上 下
31 / 38

Take the devil 16

しおりを挟む

男が広場の人ごみを掻き分けギロチン台が見えるところへ移動した。
程なくして鎖に縛り上げられ体中が傷だらけのペンザが聴衆の前に引きずり出された。

ギャリンギャリン ギャリンギャリン ギャリンギャリン

ペンザの体に巻きつけられた鎖の音が響く。

うをーーーーー ウヲーーーー! うをーーーーー ウヲーーーー! 

兵士たちの歓声が響く。
(こいつら相当、こっ酷くペンザにやられたんだろうな)

ペンザの体は傷だらけで斬られた跡からは血が垂れている。
(おお、スゲーな! 生きているのが不思議なくらいだ! 治療一つしてやらないのかよ!! 
 あの姫様が指揮していたときとは大違いだな! 人間も落ちぶれたもんだねーー やだやだ!)
男は少しだけ首を左右に振った。
そして捕らわれているペンザを見ながら

(こいつ親父に似て忠臣だ。あのちびっ子エルフもたった一人で助けに・・・・死ぬ気で助けに来たのだろうな。
 デュランダルのようなゴミクズもいたがヘルザイムは良い部下をもったな)


ペンザが引きずり出されたギロチン台の上には左右二人ずつ4人の騎士が並んだ。
遅れて他の騎士より明かに豪勢な鎧を着た髭面の屈強な男が台上に上がった。


うをーーーーー ウヲーーーー! うをーーーーー ウヲーーーー! 

割れんばかりの大歓声。
(こいつが残虐非道なお偉いさんか。 悪そうな顔してるわ)

男が手で歓声を抑える。

「諸君! ご苦労! みなの働きで魔王ヘルザイムは倒れた」

(あぁ~ お前なに言ってるの? お前らごときにヘルザイム倒せるわけねーだろうが!
 金髪のおねーちゃんのおかげだろ)

「我が兵士よ! みなのおかげでヘルザイムの恐怖を終わらせることができた。
 みなの働きが我らの祖国を救ったのだ! 我が兵士よ! 感謝する!
 今日! この日! 戦いは終わったのだ!!」
(なに言っているんだ! 俺たちの戦いはこれからだぜ!)

うをーーーーー ウヲーーーー! うをーーーーー ウヲーーーー! 
うをーーーーー ウヲーーーー! うをーーーーー ウヲーーーー! 



歓声の中に渇いた音が響く。

バタン!
演説していた男が倒れる。
(おお、ナイスタイミングだね~ エルフっ子もこれ以上、こいつのアジテーゼなど聞きたくなかったんだろうな)

パッシュン! パッシュン! パッシュン! パッシュン!

続けざまに4発の魔砲弾が打ち込まれ台上にいた4人崩れるように倒れる。
周りにいた兵士は一瞬何が起こったか分からずにいた。
男は一瞬で台上に飛び上がった。

「アースウォール!」

ギロチン台の回りを土の壁で囲う。

「ペンザ! 助けに来たぞ!」
「お、お前は! シロ! 英雄シロ・ブルーノ! 助けてくれるのか!」

「あぁ、そうだよ! お前がどうなろうと知ったこじゃなかったが、我がまま姫様が駄々をこねてな~
 ライザに感謝しろよ!」
男は文句を言いながら左袖の中から黒い靄が掛かった刀を取り出しペンザに巻きついている鎖を斬った。
刀をグサッと台上に突き刺し、着ているローブをペンザに被せた。

