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hage.70
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美容院って素晴らしい~~~っ
と大声で叫びたい。
オレは超キュートなモテ系フェアリーボブ(カリスマ有野談)に生まれ変わって、団地入り口でリツキの帰りを待っている。
カリスマ有野は、オレのハゲ宣言を笑わなかったばかりか、
「短くしちゃっていいのかな」
爽やかにフォローし、実は円形脱毛症なんですと告白すると、それがどうしたと言わんばかりに
「分け目をずらせば問題なく隠れるし、バレッタ留めても可愛いよね」
さりげないオシャレ提案までしてくれたのだ。
さすがカリスマ!ブラボー美容院!
アロマシャンプーとかいうイイ匂いのシャンプーは癒されるし、びっくりするほどオシャレにスタイリングしてくれるし、バレッタをおまけにプレゼントしてくれるし、眉とかいじくってなんか顔まであか抜けてるっぽくしてくれるし!
おまけに有野はカリスマだけあって、
小顔だね、とか、肌すごいきれいだね、とか、ほめ殺しだしっ!!
リツキ、驚くよな。
か、かわいいとか、
離したくないとか、思うかな。
今日も一緒に寝ようとか、言ってくれちゃったりしたりしちゃったりっっ!
「…アイ?」
暗がりからリツキがうかがうようにオレを見ていた。
妄想が炸裂して肝心のリツキ帰宅を見逃していたらしい。
「リツっ!」
急いでリツキの前に躍り出る。
「なぁなぁ、見て見て。オレ、モテ系フェアリーボブになったんだけどっ」
リツキがまじまじとオレを見ている。
生まれ変わったオレを。
超キュートボブなオレを。
「…それ、美容院とか行ったわけ?」
「おうっ、カリスマ有野がやってくれたんだっ」
リツキは。
全然オレの予想通りじゃなくて。
「似合わねーことしてんじゃねーよ」
冷たく吐き捨てて団地の外階段を上がっていった。
「はぁぁぁ?めっちゃ可愛くなってるのにっ!もぉぉぉ~~~っ」
チナツが可愛く頬を膨らませてリツキを見るけど、リツキはちらりともこっちを見ない。
…怒ってる。
それはよくわかるんだけど、なんでかはよくわかんねー。
リツキは今朝、迎えに来なかったし、教室でも全く目が合わない。
…へこむ。
「…オレに美容院なんて、猫に小判、豚に真珠、馬の耳に念仏、弘法も筆の誤り…」
「アイ!しっかり!なんか違くなってるから!」
ハゲのくせに調子こいて色気出そうとか。
マシュマロニシモトに対抗しようとか。
やっぱ、イタいってことだよな。
「急に可愛くなっちゃって焦っただけだって。もぉホント、素直じゃないんだから~~~っ」
チナツが慰めてくれるけど、焦ってるって感じじゃねー。
なんつーか、オレのこと、がっかりしたみたいな感じ。
愛想つかされた?
ハゲをないがしろにして?
「…フェアリーってガラじゃねーしな」
「そう?似合ってるよ、その髪型」
オレのつぶやきにあらぬところから反応があり、見ると、いつの間にか教室にタカヤが入ってきていた。
「はは、…さんきゅー」
「やる気ない返事」
タカヤが机に突っ伏すオレの髪をつまんで落とす。
「オレ、やる気出すとろくなことねー」
「英語頑張ったのにな。本多と喧嘩した?…余裕ないよな」
余裕なんかあるわけねーし。
あんな風にリツキに包まれて。
リツキの腕の中、独り占めしたいって思う。
あんなこともう、他の誰ともしてほしく…
「シュンくぅ~んっ!もお、こんなとこに居たの~っ!?」
憂うつなオレの耳にひときわ響くやたらハイテンションなこの声は。
「あらぁ、お茶漬けコマちゃん。どうだった?本多くん。良かったでしょ?」
言わずと知れたカワシマで。
と大声で叫びたい。
オレは超キュートなモテ系フェアリーボブ(カリスマ有野談)に生まれ変わって、団地入り口でリツキの帰りを待っている。
カリスマ有野は、オレのハゲ宣言を笑わなかったばかりか、
「短くしちゃっていいのかな」
爽やかにフォローし、実は円形脱毛症なんですと告白すると、それがどうしたと言わんばかりに
「分け目をずらせば問題なく隠れるし、バレッタ留めても可愛いよね」
さりげないオシャレ提案までしてくれたのだ。
さすがカリスマ!ブラボー美容院!
