マチ恋 ―君に捧げるLove song― 一夜の相手はスーパースター。誰にも言えない秘密の恋。【完結】

4章. 悠馬

machi.51

「ユーマ、少し休め」

ロンドンに来てから、俺は何かに憑かれたかのように、仕事に打ち込んでいた。
スタジオにこもって、食事もそこそこ、寝にも帰らず、演奏やアレンジに時間を費やした。

自分を追いつめて、何も考えずにいたかった。

「さすがに無茶しすぎだ。こっちのミュージシャンと合同でやるのに、体調でも崩したら元も子もない。いいから、今日はもう帰れ」

マークに帰ることを強制され、ほぼ一週間ぶりにスタジオをでる。地下鉄でふらついて、自分でもちょっとやばいかなと思った。

ホテルに帰ると、

「日本からお電話がありました」

フロントで告げられ、連絡先のメモを受け取る。
どうせリナだろうと思って見ると、

ヒロト？

大学にいた頃のバンド仲間だ。

珍しいな。

最近ではあまり連絡を取っていない。
確か、日本の企業に就職している。

「ヒロト？　電話くれた？」

携帯電話を叩き壊してから、新しいのを買っていない。
リナが買ってくると言っていたが、必要ない気がする。
もう携帯してまで連絡を取りたい人はいない。

ホテルの部屋から電話を掛けると眠そうなヒロトの声がして、

「…ん～？　ユーマ？」

日本はまだ真夜中だと思い出す。

「悪い、ヒロト。夜中だったな」
「あ～…、いや、いいよ」

徐々に目が覚めたらしくヒロトの声がはっきりしてくる。

「あのさ、ゆいちゃんのこと、誤解、解けたかと思って」

誤解？

「お前の子で間違いないんだろ？
俺、結婚したらしいとか曖昧な噂伝えたからさ、気になって」

子ども？　俺の？
ゆい、の？

理解が追い付かなくてヒロトを問い詰めると、
日本では、ゆいが俺の隠し子を育てていると話題になっているという。

パソコンを取り出して、インターネットに繋いだ。
スタジオにこもっていて、このところ何のニュースも見ていない。

『リナ、大ショック！　新婚Yumaに隠し子！！』
『寝耳に水！Yumaも知らなかった衝撃の事実』

目当ての記事は、すぐに見つかった。

『昨年クリスマスに入籍したばかりのビックカップル、EXZのボーカリスト・Yuma（２４）とモデルのリナ（２２）。そのYumaに、本人も知らない隠し子が居たことがわかった。
現在３歳のその子は、Yumaが大学在学当時、交際していた一般女性Yさんとの間に出来た子で、YさんはYumaと別れた後、密かに出産し、未婚のまま育てていた。
先日、YumaとYさんは数年ぶりに都内某所で密会。隠し子の事実を伝えたのか、車中で熱烈なキスを交わす様子が目撃されている。
２人の親密ぶりから、Yumaは子どもを認知すると見られる。不倫に発展するのか。子どもの存在で、離婚、略奪愛となるのか。今後の動向に目が離せないが、新婚リナの悲痛な心中は察するに余りある。』