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hage.60

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「リツキ先輩にも付け過ぎだって怒られちゃいました。猫は匂いに敏感なのに、って」

ニシモトが舌を出して、肩をすくめる。

…リツキ。

もうオレ、名前聞くだけで泣けそう。

「そっかぁ。ミクちゃん、リツキくんとよく一緒にヒメちゃんのお世話してるもんね」

「はい。ヒメがリツキ先輩のこと大好きなんで、ヒメを連れて、強化練習の応援にも行ってます」

チナツの言葉に満面笑顔で答えるニシモト。

「やっぱりリツキ先輩、めちゃめちゃカッコいいですよね!」

「うんうん、だよね~」

チナツは笑顔でチビ猫をニシモトに返すと、

「じゃあ、そろそろ行くね。またね」

オレを強制連行して、校舎に戻った。

「アイ!ヘコんでる場合じゃないよ。これはヤバイって!」

ニシモトから離れたとたん、チナツの表情が豹変して、ふぬけてるオレをガクガク揺さぶる。

「姫、本気で王子狙いだよ!敵はちゃっかり強化練習まで押しかけてんじゃん!」

オレだって、ヤバいのはわかってる。
ヒートアップしているチナツに、オレは情けない現状を打ち明けた。

「…最近、あいつら、一緒にいるんだ」
「え?」
「昨日、夕方、リツキがニシモトといるとこ、見た」

『寄り添って、微笑みあって』

思い出すと鉛を飲み込んだみたいに胸の奥が重くなって息が詰まる。
あんなトコ、見たくなかった。

『俺、ホントは、ずっとミクのことが好きで。
…この前、初めて、好きな子にキスした』

あんな夢、見たくなかった。

「リツキから、ずっと、シャンプーの匂いがするんだ…」

ニシモトの香りじゃなかったとしても、リツキとニシモトが近くにいたのは事実で。
匂いが移るほど一緒にいたのは事実で。

「…アイ」

チナツがオレを慰めるようにその胸に抱きしめた。

情けないけど、どうしたらいいのかわからない。
シャンプーの匂いに惑わされて、テストはボロボロだし。
カワシマに負けてリツキを怒らせるし。

「…わざとかもね」

オレを励ますようにくっついていたチナツが、おもむろに口を開く。

「わざと?なにが?」

「…宣戦布告って言うの?わざとシャンプーつけすぎて、リツキくんに匂いが移るようにしたのかも。アイを不安にさせて、二人の仲に亀裂を入れるために」

顔を上げると、チナツが真剣な顔で宙をにらんでいた。
ニシモトが?
あの天使みたいな見てくれで?

「カワシマより西本ミクのが手ごわそうだよ。…でも!」

言葉を切ると、チナツは真正面からオレをしっかりと見据え、

「リツキくんが好きなのはアイだよ。カワシマにも西本ミクにも惑わされちゃダメ!」

力強く言い切った。
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