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第三部 俺のハーレム・パーティはやっぱりおかしい/ラッキースケベは終了しました!

和解

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パンパン!

「ハイハイ! 茜もミリア様もとりあえずその辺にしてください」

と加奈が両手を叩き、間に入って二人の争いを諌めた。

「戦いの後始末が残っているので、そう言う痴話喧嘩は後片付けが終わってからにしてくださいね」

「痴話喧嘩とはなんじゃ!! 妾はジルドを取り戻すために国を後にしたのじゃぞ!!」

「そうよ! 加奈!! 痴話げんかなんかじゃないわよ!! 伯爵さんは国に無くてはならない人なのよ!」

「そもそも二人のケンカの理由が噛み合っていないじゃないの!!」

「売られたケンカは買う!!」

と茜は拳を握り締めた。

「どこの不良なのよ!! とにかく戦後処理の方が大事でしょ!」

と少々、加奈は呆れ顔で言った。

「貧チチ! 出しゃばるな!」

ミリアが加奈を挑発すると

「あっ! それを言ったらダメ!」

と茜が言い終わらないうちにカポーン!という音が回りに響いた。
加奈が杖でミリアの頭を叩いた音だった。
それを見た俺は・・・・・・
加奈ちゃん、絶対に過激になっている!
一応、ミリアは次期バンパイア王国の女王なのに! それにも関わらず杖で叩くなんて!
茜ちゃんの影響なのだろうか?
俺も加奈ちゃんに逆らうのは止めておこうと心に誓った。

「うぐっ! 痛いのじゃ!!」

ミリアは自分の頭を抑え後ろにいるジルドの方を振り向き

「痛いのじゃ! ジルド!! あの女が妾を杖で叩いたのじゃ!」

「ミリア様! これはミリア様がいけません! レディーともあろう者が人の肉体的な欠点・・・・」
ジルドは一瞬、加奈のほうへ視線を移し続けた。

「いえ、肉体的なことを口に出してはなりません!
 それに我らが宰相閣下を怒らせてはいけません! 獣王や龍王、大魔王でさえも黙って従うのですよ!」

「龍王と言うと龍之介の父か!」
とミリアはジルドを見上げるように尋ねた。

「龍之介!?」
ジルドは一瞬誰のことか分からなかったが、思い出したように

「龍王の次男ですか?」

「そうじゃ! 龍王の子供じゃ。 おい、龍之介! こっちへ来るが良い」

ミリアは手招きをした。
手招きに応えるように龍之介がとぼとぼと歩いてきた。

「コヤツじゃ!」

ミリアは自分の前に龍之介を立たせ肩に手を置いた。

「ほほう。これがあのときの龍ですか!! 人型になるとこういう姿ですか」
ジルドの声には冷たさと怒りが含まれていた。

「2000年経とうがお前が姫様に働いた狼藉は許しませんよ!!」

ジルドは2000年前に起きた『マーベラス死の大行進』を思い出した。
リッチになった聖女が巻き起こしたハルフェルナの歴史をも変える大事件を。
死者が溢れハルフェルナの町と言う町を襲い世界がゾンビだらけになってしまったことを。
ゾンビと為ったのは人間だけではなくエルフやオークを始め亜人や魔族・・・・そして龍さえも!
ゾンビになった龍の中に龍之介の兄もいた。
本来なら龍の頂点たる龍王が手を下さなくてはいけないのだが、龍王はそれが出来ず代わりに茜がゾンビと化した龍之介の兄を討伐したのであった。

ジルドは虚空庫からサーベルを取り出し斬りかかろうとした。

「止めて! 伯爵さん!!」
「止めろ! ジルド!」

茜と碧が叫ぶ。

その声にジルドはピタッと動きを止め茜の方へ振り向いた。

「ダメ! 伯爵さん。 その子を傷つけないでください」

茜はゆっくりと龍之介に近寄り視線を合わせるように跪き龍之介の手を取った。

「ごめんなさい。あなたが私を憎む気持ちは分かるわ。
 許してとは言わないけれどあの時はお兄さんを倒すしか方法が無かったの・・・・・
 私もお兄ちゃんを酷い目に合わせる者がいたら許さないから。
 まだ、あなたが私を許せないなら、すべてが終わったとき私を殺せばいい」

「茜ちゃん!!」
「茜!」
「姫様!!」

龍之介は『ううん』と言って首を振った。

「僕も分かっているよ。勇者・茜! 好きで僕のお兄ちゃんを殺したんじゃないって・・・・・
 僕ね、お前のお兄ちゃんに凄く優しくしてもらっているんだ。
 凄く凄く大切にしてもらっているんだ。本当の弟みたいに。
 でね、お姉ちゃんや小さいお姉ちゃんからも弟のように可愛がってもらっているんだよ」

