブ中、男と密会していた妻を捨て、ナナセは本命恋人オリビアの元へ』

何日ぶりかに日本に帰ってくると、世間は不穏な話題で盛り上がっていた。

『国際的に活躍する人気バンドGalaxiesギャラクシーズの中心的存在であり、単独アーチストとしても世界的に人気を博すギタリストのナナセ(22)。先日、本格派洋楽ロックバンドL2とのセッションライブのため訪れていたイギリスで、列車テロに巻き込まれ、その容態が心配されたが、予定通りの日程で行われたライブに、驚異的な回復力で復帰し、感動的な演奏でファンを魅了した。

そのナナセは昨年一般女性(22)と結婚し、多くの女性ファンを嘆かせたが、その妻との関係に変化が生じているという。発端は、軽薄な妻の奔放な振る舞い。生死の境をさまよったナナセの看護を事故直後から懸命に付き添っていたバンドメンバーのオリビア(21)に任せ、病院にも数えるほどしか顔を出さなかったばかりか、大事な復帰ライブ中に夫の目を盗んで英国男性(30)と密会。また、日本から同行した知人男性(28)と相合傘で仲睦まじくティータイムを楽しむなど、破廉恥な姿が目撃された。
【写真中央 英国男性と街中でキス直前の妻】【写真右下 知人男性と優雅なティータイム】

これまで妻を溺愛し、その愛妻家ぶりでも話題になっていたナナセだが、この一連の態度はさすがに目に余ったのか、滞在中のホテルで三下り半を突きつけ、離婚の意志を固めたようだ。ホテルではナナセに縋る妻の姿も目撃されているが、ナナセの決意は固く、その左手薬指には婚約会見で披露した指輪は見られない。

ナナセは日本で正式に離婚が成立した後、自分を献身的に支えてくれ、現在は心労のためイギリスで療養中のオリビアの元に向かうものと思われる。』

いや、思われない。思われないよね!?

言われてみれば、ななせ、指輪してないな。
なんて、今さら気づくからダメなんだ。状況はひっ迫していて、そんな呑気なことを言っている場合ではない。

到着した空港では、『ナナセ離婚』の真偽を確かめるため、詰めかけた報道陣で溢れかえっていた。

「ナナセさ~ん、お身体の調子はいかがですか~?」
「セッションライブ、素晴らしかったです! お疲れさまでした~~~」
「帰りを待っていた日本のファンに一言」
「最近、何かご心境に変化などありましたか~?」

到着ロビーに入るなり、すごい勢いで囲まれたななせは不機嫌オーラ全開だった。サングラスで表情を隠しているものの、一言も口を利かず、醸し出す苛立ちのオーラが凄まじい。

飛行機では隣に座って私にもたれかかりながら寝ていたのに、マネージャーの三島さんから騒ぎについて教えられると、ななせは無言で席を立ち、私を置いてさっさと飛行機を降りてしまった。その後、離れて後方から従う私の方はチラリとも見ない。

ななせに釈明したいのに。聞く耳を持ってもらえない。

せっかく枕として超一流まで昇進したのに。
信頼がた落ちじゃん。どうしてくれるんだし。

とは言え、常に世間の注目を浴びているななせの妻として、軽率な行動だったことは否めない。

「あ、つぼみさん、お帰りなさ~~い」
「つぼみさ~ん、記事はご覧になられましたか?」
「何か仰りたいことありますか~~~?」

ななせから離れて、こそこそと身を潜めて通り過ぎようとしたものの、マスコミの方々には速攻で見つかってしまい、矢継ぎ早にマイクが向けられた。

ななせがちょっと記憶障害みたいな感じになってるなんて言えない。
でも、離婚を突きつけられているのは事実。ななせに必要とされていないのも事実。

「…すみません」

言いたいことはないわけじゃないけど、私に言えることはない。
頭を下げて立ち去ろうとすると、行く手を阻まれ、もみくちゃになる。

「すみません、通して下さい」

見かねた侑さんが肩を抱いて連れ出してくれた。

「そう言えば、お義理兄にいさんとの関係も注目されていますよね」
「ナナセと結婚する前はお義理兄さんと同棲されていたというのは本当ですか?」
「つぼみさ~ん、いかがですか~?」
「否定されないんですか~~~?」

背後からの質問は止まない。
答えても答えなくても、これでまた叩かれるのは間違いない。

せっかくななせが信頼回復に努めてくれたのに、また私は世紀の大罪人みたいな扱いになるんだろうか、…
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