アロマシャンプーとかいうイイ匂いのシャンプーは癒されるし、びっくりするほどオシャレにスタイリングしてくれるし、バレッタをおまけにプレゼントしてくれるし、眉とかいじくってなんか顔まであか抜けてるっぽくしてくれるし!
おまけに有野はカリスマだけあって、
小顔だね、とか、肌すごいきれいだね、とか、ほめ殺しだしっ!!
リツキ、驚くよな。
か、かわいいとか、
離したくないとか、思うかな。
今日も一緒に寝ようとか、言ってくれちゃったりしたりしちゃったりっっ!
「…アイ?」
暗がりからリツキがうかがうようにオレを見ていた。
妄想が炸裂して肝心のリツキ帰宅を見逃していたらしい。
「リツっ!」
急いでリツキの前に躍り出る。
「なぁなぁ、見て見て。オレ、モテ系フェアリーボブになったんだけどっ」
リツキがまじまじとオレを見ている。
生まれ変わったオレを。
超キュートボブなオレを。
「…それ、美容院とか行ったわけ?」
「おうっ、カリスマ有野がやってくれたんだっ」
リツキは。
全然オレの予想通りじゃなくて。
「似合わねーことしてんじゃねーよ」
冷たく吐き捨てて団地の外階段を上がっていった。
「はぁぁぁ?めっちゃ可愛くなってるのにっ!もぉぉぉ~~~っ」
チナツが可愛く頬を膨らませてリツキを見るけど、リツキはちらりともこっちを見ない。
…怒ってる。
それはよくわかるんだけど、なんでかはよくわかんねー。
リツキは今朝、迎えに来なかったし、教室でも全く目が合わない。
…へこむ。
「…オレに美容院なんて、猫に小判、豚に真珠、馬の耳に念仏、弘法も筆の誤り…」
「アイ!しっかり!なんか違くなってるから!」
ハゲのくせに調子こいて色気出そうとか。
マシュマロニシモトに対抗しようとか。
やっぱ、イタいってことだよな。
「急に可愛くなっちゃって焦っただけだって。もぉホント、素直じゃないんだから~~~っ」
チナツが慰めてくれるけど、焦ってるって感じじゃねー。
なんつーか、オレのこと、がっかりしたみたいな感じ。
愛想つかされた?
ハゲをないがしろにして?
「…フェアリーってガラじゃねーしな」
「そう?似合ってるよ、その髪型」
オレのつぶやきにあらぬところから反応があり、見ると、いつの間にか教室にタカヤが入ってきていた。
「はは、…さんきゅー」
「やる気ない返事」
タカヤが机に突っ伏すオレの髪をつまんで落とす。
「オレ、やる気出すとろくなことねー」
「英語頑張ったのにな。本多と喧嘩した?…余裕ないよな」
余裕なんかあるわけねーし。
あんな風にリツキに包まれて。
リツキの腕の中、独り占めしたいって思う。
あんなこともう、他の誰ともしてほしく…
「シュンくぅ~んっ!もお、こんなとこに居たの~っ!?」
憂うつなオレの耳にひときわ響くやたらハイテンションなこの声は。
「あらぁ、お茶漬けコマちゃん。どうだった?本多くん。良かったでしょ?」
言わずと知れたカワシマで。
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