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2章.瑠璃色の瞳の美少女になってた
02.
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童貞か童貞じゃないかという、どうでも良さそうに見えて意外と重要な疑問に、俺が頭を悩ませているうちに、キングはさっさと身体を起こして、ベッドを出ようとしていた。
「あ、…ちょっ、…待っ」
置き去りにされる寂しさみたいなものにとらわれて、無意識のままキングに縋りつこうとしたら、空振りした。身体に力が入らない。骨抜き。いや、マジで。本気で。腰が砕けてる。
「お前は、まだ寝てろ。ちょっと、…加減出来なかった。後でタミルを世話に来させる」
シャツを羽織ったキングが振り返って、ベッドで奮闘している俺の頭を抱え上げると、
ちゅ。
物凄く優しいキスを落とされた。
…ビビる。
生まれて初めての体験にじわじわ頬に熱が集まっていく。なんだこの、甘酸っぱいような、恥ずかしいような、むずがゆいような感覚は。
なんか、なんか、…
経験したことのない感覚に言葉も出ず、ベッドの中をのたうち回りたい気分になっていると、
「…今夜。また溢れるほど注いでやるから、大人しく待ってろ」
キングが低くかすれた声を耳に甘く響かせてくるから、本気で息が止まるかと思った。
な、…っ、…んちゅう爆弾落としてくるんだ、このキング。
怖え。イケメン、怖え。囁き一つで息の根止めるとか、なんちゅうテクを持ってるんだ。殺す気か、クソ。31歳童貞社畜を舐めんなよ。
バックバクする心臓を押さえて縮こまっているうちに、キングはこれまた心臓疾患を起こしそうなほどクールで甘い笑みを浮かべて、どこかに出かけて行ってしまった。
で、俺もまた別の感触に胸を騒がせていた。
…柔らかい。
そうだ、俺。イケメンにうっかりときめいてしまって、自分を抹消したい気分だったけど、今の俺は31歳童貞社畜ではなかった。
直視できないほど柔らかくてまろやかな胸を持った美少女なんだった。キングの視線の先には俺じゃなくて、儚い系美少女がいるんだ。
すうっと込み上げてきた切なさに、顔に集まっていた熱が引いていく。あの何ちゃらジョシュアキングは、俺の肉体、…美少女のことが大切なんだな。そう思ったら、マックスまで高揚していた気持ちが冷めていった。まあ確かに、31歳の深町輝相手にあの甘さを出してきたら、気持ち悪いよな。そりゃまあそうだわな。心底納得するのに、何かが痛む。
イケメン激甘爆弾、投下してくんじゃねえよ、バーカ。
「あ、…ちょっ、…待っ」
置き去りにされる寂しさみたいなものにとらわれて、無意識のままキングに縋りつこうとしたら、空振りした。身体に力が入らない。骨抜き。いや、マジで。本気で。腰が砕けてる。
「お前は、まだ寝てろ。ちょっと、…加減出来なかった。後でタミルを世話に来させる」
シャツを羽織ったキングが振り返って、ベッドで奮闘している俺の頭を抱え上げると、
ちゅ。
物凄く優しいキスを落とされた。
…ビビる。
生まれて初めての体験にじわじわ頬に熱が集まっていく。なんだこの、甘酸っぱいような、恥ずかしいような、むずがゆいような感覚は。
なんか、なんか、…
経験したことのない感覚に言葉も出ず、ベッドの中をのたうち回りたい気分になっていると、
「…今夜。また溢れるほど注いでやるから、大人しく待ってろ」
キングが低くかすれた声を耳に甘く響かせてくるから、本気で息が止まるかと思った。
な、…っ、…んちゅう爆弾落としてくるんだ、このキング。
怖え。イケメン、怖え。囁き一つで息の根止めるとか、なんちゅうテクを持ってるんだ。殺す気か、クソ。31歳童貞社畜を舐めんなよ。
バックバクする心臓を押さえて縮こまっているうちに、キングはこれまた心臓疾患を起こしそうなほどクールで甘い笑みを浮かべて、どこかに出かけて行ってしまった。
で、俺もまた別の感触に胸を騒がせていた。
…柔らかい。
そうだ、俺。イケメンにうっかりときめいてしまって、自分を抹消したい気分だったけど、今の俺は31歳童貞社畜ではなかった。
直視できないほど柔らかくてまろやかな胸を持った美少女なんだった。キングの視線の先には俺じゃなくて、儚い系美少女がいるんだ。
すうっと込み上げてきた切なさに、顔に集まっていた熱が引いていく。あの何ちゃらジョシュアキングは、俺の肉体、…美少女のことが大切なんだな。そう思ったら、マックスまで高揚していた気持ちが冷めていった。まあ確かに、31歳の深町輝相手にあの甘さを出してきたら、気持ち悪いよな。そりゃまあそうだわな。心底納得するのに、何かが痛む。
イケメン激甘爆弾、投下してくんじゃねえよ、バーカ。
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