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第二部 お兄ちゃん、待っててね!/ラッキースケベは必・・・あぁ! そんなものねぇーよ!!
城下の一日
しおりを挟むあれから2日、レべリングに励み織田が20を超えたところでイフリート討伐へ出発する事になった。
装備は王家の武器倉庫から真新しい物を提供してもらい新調した。
「うん、みんな様になっているね~ 私だけ・・・・・・何もない」
「って、いらないと言ったのは茜だろ!」
「まぁ、そうなんだけどね。
ずっと、学校の制服着ているわけにもいかないから動きやすい服を沢山貰っておいたけどね」
「今のところ『収納』の魔法を持っているのは茜だけか・・・・
王子様が言うには持っている人間は少ないと言っていたから・・・・荷物持ち頼む」
「加奈や賢者の理沙なら何れ覚えそうだけど、私だけというのは不便よね」
「しばらく荷物係を頼むわ、茜」
「あいあいさーー」
と言ってアカネは敬礼をしてみせた。
そして、茜、加奈、詩織はファイレルの城下町へ買い物に向かった。
街並みは中世のような佇まいで建物はすべて石作りであった。
町はの道路はすべて石を使って作られており時々馬車が通る。
中世そっくりな町並みであった。
亜人に会えるかと思っていた茜だったがファイレルには亜人はいなかった。
そして、奴隷もいない国であった。
スラム街のような貧民街も無く清潔で活気溢れる町だった。
「もう少し荒れているかと思ったのだけど、この国は上手く回っているようね」
茜が加奈に問いかけると
「多分、王様や宰相様が人格者で優秀なのだろうね」
「私たちへの応対を見ていても腰が低く民衆からも慕われている王様のようね」
と詩織が答えた。
「え?でも召喚されたとき、宝石が散りばめられた高そうな杖をを持っていたじゃない!裏で国民から搾取しているんじゃない?w」
「茜ちゃんは夕食会のときにいなかったから知らないと思うけど、あの杖は式典のときに使う国宝の杖だそうよ。
夕食会のときの衣装はそれほど豪華な衣装には見えなかったわ」
「わざわざ召喚のとき、私たちに失礼が無いように倉庫から持ち出してきたんだって。
あの王様、人辺りが良くてユーモアに富んでいて国民からも愛されているみたいよ」
「茜ちゃんが食事に来ないと聞いて、とても心配していたのよ。
『すぐに国中の医者を集めなさい!!』とか言って、落ち着いてもらうのに苦労したのよ」
「そんな話を聞くと益々手助けし無くてはいけなくなりそうね」
最後に平内の痔用のクッションを作るため雑貨屋に寄り必要なものを手に入れた。
ハルフェルナの貨幣制度は銅貨、銀貨、金貨、白金貨の4種類に分かれている。
現代日本の通貨基準居合わせると
銅貨=100円
銀貨=1000円
金貨=1万円
白金貨=100万円
といった感じだった。
思いのほか金貨の価値が低いような気がするのだが現代と違いハルフェルナでは金は塊で取れるためにそこそこ採取しやすい金属だそうだ。
ちなみに茜の『収納』には金の塊が幾つか収納されている。
茜たちは王から金貨10枚支給されており各自自由に使っていた。
が、現代日本で暮らした若者にハルフェルナで売っている物に誰も心ときめかす者はいなかった。
それは食事にしてもそうだった。
全般的に味が薄く調味料、香辛料が著しく少ない。
何よりこの国には米がないのだ。
この世界に来て3日しかたっていないが、ほぼ全員が米のない生活に文句を言っている。
が、こればかりは仕方の無いことだ。
現代の世界においても米を食べるのは主にアジア人だ。
ここファイレル国はどうみてもアングロサクソン。
白人ばかりである。
主食は小麦と芋なのだ。
ハルフェルナのすべてを回れば米が主食の国もあるのかもしれない。
それに期待するしかなかった。
「用事も済んだから帰りましょうか」
「茜ちゃん、優しいのね。平内君のためにクッション作るなんて」
「この世界にもクッション作れる材料が売っていて良かった。言った手前、材料が無かったらどうしようかと思ったわ」
「茜は無駄に女子力高いよな。絶対、家事とかダメそうに見えるもんな」
「失礼ね~加奈。私は出来る女よ!!」
「何故、そんなに出来る女がガサツなんだよ」
「え・・・・・・だって。子供の頃からお兄ちゃんや将太と遊んでいたから」
「将太さんはきめ細かい心使いができる人じゃない。言い訳にしか聞こえないわよ」
そこへ、
「異国のお姉ちゃんたち、俺らと遊ばない?」
「3人とも可愛いね」
「いいとこ知っているんだ。一緒に行こうよ」
どうみても盗賊にしか見えない三下が3人出てきた。
「?盗賊? おじさんたち、女子高生に声を掛けるのは10年遅かったんじゃない?」
「生意気な小娘だな。何だよ、その剣は。透き通った剣なんて見たことないぞ!」
「あれ?タナの剣って有名じゃないの?」
「へん!バカ言え! そんなのおとぎ話に決まっているだろ」
「そうなの?」
と加奈のほうを向く茜であった。
「私が知っているわけないでしょ!! おじさんたち、そういうこと言って人気のいないところへ連れて行って変なことするんでしょ~」
「安心しろ、胸の平らな女には興味が無いから。俺は後の大きな胸の女の子に用があるから」
・・・・・・・加奈は何も言わず下を向いて両手に握りこぶしを作りプルプル震えながら屈辱に耐えるのであった。
「赤い髪のねーちゃん、その剣を俺に寄こせよ。俺が使ってやるからよ」
「あんたら変質者なの?泥棒なの? どっちかハッキリさせなさいよ!」
「いいから寄こせよ」
茜はロゼのローブに張り付いているタナの剣を背中から取り外しポイッと男に投げ渡した。
ドン!!
男が倒れた。
「ウワ~~~重い、重い、足が潰れそうだ!! 助けろ、お前たち!! 何なんだよ、この剣の重さは!!早く、早く」
連れの男たちが慌ててタナの剣を持ち上げようとするが持ち上げるどころか動きもしない。
「な、な、なんだ! この重さは!!」
「う、う、うごかねぇ~ぞ!!」
「早く、早くしてくれ!!足が潰れる」
「煩いわね~~」
と言いながらヒョイっと剣の柄の部分を片手で握り持ち上げ背中に戻した。
タナの剣は持ち主を選ぶのだ。
持ち主以外は持てないほど重い。
タナの剣が拒否しているのかもしれない。
が、茜も持ち主と言うことではないのだが、なぜ持てるかというと常人離れしたステータスがあるからなのだ。
ロゼのローブも然り。常人では着ても重くて動けなくなってしまう。
ここでも力ずくな茜であった。
「ば、ば、化け物だ、この女!! 逃げろ~~」
と二人に両肩を支えてもらいながら三下おじさんはゆっくりと逃げていった。
「ファイヤーボール!!!」
「あちあちあち」
「うがーーーー」
茜は声の主の方向を見ると加奈が怒りに震えていた。
・・・・・加奈に胸の話をしたら、こうなるわよね。
バカなおじさんたち。
「ケンカはどこだ!!」
「やめろ~~」
そこに騎士の格好をした衛兵2人が走って来た。
「まずい、みんな逃げるぞ!」
加奈が撤退命令を下す。
茜たち3人は城の方へ一目散に逃げ出した。
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