【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

hage.37

「お前、鷹谷に何にもされてねーだろうな？」

何にも…

『俺のファーストキス、コマチだよ』

タカヤの揺れる瞳を思い出す。

『…好きだ』

「いへー…」

リツキに両頬をつままれた。

「たそがれてんじゃねえ！はっきりしろ」

「はれてねーこともねーような気がしねーでもねーような？」

いてーし、しゃべれねーしっ

「…告られた？」

なぜ、わかる？？

恐る恐る頷くと、リツキがあからさまに舌打ちした。

「ちゃんと断ったんだろうな？」

オレをのぞき込むリツキの眼がこえー。

壊れた人形みたいに細かくうなずくと、リツキに頬をつねられた。

「つけ込まれてんじゃねえよ、ハゲ」

吐き捨てるようなリツキの言葉に、嵐のように告白されてたリツキを思い出した。
乱暴に、リツキの腕を振り払う。

「つけ込まれてんのは、お前だろっ！」

リツキをにらみ返す。
得体のしれない黒いもやが胸を覆う。

『…好きです』

下駄箱裏の、震える声を思い出す。

「告白されてたくせにっ！へらへらしてんじゃねーっ！」

オレの勢いに面食らったのか、ややひるみながらも、

「…あんなの、遊びだろ？」

リツキがそう、うそぶいた。
それは、オレに冷や水を浴びせるのに充分だった。

遊び？
リツキにとって、コクハクは遊びなのか？

リツキに「好き」って言いたくて。
でも、全然言えなくて。
リツキに「好き？」って聞きたくて。
でも、全然聞けなくて。

体育祭が終わったら。
って決めたのに。
オレより先に山のように告白されてて。

『俺にしなよ。本多、ああいう奴だよ。コマチ、遊ばれてるんじゃねえの？』

「…そうだな」

オレはいつも、リツキの手のひらの上で好きなように遊ばれているだけだ。

「アイ？」

「…帰るよ。明日の練習試合、頑張って」

リツキから逃げるように家に飛び込んだ。

「アイっ」

閉めたドアの向こうで、リツキの声が聞こえた。

もう、リツキに遊ばれて泣くのはたくさんだ…