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第三部 俺のハーレム・パーティはやっぱりおかしい/ラッキースケベは終了しました!

ジルド・ブラドー!

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黒い燕尾服を着たオールバックの男はゆっくり振り向いた。

「ミリア様、その男が新しい彼です・・・・・か?」

と男は俺の顔を見た瞬間!

「碧さま!!」

というと驚いた顔をした。

碧さま? この間は俺を殺そうとしていただろ!!
何故、今になって『さま』付けだよ!

「ジ、ジ、ジルド!! こ、こ、この者は違うのじゃ!! 妾にはジルドしかおらんのじゃ!!」

と言うと俺の腕を振りほどきジルドの元へ走り飛びついた。

ミリアの奴、七海に嫉妬させるとか言っていたが・・・・・
お前の方がマズイんじゃないの?

「ジルド、助けて欲しいのじゃ! 
 あの戦車というのを撃退して欲しいのじゃ!
 後ろには妾の友達がいる街があるのじゃ!」

ミリアはジルドに縋りながらお願いした。

「分かっております。
 我らの宰相閣下から異世界の兵器は排除せよ!と仰せつかっております。
 後の装甲車に碧さまと退避してください。 残りの部隊は私が片付けて起きます」

と後を振り向くと気が付かない間にコリレシア軍の装甲車があった。
・・・・・・もしこの装甲車にコリレシア軍人が乗っていたら。
俺はあの世に逝っていた。
前方だけにしか注意が向いていない・・・・・何だかんだいっても、俺は戦いの素人なのだ。
どこにでもいる普通の高校生なんだ。

「さぁ~みなさん、こちらへ!」

装甲車の上にいたのは、女性4人組の旅人に襲われたときのサキュバスの少女だった。
少女は俺たちに向け手を差し伸べた。
以前、敵対したときとは異なる優しい瞳をしていた。

「早く、こちらへ。危険です。ここから退避しましょう」

不安を感じないではないが、今さっきまで『戦いの素人』とか思っていたがこの幼いサキュバスくらいなら俺とミリアなら何とかなるだろうとまた甘い考えを持ってしまった。

俺はミリアの脇に手をやり持ち上げるとサキュバスの少女はミリアを引っ張り上げた。

「おい、ジルドは一人で大丈夫なのか?」

サキュバスの少女に問いかけると

「伯爵様なら問題ないですよ」

と優しく微笑みながら言った。

「早くここから退避しましょう」

と俺の手を取り引っ張り上げてくれた。

内部に入り運転席を見ると俺と同じくらいの年の大人しそうな日本人の少年が運転していた。
エイジアさんが気になり装甲車の後の小窓から覗くと凄いスピードで右左、右左とかわしながら戦車に灼熱色の大剣を突き刺していた。

「さすがエイジアさんだ! あれなら大丈夫だな・・・・・・智弘!
 智弘を忘れていた!」

慌てて運転席の方へ向かい運転している少年に南の森を指しながら

「あの森へ行ってくれ! 俺の仲間がいる!頼む!」

「は、はい! 分かりました!」

少年は俺の言葉にびくつきながら声を上ずらせた。

装甲車が90度左へ回頭し加速した。
再度後方の覗き窓へ向かいエイジアさんとジルドを見た。

エイジアさんは相変わらず恐ろしい速さで戦車に近寄り灼熱の大剣を戦車に突き刺していた。
が、距離が離れたことで何とか俺の目でも追えた。

ジルドはゆっくり徒歩で歩いていた。

!! 

あいつ、何ゆっくり歩いているんだ!
良い的にしかならないぞ!

ズドーン!

戦車の砲塔が火を吹いた。

ドン!

見事にジルドに命中し煙が辺りを覆う。

「ジルド!!!」

思わず装甲車の中で叫んでしまった。

「大丈夫ですよ! 伯爵様はあの程度ではやられませんよ」

サキュバスの少女が答えた。
煙が消えるとジルドは右手を突き出し立っていた。

「魔法障壁か!」

とサキュバスの少女の方へ向きなおすと頷いた。

なおもジルドは歩きながら、どこからか細身の銀色に輝くサーベールを抜いた。

ズドーン!

またジルド目掛け戦車から弾丸が放たれた。

ジルドは弾丸が当たる直前にサーベルを下から上へと振り上げた。

スパッ!