「ロゼ! 力を貸せ! このペンギンを回復してやってくれ!」
と言うローブが光った。
ペンザの傷がどんどん塞がり死に掛けていたペンザの顔色も良くなっていく。

「こ、これは!」

「フッ!凄いだろ! 俺の取って置きのアイテムだ! 
 ロゼ! こいつを守ってやってくれ!」

赤い縁取りがされた白いローブが男の声に反応してまた光る。
白いローブはサイズが倍ほど大きくなった。

「ペンザ! それを着ろ! いいか!破るんじゃねーぞ!! 優しく着るんだぞ!!」
と男の言われるが間々にローブを着た。

「似合ってねーな!! どこぞのお笑いキャラだよ!!
 このローブは自動で回復してくれる。そして空を自由に飛ぶことができる。
 時計塔の中にライザが入るはずだ」

「姫様が!?」

「合流したあとゼンセン城へ向かえ!
 それからサイサリーと言うガキが命を捨てる覚悟でお前を助けに来ていたぞ!」

「サイサリーもか!」

「お前とエルフのガキはどうなってもいいがライザだけは死んでも守れ!! いいな!!」

「無論!!」

「あぁ、それからこれを使え! お前の馬鹿力を生かすには、こっちの方があっているはず」

左袖の中から青緑をしたスパイクが付いた棍棒を取り出した。

「アダマンタイト製だ! お前の馬鹿力で振り回しても壊れることは無い!」
ペンザに投げ渡した。

「アダマンタイトか!! そんな貴重なものを!」

「ほれ!もう一本!!」

「こんな業物が2本もあるのか!!」

「何でもいいからライザだけはとにかく守れ!! いいな!!」

「お前はこれからどうするんだ?」

「俺はここでやることがあるんでな! 終わったらお前たちの元へ向かう」

「やること? やることとは何だ?」

「お前らには関係無い。私的な用件が残っているんでね! いいからとっとと行け!
 ロゼ、行け!!」

というとペンザの体は土壁の天井を飛び出て時計塔へ向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

UWWO ~無表情系引きこもり少女は暗躍する?~

にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
フルダイブ型VRMMORPG Unite Whole World Online ユナイト・ホール・ワールドオンライン略称UWWO ゲームのコンセプトは広大なエリアを有する世界を一つに集約せよ。要するに世界のマップをすべて開放せよ。 そしてようやく物語の始まりである12月20に正式サービスが開始されることになった。 サービスの開始を待ちに待っていた主人公、大森あゆな はサービスが開始される15:00を前にゲーム躯体であるヘルメットにゲームをインストールしていた。 何故かベッドの上に正座をして。 そしてサービスが始まると同時にUWWOの世界へダイブした。 レアRACE? 何それ? え? ここどこ? 周りの敵が強すぎて、先に進めない。 チュートリアル受けられないのだけど!? そして何だかんだあって、引きこもりつつストーリーの重要クエストをクリアしていくようになる。 それも、ソロプレイで。 タイトルの副題はそのうち回収します。さすがに序盤で引きこもりも暗躍も出来ないですからね。 また、この作品は話の進行速度がやや遅めです。間延びと言うよりも密度が濃い目を意識しています。そのため、一気に話が進むような展開はあまりありません。 現在、少しだけカクヨムの方が先行して更新されています。※忘れていなければ、カクヨムでの更新の翌日に更新されます。 主人公による一方的な虐殺が好き、と言う方には向いていません。 そう言った描写が無い訳ではありませんが、そう言った部分はこの作品のコンセプトから外れるため、説明のみになる可能性が高いです。 あくまで暗躍であり、暗殺ではありません。 いえ、暗殺が無い訳ではありませんけど、それがメインになることは確実に無いです。 ※一部登場人物の名前を変更しました(話の内容に影響はありません)

スキル【海】ってなんですか?

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜 ※書籍化準備中。 ※情報の海が解禁してからがある意味本番です。  我が家は代々優秀な魔法使いを排出していた侯爵家。僕はそこの長男で、期待されて挑んだ鑑定。  だけど僕が貰ったスキルは、謎のユニークスキル──〈海〉だった。  期待ハズレとして、婚約も破棄され、弟が家を継ぐことになった。  家を継げる子ども以外は平民として放逐という、貴族の取り決めにより、僕は父さまの弟である、元冒険者の叔父さんの家で、平民として暮らすことになった。  ……まあ、そもそも貴族なんて向いてないと思っていたし、僕が好きだったのは、幼なじみで我が家のメイドの娘のミーニャだったから、むしろ有り難いかも。  それに〈海〉があれば、食べるのには困らないよね!僕のところは近くに海がない国だから、魚を売って暮らすのもいいな。  スキルで手に入れたものは、ちゃんと説明もしてくれるから、なんの魚だとか毒があるとか、そういうことも分かるしね!  だけどこのスキル、単純に海につながってたわけじゃなかった。  生命の海は思った通りの効果だったけど。  ──時空の海、って、なんだろう?  階段を降りると、光る扉と灰色の扉。  灰色の扉を開いたら、そこは最近亡くなったばかりの、僕のお祖父さまのアイテムボックスの中だった。  アイテムボックスは持ち主が死ぬと、中に入れたものが取り出せなくなると聞いていたけれど……。ここにつながってたなんて!?  灰色の扉はすべて死んだ人のアイテムボックスにつながっている。階段を降りれば降りるほど、大昔に死んだ人のアイテムボックスにつながる扉に通じる。  そうだ!この力を使って、僕は古物商を始めよう!だけど、えっと……、伝説の武器だとか、ドラゴンの素材って……。  おまけに精霊の宿るアイテムって……。  なんでこんなものまで入ってるの!?  失われし伝説の武器を手にした者が次世代の勇者って……。ムリムリムリ!  そっとしておこう……。  仲間と協力しながら、商人として成り上がってみせる!  そう思っていたんだけど……。  どうやら僕のスキルが、勇者と聖女が現れる鍵を握っているらしくて?  そんな時、スキルが新たに進化する。  ──情報の海って、なんなの!?  元婚約者も追いかけてきて、いったい僕、どうなっちゃうの?