と女体化した将太と智弘の方を見た。

「僕がお前と戦ったらお兄ちゃんやお姉ちゃんを悲しませる事になるでしょ・・・・
 だからもういいんだ。僕の中ではもう終わったことなんだ」

と龍之介は下を向き涙を流した。
そして茜はゆっくり抱きしめた。
一時はどうなるかと思ったが何とか良い方向へ向かった。

時は人を優しくしてくれる。
多分、龍でさえも時の流れは優しくしてくれた。





一つの苦しみ・悲しみが終わると智弘が慌てたように声を上げた。 

「碧! ズガーンダムに星野が乗っているか確認しないと!」

「そうだ!! コリレシア軍の処理もしておかないと! 放っておくと奴ら、ゾンビになるからな! 
 将太! あとで浄化してくれ」

俺の言葉に将太は黙って頷いた。
智弘とともに上下に切断されたズガーンダムの元へ向かおうとしたとき

「危険だから私たちも行く」

と茜が言うと加奈も頷いた。
智弘と一言二言話ながらズガーンダムの元へ向かう途中、何の気なしに振り向くと茜ちゃんが歩いていた・・・・・
というより、地上を浮きながら歩く格好をしていたが・・・・・明らかに不自然だった。

「茜ちゃん! その歩き方どうしたの? 魔法を使っているのなら直立で移動すればいいのに?」

「あ、これ! 私、右足が上手く使えなくなっちゃったの。
 だから・・・普通に歩くことが出来なくて飛空魔法を使って浮かんでいるんだけど・・・・
 変な目で見られるから・・・・こうやって歩くフリをしているの」

え?ちょ、ちょ、ちょっとそれもなんか変なんだけど。

「私、顔もだけど右足も同じように爛れていて・・・・・・歩けなくなっちゃったの」

茜は赤い縁取りがされたローブの下に学校の制服を着ており、足も肌が露出しないように透けることの無い黒での厚いストッキングを履いていた。

「え!! どうして!! 何故!?」

「邪神・アリーナにやられたときの傷が・・・・・・」

「将太に治してもらおう! あいつ、聖女だから治癒魔法ならお手の物だよ! 将太ーーーー! こっちこっち!!」

大声をあげ、手招きして将太を呼び寄せると将太はヒョコヒョコと女の小走りをしながらやって来た。
うん、どう見ても女子にしか見えない!!

「お兄ちゃん、無理だと思う。私も回復魔法使えるけど・・・・・治らなかった。
 これは呪いなの。だから魔法では治らないの」

「邪神・アリーナって誰? 初めて聞いたんだけど?」

「私たちの敵! ハルフェルナの動乱の後にはあいつが必ずいるの! 
 表に出てくることがあれば裏で魔族や人間を操ってこの世界を征服しようとしている・・・・・」

と茜は一旦言葉を濁したあとに目を見開いて悪意のすべてをこめて言った。

「クソビッチ!!」

「へ!? クソビッチ?」

「そう! クソビッチ!!」

「茜ちゃん、レディーがそんな言葉使ったらダメでしょ!」

「碧さん! そんなことありません! あいつはクソビッチです!!」

と加奈が拳を握り締めながら言った。

「えっ! 加奈ちゃんまでも?」

俺の顔を見ながら黙って頷いた。

「でもアリーナってのも神なんでしょ?」

「邪神ですよ! 邪神!」

「そうよ、お兄ちゃん!! アリーナを神呼ばわりしたらダメよ!
 あいつがいるからこの世界には平和が来ないのよ!!
 人の欲につけ込んでハルフェルナに争いの種を撒き散らしているのよ!
 ゴキのように憎しみという名の病原菌を撒き散らしているのよ!!」

と拳を握り茜は力説した。

茜ちゃんの激怒の仕方から考えると邪神・アリーナとも戦う事になるだろう・・・・・・


!!!! 俺は大切なことを思い出した。

「茜ちゃん! タナとロゼは元気?」

「元気よ! いつもお兄ちゃんのベッドの上で寝ているわよ。
 時々、二人して切ない声で鳴くの・・・・・・あの子たちもお兄ちゃんを思い出して鳴いているのよ」

タナとロゼの姿が瞼に浮かび涙がこぼれそうになり天を仰いだ。

「早く帰って二人を力いっぱい抱きしめたいな~早く会いたい」

が、まだ帰るわけにはいかない。
やらなくてはならないことが俺には残っている。
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