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第二部 お兄ちゃん、待っててね!/ラッキースケベは必・・・あぁ! そんなものねぇーよ!!

傲慢の魔王・獣王ライキン

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北の森へ近づくと遠巻きに100人ほどのウオレル兵が撤退しているのが見えた。
亜人たちからの攻撃を受けたようで、まとまりがなく各自各々に逃げている様子だ。
指揮する者がいないのかもしれない。
水色の肌のガミラーズ人も見当たらない。

「北の森付近が戦場になると言うことは、ライキンたちは追い詰められているのかもしれんな。
 これは急いだ方が良いかもしれんが正面だって行くのは不味い、少し迂回し行った方が良いぞ」
フェネクシーがまたじいさんルックになり言う。

忠告どおり迂回しながら森の中を進むと、いきなり10人ほどの亜人たちに囲まれてしまった。

「人間だ! 殺せ!!」

狼の亜人に命令され、犬、猫、トラ、牛、エルフなどの亜人たちが襲い掛かってきた。
茜は馬車の御者台から飛び出しタナの剣を抜き剣技のスキルを唱え対抗した。
人間とは異なりスピードが全然違う。
圧倒的に素早く一打一打も重さが違う。
剣で斬激を受け、足で相手を蹴飛ばし気絶させる戦法を取った。
詩織と加奈は馬車の奥に隠れ千代、織田も外へ出て亜人たちと相対する。
千代と織田を心配したが茜と同じく相手の剣を受け、蹴り飛ばす戦い方をしていた。
ブラドーは何事もなかったように華麗にかわし手刀で相手を気絶させていった。

1分も掛からず全員を気絶か無力化に成功したところに、一際体の大きいライオンの亜人がやって来た。

「貴様らよくもヤッてくれたな! ウルフェン、大丈夫か!」

先ほど命令を下していた狼の亜人に声を掛けた。
狼の亜人はお腹の辺りを摩りながら

「ライキン様、申し訳ございません」

「いいから、休め。後は俺がやる!」

「あの赤髪の女は尋常じゃない強さです。お気をつけください」

「ライキン、待て!! 私たちは争いに来たのではない」

「何だ、ブラドー、お前人間の味方するのか? いつからそんなヒヨッた!」

「ライキン、止めーい。お前じゃ、その女子に勝てんぞ」

「なんだ、フェネクシーのじじーまでいるのか! どいつもこいつも人間にケツ振りやがって!
 魔族のプライドは捨てちまったのか!
 俺様が人間ごときに負けるわけなかろう!!」

とライキンは茜の前に歩み寄り見下ろす。
茜は見上げながら睨み返す。
ライキンは茜の身長に合わせるために少し前かがみになり口を近づけて言った。

「俺を睨み返すとは、お前、中々いい女だな!! 気の強い女はいい。可愛がり甲斐があるぞ。
 俺の10番目の妾になれ。早速、孕ませてやるぞ!俺の子供を産ませて・・・!」

とライキンが言い終わらないうちにガシっ!とアイアンクローがライキンの大きな顔を捉える。

「臭い口を近づけるな、馬鹿猫が!!
 あぁ~ お前、舐めているのか!! 俺の子供だ~
 何、昼間からエロイ事を考えているんだ!! この馬鹿猫が!お前の鬣、全部ムシってやろうか!! 」

「ウ~~~痛い! 離せ!」

「うるさい馬鹿猫!!」

ドゴン!