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう
ファンタジー
書籍1~8巻好評発売中!  コミカライズ連載中! コミックス1~3巻発売決定! ビッグバロッグ王国・大貴族エストレイヤ家次男の少年アシュト。 魔法適正『植物』という微妙でハズレな魔法属性で将軍一家に相応しくないとされ、両親から見放されてしまう。 そして、優秀な将軍の兄、将来を期待された魔法師の妹と比較され、将来を誓い合った幼馴染は兄の婚約者になってしまい……アシュトはもう家にいることができず、十八歳で未開の大地オーベルシュタインの領主になる。 一人、森で暮らそうとするアシュトの元に、希少な種族たちが次々と集まり、やがて大きな村となり……ハズレ属性と思われた『植物』魔法は、未開の地での生活には欠かせない魔法だった! これは、植物魔法師アシュトが、未開の地オーベルシュタインで仲間たちと共に過ごすスローライフ物語。

付与効果スキル職人の離島生活 ~超ブラックな職場環境から解放された俺は小さな島でドラゴン少女&もふもふ妖狐と一緒に工房を開く~

鈴木竜一
ファンタジー
傭兵を派遣する商会で十年以上武器づくりを担当するジャック。貴重な付与効果スキルを持つ彼は逃げ場のない環境で強制労働させられていたが、新しく商会の代表に就任した無能な二代目に難癖をつけられ、解雇を言い渡される。 だが、それは彼にとってまさに天使の囁きに等しかった。 実はジャックには前世の記憶がよみがえっており、自分の持つ付与効果スキルを存分に発揮してアイテムづくりに没頭しつつ、夢の異世界のんびり生活を叶えようとしていたからだ。 思わぬ形で念願叶い、自由の身となったジャックはひょんなことから小さな離島へと移住し、そこで工房を開くことに。ドラゴン少女やもふもふ妖狐や病弱令嬢やらと出会いつつ、夢だった平穏な物づくりライフを満喫していくのであった。 一方、ジャックの去った商会は経営が大きく傾き、その原因がジャックの持つ優秀な付与効果スキルにあると気づくのだった。 俺がいなくなったら商会の経営が傾いた? ……そう(無関心)

高貴な血筋の正妻の私より、どうしてもあの子が欲しいなら、私と離婚しましょうよ!

ヘロディア
恋愛
主人公・リュエル・エルンは身分の高い貴族のエルン家の二女。そして年ごろになり、嫁いだ家の夫・ラズ・ファルセットは彼女よりも他の女性に夢中になり続けるという日々を過ごしていた。 しかし彼女にも、本当に愛する人・ジャックが現れ、夫と過ごす夜に、とうとう離婚を切り出す。

神様、幸運なのはこんなにも素晴らしい事だったのですねぇ!

ジョウ シマムラ
ファンタジー
よくある転生物です。テンプレ大好物な作者です。 不運なアラフォーのオッサンが、転生により、幸運を掴み人生をやり直ししていきます。 初投稿なので、ひたすら駄文ですが、なま暖かく見守って下さい。 各話大体2500~3000文字に収めたいですが、表現力の無さ故に自信ないです。只今、水曜日と日曜日の更新となっております。 R15指定、本作品には戦闘場面などで暴力または残酷なシーンが出てきますので、苦手な方はご注意下さい。 また、チートなどがお嫌いな方は読み飛ばして下さい。 最後に、作者はノミの心臓なので批判批評感想は受付けしていません。あしからずお願いします。 また、誤字の修正は随時やっております。急な変更がありましても、お見逃しください。 著者(拝)

こじらせ中年の深夜の異世界転生飯テロ探訪記

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
※コミカライズ進行中。 なんか気が付いたら目の前に神様がいた。 異世界に転生させる相手を間違えたらしい。 元の世界に戻れないと謝罪を受けたが、 代わりにどんなものでも手に入るスキルと、 どんな食材かを理解するスキルと、 まだ見ぬレシピを知るスキルの、 3つの力を付与された。 うまい飯さえ食えればそれでいい。 なんか世界の危機らしいが、俺には関係ない。 今日も楽しくぼっち飯。 ──の筈が、飯にありつこうとする奴らが集まってきて、なんだか騒がしい。 やかましい。 食わせてやるから、黙って俺の飯を食え。 貰った体が、どうやら勇者様に与える筈のものだったことが分かってきたが、俺には戦う能力なんてないし、そのつもりもない。 前世同様、野菜を育てて、たまに狩猟をして、釣りを楽しんでのんびり暮らす。 最近は精霊の子株を我が子として、親バカ育児奮闘中。 更新頻度……深夜に突然うまいものが食いたくなったら。

処理中です...