と、ここまで音が聞こえるのじゃないかというくらい弾丸は真っ二つになりジルドの後方へ落ちた。

!! さすがだ。さすが『魔王』と言われるだけの技量だ。
常人の為せる業ではない。
茜ちゃんはこんな化け物のような奴等を何人も退治してきたのか。
さぞ苦しい旅だったのだろうな。
さぞ辛かっただろう。誰か助けてくれる人たちはいたのだろうか?


そうだ! 茜ちゃんはジルドの主人・紅姫に殺されたんだ!
クリムゾン魔国にはジルドをはじめ5人の四天王がいる!
ワイハルト帝国で遭った獣王・ネギトロ、他にも龍之介の親父の龍王・龍左衛門がいて大魔王、女王と呼ばれているの魔王がいる。
ジルドと龍王はミリアと龍之介がいれば戦わずに済むかもしれない。
獣王・ネギトロは頭が弱そうだったので智弘の悪知恵で上手くいなせるような気がする。
問題は大魔王と女王だ。
この二人はどんな奴なのか見当が付かない。
ジルドと並ぶ四天王の一角なのだから弱いわけが無い。
・・・・・この二人を避け、直接、紅姫だけを狙い撃ちするしか無い。
他にも時々名を聞く『宰相閣下』も気になる。
誰もが『宰相』と呼ばず、『宰相閣下』と後ろに『閣下』や『様』を付ける。
相当怖い奴に違いないのだろう。
俺の頭の中にオークのような巨大な体躯をした大男が浮かぶ。

ここはジルドと龍之介の親父を上手く丸め込んで対抗するしかないな。
智弘に悪知恵を絞ってもらうしか無い・・・・・・・







「派手な爆音がしたので来てみて正解でしたね。何事かと思いましたが碧さまにまた会えるとは。
 私は運が良い」

と一人ジルドは微笑んだ。

「ここでこの戦車を処分しておきませんと姫様に合わせる顔がない。
 貴様ら異世界人を葬って、碧さまに刃を向けてしまったことを帳消しにさせてもらうとしましょう」

とジルドは勝手なことを口にすると一転、目にも留まらぬスピードで戦車に近づいた。

「アースニードル!!」

戦車の目前で地面に手を置くと巨大な土の柱が戦車の下から突如と現れ横転させた。
戦車はひっくり返りキャタピラが虚しく空回りをする。
右手に持ったサーベルを水平に構え左手で刃をなぞりながら

「ハーデニング!!」

と硬化魔法を掛けると銀色に輝いていたサーベルは黒く色が変わった。
そして仰向けになった戦車にサーベルを突き刺し

「ボルケーノ!!」

と炎の呪文をサーベル越しに唱えると戦車は一瞬、真っ赤に色が変化しまたゆっくりと本来のカーキ色に戻っていった。
その時ジルドの後ろから声が聞こえた。

「ジルド・ブラドー! さすが『強欲の魔王』と言われるだけのことはありますね」

「誰だ!」

ジルドは声に驚き後ろを振り向反射的にサーベルを構えると犬の獣人が立っていた。

「獣人! 貴様! 只者では無いな!」

ジルドは内心焦っていた。
こうも簡単に後を取られたことは今まで一度たりともなかった。

「私はエイジア。放浪の騎士。碧さんの味方です」

「そうか。碧さまのお仲間か。すまなかった」

と言うとサーベルの構えを解いた。

「もう『強欲の魔王』という名は捨てた。今は『姫様の騎士・伯爵 ジルド・ブラドー』だ。
 もし良ければ、そなたの腕を貸していただけないだろうか?
 この異世界の部隊を全滅させておかないと後々大変な事になるのでね
 この機械仕掛けの車も大変だが中に入っている奴らも色々と厄介でしてね。
 放置しておくと巨悪なオークになり、死んでもゾンビになり、焼いて処分しておかないとゴーストになるんので色々と厄介なのですよ」

ジルドは紳士然とした雰囲気で言った。
ジルドが背後を取られるようなことは長年生きてきても片手で数えられるくらいだった。
その自分の背後を気づかないうちに取られてしまった。
一瞬でエイジアの強さを見抜いた。

「あらあら、それは大変ですね。力を貸さないわけにはいきませんね」

「あの火を吹く車は戦車と言って前面は強固だが後、側面、下部などは比較的脆い。
 私が魔法を使ってひっくり返すので・・・・」

「大丈夫ですよ。あの程度の装甲、この剣があれば切断、破壊が出来ます」

「そうか。では、その腕前、とくと見せていただこう」

二人は左右に散り、各々標的となる戦車に向かった。
エイジアは大剣を灼熱色に輝かせ、ブラドーはサーベルを黒く輝かせながら。

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