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『クリスマスの奇跡!我が校アイドル・ミクちゃんが野獣とカップル!?』

懲りない新聞部が朝も早くから、最新号をばらまいている。

「うんうん、チビザルくんよ、聞きたいかね?俺とミクちゃんのなれ初め。ん?何だよ、お前、いわせるなよ~っ」

いきなり平手でたたかれた背中が痛い。
団長、真冬でも暑苦しいな。

「いやぁ、この頃ミクちゃんに元気がなくてね、ああ、俺にはすぐわかるわけ。だって、いつも見てるから。でぇ~、俺が励ましてたら、ミクちゃんが、泣いちゃってぇ~、慰めてたら~、俺を恋する瞳で見つめてきてぇ~」

どうしてオレは、とっくに授業が始まっている朝の渡り廊下で、かつての団長、早乙女カズマ先輩の恋バナを聞かされなきゃならないんだろう。

「はぁ、まぁ、よかったっスね」

適当に相槌を打つと、なぜか胸ぐらをつかまれて、

「いや!よくないんだよっ」

語気荒く迫られた。

…よくねーのかよ。

「チビザルっ!後生だから、ネ、ネ、ネ…っ」

ね?

「くっ、首輪を見せてくれ!」

鼻息荒くして、何を。

「ネックレスっスか?」

授業サボってまで言うことかな。
首輪って。

『お前は俺のものってこと』

ふいにリツキの声と、オレを辿る感覚がよみがえる。

イタリアで、一晩中リツキとつながって、…

うお。発火するっ

「チビザル!しっかりしろ!やはり、ネネっ、ク、首輪は、恋の必須アイテムなんだな!」

や。
なんか、間違ってるような。

「オレがしてるのは、これスけど」

制服の下から、リツキにもらったピースネックレスを取りだす。
革ひもに銀盤が光る。
あ、チナツはプラチナっつってたな。

「ほほ~う!これか、これだな!…して、チビザルよ、これはどこで手に入れたのかね?」

早乙女先輩が鼻息をかける勢いでネックレスを凝視する。

「え~? 先輩、言わせるんスかぁ~?」

オレに、あの熱い夜のてん末を語れと?

「頼む、チビザル!」

急に真剣な顔をして、オレの手を握りしめる早乙女カズマ。

「これを手に入れられるかどうかに、俺とミクちゃんの未来がかかってるんだ!」

…なんでよ?

「や、これはもらいものなんで、どこに売ってるかとか、わかんないスけど…」

俺の言葉に、涙目になる早乙女カズマ。

泣くなよ!

「このネックレスはラブ度アップの必須アイテムで、これを身に付けてから、口っ、口っ、く、く、接吻をっっ!」

そんなタコみたく赤くなって力説されてもね?
ラブ度アップとか初耳だしね?

「イタリアのどっかに売ってんじゃないスかね?聞いてみましょうか?」
「おおぅ、チビザル!お前ならやってくれると思ってたぜ!」

感涙の先輩がオレを絞め殺、…抱き寄せて背中をバシバシたたく。

この人、受験生じゃなかったっけ。
こんなんでいいのか?

「ちょっと、アイ~。授業サボってどこ行ってたのよ?」

教室に戻ったオレのところに心配したチナツがやってきた。

「あー、…団長につかまった」
「早乙女先輩?それはご苦労な、…って、ホントに西本ミクは先輩と付き合ってるのかな」

思案顔のチナツ。

「先輩は盛り上がってたけどな」

暑苦しさ全開で。

「アイにあんな嫌がらせするほどリツキくんに執着してたのにね。2人の絆にやっと諦めたか…」

絆。

「って、照れるだろぉ」

いい響きじゃね?

「もしくは、新たなワナか」

…チナツがオレの喜びをスルーする。

「アイ。リツキくんはアイを裏切ったりしないけど、西本ミクには気をつけた方がいいかも」

「お、おう」

チナツが真面目なので、ちょっと気圧される。

先輩、嬉しそうだったけどな。
まあ、オレにはリツキのお守りもあるし。

先輩もネックレスでうまくいくなら、それがイイな。
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