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3章.銀髪のイケメンに愛される

03.

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「何はともあれフローズンバナナヨーグルトですわ」
「溶けてしまったら元も子もありませんわ」
「ラズ姫さまからジョシュア様への愛のこもった手作り品ですのよ」

…何でも愛にすんなよ。

と思わないでもないものの。
タミル3人娘がデザートのフローズンバナナヨーグルトを持って割り込んでくれたおかげで、恐怖の再会劇は一時中断され、デザートタイムになった。

「…うまいな」

ヨーグルトを口に入れたキングがわずかに口角を上げてつぶやいたのを聞いたら、急に満ち足りた気分になって、ネメシス女史に対して優しい気持ちが湧いてきた。

「とてもよく出来ておりますね」

お上品に口にしながら感想を漏らす女史を、ネメシスさん、普通にいい人じゃんと思えてくるからキングの一言は偉大だ。というか、俺は単純だ。

「ジョシュア王が花嫁を娶られたとは初めて伺いましたな」

ゲゲック宰相と呼ばれていた人が、目を細めて俺を見る。

玉座の間に居るのは、俺とタミル以外は、キングとネメシス女史、王の直近の部下らしい6名ほどの獣人。そして、貿易交渉にやってきたアレクサンドロニカ王国のゲゲック宰相、俺の元婚約者らしいマシュマクベスト皇太子、俺の実の妹らしいソフィア姫、の3人だった。世話係として一緒に来た人間は部屋の外に控えているらしい。

ゲゲック宰相の視線の先に映る俺は、キングの隣に座らされている。それとなく腰に手が回されていて、所有権を主張されているような気がする。キングの体温がそこはかとなく伝わってくるのがかなり落ち着かない。

「娶ったばかりです。披露はいずれ」

「しかしながら、ティアラ姫は我がアレクサンドロニカ王国アレクサンダルン大王の一族セレバンティウス公の第一皇女。ここにいるマシュマクベスト皇太子と結婚していずれは王妃となる可能性もあった女性です。我が国に何の断りもなく既に婚姻済みとは、いささか早計ではありますまいか」

獲物を見つけた狩人のようなゲゲック宰相の細い目が俺を射る。副会長とか第一秘書とかやってそうな、冷静沈着でずるがしこいねっとりとした視線が怖い。

こいつ、絶対俺のこと駒にしようとしてる。

無意識に震えると、キングが俺の頭の上に手をのせて、柔らかく弾ませた。子ども扱いするなよ、と言いたいような、そこから安心が浸透してさざ波のように広がっていくような、奇妙にこそばゆい気持ちになる。

「ラズはエイトの森にいました。それがどういう意味かご存じですね」

キングの低い声は静かだけど有無を言わさない威圧感がある。ゲゲック宰相は押し黙り、ソフィア姫は射殺しそうな目で俺を見ている。マシュマクベスト皇太子だけがヨーグルトを平らげ、おかわりを所望していた。
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