と凄まじい音と共にライキンの頭を地面に思いっきり叩きつけた。

「ウガーーー!」

ライキンの顔を掴みながら地面にグリグリと押し付ける。

「お前はライオンのキングでライキンとか言わないよね~
 この世知辛いご時勢にそういうギャグいらないから!!」

とグリグリ地面にライキンの大きな顔を押し付ける。

「女子、その辺にしといてやれ。こやつは脳筋だから相手の強さを測るとか出来んのじゃ」

「しょうがないわね。大魔王さんに言われたら」
と言って手を離した。
ライキンは跪きながら頭を振った。

「何て馬鹿力だ。俺が手も足も出ないとは・・・・・」

「ライキン、姫様の背中の剣とローブを見てみろ。
 脳筋なお前でも分かるだろ」

「そ、それは、タナ様の剣とロゼ様のローブ! 
 ・・・・・・・そうか、名無しの女神の使いなのか」

「いや、私は特に使いとかじゃないけど・・・・
 異世界からお兄ちゃんを探しに来ただけだから」

「異世界召喚者か! やっぱりあいつらの仲間なのか!」

「水色の人たち?」

「そうだ。あいつらにどれだけの獣人がやられたか!! 許さん!!」

とライキンはまた構える。

「違う、違う! あんなクソガキと一緒にしないでくれる! 私たちはもっと平和な世界から来たのよ!」

「止めておけ。ライキン!女子に食って掛かってもゲートになるだけじゃぞ!」

「それでも俺は!・・・・・」

「ライキン様!!」
馬車の中から猫の亜人が近寄ってきた。

「この者らは、捕らわれた我々を救ってくれました。
 他の者たちはバラバラに落ち逃げたので、何れ合流できると思います」

「それは、本当なのか!」

「はい、それにヒールも掛けて頂きました」
と詩織を指して言う。
詩織は今の戦いで袋叩きにあった獣人たちにヒールを掛けて回っている。

「お前たちの目的は何だ!
 獣人を奴隷にしに来たのか!!」


「ライキンよ、ワシとお前は知らない仲じゃないだろう。
 お前が鼻たれの子供の頃から知っている間柄じゃろ。
 お前の一族とは親父さん、じいさんの時代からの付き合いじゃ。
 そんな可愛い子供のようなお前が困っているときに手を貸さずに何とする」
と両手を広げ飛びついてくることを期待したフェネクシーだったが

「き、き、気持ち悪いことを言うな!」
 
と拒絶された事に固まるフェネクシーから茜たちに目を移し尋ねた。

「フェネクシーは分かるが、異世界のお前たちが俺たち獣人を助ける理由は無いだろう」

「だって、奴隷とか不愉快じゃない。ペットの大魔王さんが助けたいというから飼い主の私も来たの~」

「茜・・・・見も蓋もない説明ありがとう」

「フェネクシーがペットだと!ハハハハ 笑わせるな人間! 
 人間ごときがフェネクシーに勝てるわけないだろう!」






しばらく沈黙が続いた。






「本当なのか?」
沈黙に耐えられなくなったライキンが尋ねると。

「ワシはペットになったつもりは無いのだが・・・・・」

「ペットじゃ~~~ん!!」
と言って茜はフェネクシーの禿げ上がった頭を撫でるのであった。



「お、お、お前の世界とは違って力こそがすべての世界なんだ!
 だから力で奴隷になった仲間を取り戻す!!
 これが獣王たる俺の使命!
 配下を護るのが獣王の使命!」




「私たちの世界には奴隷なんて居ないし平和な国から来たの。
 多少の貧富の差はあるけど私の国は多くの人が幸せに生きているから・・・・
 中には不幸な人もいるけど・・・・・・

 私、お兄ちゃんを探しているの。
 2000年後のこの世界に召喚されるんだって。
 だから少しでもお兄ちゃんが安全に暮らせるように、この世界を平和にしておきたいの。
 獣王と呼ばれるライキンさんとも仲良くしておいた方が私にとっても良いことなの。
 魔族の人たちは長命だし、亜人の人たちも人間よりは長命だと思うの。
 だから、ライキンさんに協力して恩を売っておいた方が特でしょ。

 それにお兄ちゃんが口癖のように言っていたの。

 『困っている人がいたら、助ける!!』って」

と優しい微笑を浮かべながら言った。
それを聞いて加奈は

「だから顔の効きく大魔王さんを旅に連れ出したのね。
 確かに、この世界が平和なら碧さんたちも安全になるわね。
 『脳筋娘』は卒業ね~」

「へ? 大魔王さんは、ヒキコモリじゃ体に良くないでしょ。
 だから連れまわしているだけよ」

その話を聞いて加奈とフェネクシーはガックリ肩を落とした。
加奈は気を取り直し、 

「ライキンさん、茜の馬鹿力を上手く利用した方が得だと思わない?
 この子、メチャクチャ強いわよ。
 さっきも召喚者の子供の頭を鷲掴みにして明後日の方向へぶん投げちゃったのよ。
 信用できないのなら私が人質になるから」

と加奈が提案した。

「加奈~」
「加奈ちゃん」

「いや、人質などは卑怯者のやることだ。
 そんな姑息なマネをこのライキン様がやったら後世の笑いものになる。



 分かった、力を貸してもらおう」

ようやくライキンに矛を収めてもらった一行であった。
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