38 / 104
4章.きき色デイリーライフ
02.
しおりを挟む
『新婚ナナセ、離婚の危機か!?』『ナナセが指輪をしないワケ』
『恩返し婚破局!! 夫の復帰ライブ中、男と密会していた妻を捨て、ナナセは本命恋人オリビアの元へ』
何日ぶりかに日本に帰ってくると、世間は不穏な話題で盛り上がっていた。
『国際的に活躍する人気バンドGalaxiesの中心的存在であり、単独アーチストとしても世界的に人気を博すギタリストのナナセ(22)。先日、本格派洋楽ロックバンドL2とのセッションライブのため訪れていたイギリスで、列車テロに巻き込まれ、その容態が心配されたが、予定通りの日程で行われたライブに、驚異的な回復力で復帰し、感動的な演奏でファンを魅了した。
そのナナセは昨年一般女性(22)と結婚し、多くの女性ファンを嘆かせたが、その妻との関係に変化が生じているという。発端は、軽薄な妻の奔放な振る舞い。生死の境をさまよったナナセの看護を事故直後から懸命に付き添っていたバンドメンバーのオリビア(21)に任せ、病院にも数えるほどしか顔を出さなかったばかりか、大事な復帰ライブ中に夫の目を盗んで英国男性(30)と密会。また、日本から同行した知人男性(28)と相合傘で仲睦まじくティータイムを楽しむなど、破廉恥な姿が目撃された。
【写真中央 英国男性と街中でキス直前の妻】【写真右下 知人男性と優雅なティータイム】
これまで妻を溺愛し、その愛妻家ぶりでも話題になっていたナナセだが、この一連の態度はさすがに目に余ったのか、滞在中のホテルで三下り半を突きつけ、離婚の意志を固めたようだ。ホテルではナナセに縋る妻の姿も目撃されているが、ナナセの決意は固く、その左手薬指には婚約会見で披露した指輪は見られない。
ナナセは日本で正式に離婚が成立した後、自分を献身的に支えてくれ、現在は心労のためイギリスで療養中のオリビアの元に向かうものと思われる。』
いや、思われない。思われないよね!?
言われてみれば、ななせ、指輪してないな。
なんて、今さら気づくからダメなんだ。状況はひっ迫していて、そんな呑気なことを言っている場合ではない。
到着した空港では、『ナナセ離婚』の真偽を確かめるため、詰めかけた報道陣で溢れかえっていた。
「ナナセさ~ん、お身体の調子はいかがですか~?」
「セッションライブ、素晴らしかったです! お疲れさまでした~~~」
「帰りを待っていた日本のファンに一言」
「最近、何かご心境に変化などありましたか~?」
到着ロビーに入るなり、すごい勢いで囲まれたななせは不機嫌オーラ全開だった。サングラスで表情を隠しているものの、一言も口を利かず、醸し出す苛立ちのオーラが凄まじい。
飛行機では隣に座って私にもたれかかりながら寝ていたのに、マネージャーの三島さんから騒ぎについて教えられると、ななせは無言で席を立ち、私を置いてさっさと飛行機を降りてしまった。その後、離れて後方から従う私の方はチラリとも見ない。
ななせに釈明したいのに。聞く耳を持ってもらえない。
せっかく枕として超一流まで昇進したのに。
信頼がた落ちじゃん。どうしてくれるんだし。
とは言え、常に世間の注目を浴びているななせの妻として、軽率な行動だったことは否めない。
「あ、つぼみさん、お帰りなさ~~い」
「つぼみさ~ん、記事はご覧になられましたか?」
「何か仰りたいことありますか~~~?」
ななせから離れて、こそこそと身を潜めて通り過ぎようとしたものの、マスコミの方々には速攻で見つかってしまい、矢継ぎ早にマイクが向けられた。
ななせがちょっと記憶障害みたいな感じになってるなんて言えない。
でも、離婚を突きつけられているのは事実。ななせに必要とされていないのも事実。
「…すみません」
言いたいことはないわけじゃないけど、私に言えることはない。
頭を下げて立ち去ろうとすると、行く手を阻まれ、もみくちゃになる。
「すみません、通して下さい」
見かねた侑さんが肩を抱いて連れ出してくれた。
「そう言えば、お義理兄さんとの関係も注目されていますよね」
「ナナセと結婚する前はお義理兄さんと同棲されていたというのは本当ですか?」
「つぼみさ~ん、いかがですか~?」
「否定されないんですか~~~?」
背後からの質問は止まない。
答えても答えなくても、これでまた叩かれるのは間違いない。
せっかくななせが信頼回復に努めてくれたのに、また私は世紀の大罪人みたいな扱いになるんだろうか、…
