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2章.そら色サンダーボルト
01.
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「Hello, are you Ms. Amemiya? This is the Metropolitan Police Service.」
こんな時間だし、ななせからかもしれないっ、と勇んで飛びついたスマートフォンには見覚えのない番号が表示されていた。しかもなんか国際電話っぽい。恐る恐る通話をタップすると流ちょうな英語が耳に飛び込んできたけど、寝ぼけた頭ではすぐに理解できない。
え、何? ポリスって言った?
「え、…えーと。はい、雨宮です」
大体私は英語が得意ではない。
「Your husband, Mr. Amemiya was involved in a train accident. He was taken to hospital unconscious.」
なんか。
良くないことが起こって、物凄く不吉なことを言われているのは分かった。
心臓がバクバクして、頭がガンガンしてきた。
無意識に身体が震えて、スマホを握り直す。
つたない英単語の知識をつなぎ合わせて、どうやらイギリスにいるななせが事故に遭い、病院に搬送されたらしいということを理解した。
警察らしき相手の人に何と言って電話を切ったのか覚えていない。
他に誰もいない部屋は静まり返っていて、外はまだ暗く、現実感がまるでない。
今すぐななせがいる病院に向かいたいのに、そのための手続きに頭が回らない。落ち着け落ち着けと言い聞かせ、やるべきことを考える。まずは母に連絡、と、ななせのお兄さんである侑さん、にも連絡して、で、荷物をまとめて空港に、…あ、飛行機の予約が先か。えーと、パスポート、どこだっけ、…
早く動かなきゃいけないのに、身体が強張って動けない。
そんな場合じゃないのに、涙が込み上げてくるのが自分でも情けない。
…飲み会なんか、やってたからかな。
とんちんかんな思想が押し寄せて、罪悪感に駆られた。
全部自分が悪い気がして、猛烈に後悔する。何で私、ななせの代わりに事故に遭わなかったんだろう。何で私、こんなところでのうのうと寝てたの。
一度決壊したら、もう動けなくなる気がして唇を噛みしめた時、再びスマートフォンが震えた。
心臓に鋭い痛みが走る。
これ以上、何か怖いことを言われたらどうしよう。
怖くて怖くて、震えながら手を伸ばすと、涙の向こうに『サクくん』の表示が見えたから、通話を押すとともに泣き出していた。
「サクくんっ、ななせ、ななせがっ、…―――――っっ」
「ああ、うん。連絡行ったんだね。大丈夫だよ、つーちゃん。ななせ、生きてるから。生きてるからね。大丈夫。ななせがつーちゃん置いて行くわけないだろ。だから大丈夫だよ」
聞き慣れたサクくんの声に縋るように泣きながら頷いた。
サクくんが言ってくれた言葉を呪文のように繰り返す。
生きてる。ななせは生きている。大丈夫。大丈夫。
ななせのバンドメンバーで、一緒にイギリスに行っている朔弥くんが、取り乱している私を慰めながら、事故のあらましを教えてくれた。
ロンドンの主要ターミナル駅10か所で同時に爆発が起こり、セント・パンクラス・インターナショナル駅からイングランド南東方面へ向かおうとしていたななせも、その爆発事故に巻き込まれた。爆発はテロの可能性が高いと見られているが、詳細は調査中。
他の大勢の負傷者と共に救出されたななせは意識不明の重体で、病院に搬送され、これから緊急手術が行われるということだった。
「つーちゃんがこっちに着くころには、ななせも目覚めてると思うよ。だから落ち着いて、焦らずに会いに来て。つーちゃんに何かあったら俺がななせに殺される」
サクくんの優しい声が急速に消耗した神経を緩和させてくれ、涙を拭いて何度も何度も頷いた。
ななせ、待ってて。
すぐに行くから、待っててね。
こんな時間だし、ななせからかもしれないっ、と勇んで飛びついたスマートフォンには見覚えのない番号が表示されていた。しかもなんか国際電話っぽい。恐る恐る通話をタップすると流ちょうな英語が耳に飛び込んできたけど、寝ぼけた頭ではすぐに理解できない。
え、何? ポリスって言った?
「え、…えーと。はい、雨宮です」
大体私は英語が得意ではない。
「Your husband, Mr. Amemiya was involved in a train accident. He was taken to hospital unconscious.」
なんか。
良くないことが起こって、物凄く不吉なことを言われているのは分かった。
心臓がバクバクして、頭がガンガンしてきた。
無意識に身体が震えて、スマホを握り直す。
つたない英単語の知識をつなぎ合わせて、どうやらイギリスにいるななせが事故に遭い、病院に搬送されたらしいということを理解した。
警察らしき相手の人に何と言って電話を切ったのか覚えていない。
他に誰もいない部屋は静まり返っていて、外はまだ暗く、現実感がまるでない。
今すぐななせがいる病院に向かいたいのに、そのための手続きに頭が回らない。落ち着け落ち着けと言い聞かせ、やるべきことを考える。まずは母に連絡、と、ななせのお兄さんである侑さん、にも連絡して、で、荷物をまとめて空港に、…あ、飛行機の予約が先か。えーと、パスポート、どこだっけ、…
早く動かなきゃいけないのに、身体が強張って動けない。
そんな場合じゃないのに、涙が込み上げてくるのが自分でも情けない。
…飲み会なんか、やってたからかな。
とんちんかんな思想が押し寄せて、罪悪感に駆られた。
全部自分が悪い気がして、猛烈に後悔する。何で私、ななせの代わりに事故に遭わなかったんだろう。何で私、こんなところでのうのうと寝てたの。
一度決壊したら、もう動けなくなる気がして唇を噛みしめた時、再びスマートフォンが震えた。
心臓に鋭い痛みが走る。
これ以上、何か怖いことを言われたらどうしよう。
怖くて怖くて、震えながら手を伸ばすと、涙の向こうに『サクくん』の表示が見えたから、通話を押すとともに泣き出していた。
「サクくんっ、ななせ、ななせがっ、…―――――っっ」
「ああ、うん。連絡行ったんだね。大丈夫だよ、つーちゃん。ななせ、生きてるから。生きてるからね。大丈夫。ななせがつーちゃん置いて行くわけないだろ。だから大丈夫だよ」
聞き慣れたサクくんの声に縋るように泣きながら頷いた。
サクくんが言ってくれた言葉を呪文のように繰り返す。
生きてる。ななせは生きている。大丈夫。大丈夫。
ななせのバンドメンバーで、一緒にイギリスに行っている朔弥くんが、取り乱している私を慰めながら、事故のあらましを教えてくれた。
ロンドンの主要ターミナル駅10か所で同時に爆発が起こり、セント・パンクラス・インターナショナル駅からイングランド南東方面へ向かおうとしていたななせも、その爆発事故に巻き込まれた。爆発はテロの可能性が高いと見られているが、詳細は調査中。
他の大勢の負傷者と共に救出されたななせは意識不明の重体で、病院に搬送され、これから緊急手術が行われるということだった。
「つーちゃんがこっちに着くころには、ななせも目覚めてると思うよ。だから落ち着いて、焦らずに会いに来て。つーちゃんに何かあったら俺がななせに殺される」
サクくんの優しい声が急速に消耗した神経を緩和させてくれ、涙を拭いて何度も何度も頷いた。
ななせ、待ってて。
すぐに行くから、待っててね。
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