『恩返し婚破局!! 夫の復帰ライブ中、男と密会していた妻を捨て、ナナセは本命恋人オリビアの元へ』
何日ぶりかに日本に帰ってくると、世間は不穏な話題で盛り上がっていた。
『国際的に活躍する人気バンドGalaxiesの中心的存在であり、単独アーチストとしても世界的に人気を博すギタリストのナナセ(22)。先日、本格派洋楽ロックバンドL2とのセッションライブのため訪れていたイギリスで、列車テロに巻き込まれ、その容態が心配されたが、予定通りの日程で行われたライブに、驚異的な回復力で復帰し、感動的な演奏でファンを魅了した。
そのナナセは昨年一般女性(22)と結婚し、多くの女性ファンを嘆かせたが、その妻との関係に変化が生じているという。発端は、軽薄な妻の奔放な振る舞い。生死の境をさまよったナナセの看護を事故直後から懸命に付き添っていたバンドメンバーのオリビア(21)に任せ、病院にも数えるほどしか顔を出さなかったばかりか、大事な復帰ライブ中に夫の目を盗んで英国男性(30)と密会。また、日本から同行した知人男性(28)と相合傘で仲睦まじくティータイムを楽しむなど、破廉恥な姿が目撃された。
【写真中央 英国男性と街中でキス直前の妻】【写真右下 知人男性と優雅なティータイム】
これまで妻を溺愛し、その愛妻家ぶりでも話題になっていたナナセだが、この一連の態度はさすがに目に余ったのか、滞在中のホテルで三下り半を突きつけ、離婚の意志を固めたようだ。ホテルではナナセに縋る妻の姿も目撃されているが、ナナセの決意は固く、その左手薬指には婚約会見で披露した指輪は見られない。
ナナセは日本で正式に離婚が成立した後、自分を献身的に支えてくれ、現在は心労のためイギリスで療養中のオリビアの元に向かうものと思われる。』
いや、思われない。思われないよね!?
言われてみれば、ななせ、指輪してないな。
なんて、今さら気づくからダメなんだ。状況はひっ迫していて、そんな呑気なことを言っている場合ではない。
到着した空港では、『ナナセ離婚』の真偽を確かめるため、詰めかけた報道陣で溢れかえっていた。
「ナナセさ~ん、お身体の調子はいかがですか~?」
「セッションライブ、素晴らしかったです! お疲れさまでした~~~」
「帰りを待っていた日本のファンに一言」
「最近、何かご心境に変化などありましたか~?」
到着ロビーに入るなり、すごい勢いで囲まれたななせは不機嫌オーラ全開だった。サングラスで表情を隠しているものの、一言も口を利かず、醸し出す苛立ちのオーラが凄まじい。
飛行機では隣に座って私にもたれかかりながら寝ていたのに、マネージャーの三島さんから騒ぎについて教えられると、ななせは無言で席を立ち、私を置いてさっさと飛行機を降りてしまった。その後、離れて後方から従う私の方はチラリとも見ない。
ななせに釈明したいのに。聞く耳を持ってもらえない。
せっかく枕として超一流まで昇進したのに。
信頼がた落ちじゃん。どうしてくれるんだし。
とは言え、常に世間の注目を浴びているななせの妻として、軽率な行動だったことは否めない。
「あ、つぼみさん、お帰りなさ~~い」
「つぼみさ~ん、記事はご覧になられましたか?」
「何か仰りたいことありますか~~~?」
ななせから離れて、こそこそと身を潜めて通り過ぎようとしたものの、マスコミの方々には速攻で見つかってしまい、矢継ぎ早にマイクが向けられた。
ななせがちょっと記憶障害みたいな感じになってるなんて言えない。
でも、離婚を突きつけられているのは事実。ななせに必要とされていないのも事実。
「…すみません」
言いたいことはないわけじゃないけど、私に言えることはない。
頭を下げて立ち去ろうとすると、行く手を阻まれ、もみくちゃになる。
「すみません、通して下さい」
見かねた侑さんが肩を抱いて連れ出してくれた。
「そう言えば、お義理兄さんとの関係も注目されていますよね」
「ナナセと結婚する前はお義理兄さんと同棲されていたというのは本当ですか?」
「つぼみさ~ん、いかがですか~?」
「否定されないんですか~~~?」
背後からの質問は止まない。
答えても答えなくても、これでまた叩かれるのは間違いない。
せっかくななせが信頼回復に努めてくれたのに、また私は世紀の大罪人みたいな扱いになるんだろうか、…
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる